インターネットビジネスやYoutuberは注意!ドバイ法人でも日本に消費税がかかるケースとは

投稿:2023年7月26日更新:2023年8月26日ブログ

ドバイで法人を設立し、現地に移住しつつ日本向けにインターネットビジネスを行おうとしている方が近年は増えてきました。そういった方が案外見落としがちなのは❝日本の❞消費税の論点です。

たとえUAE現地で法人を設立したとしても、インターネットを介在したビジネスを行う場合、日本の消費税がドバイ法人にも課される可能性があることをご存知でしょうか?

本日は日本市場向けに、海外法人からサービスを提供する会社の消費税について説明していきたいと思います。

消費税がかかる取引の原則

消費税とは「消費」に対してかけられる税金で、ほとんどの商品やサービスに対して課税されます。

消費税の課税対象となるためには4つの要件があり、この要件を満たしていない場合には消費税が非課税となります。その要件とは以下の通りです。

①国内において

②事業者が事業として

③対価を得て行う

④資産の譲渡や貸付け、役務の提供


この要件に該当しないものは、消費税が課税されません。

ドバイ法人との取引については「①国内において」という要件を満たさないことから、原則として国外取引に対して消費税がかかることはありません。

「電気通信利用役務の提供」に該当する場合の例外

従来、国外事業者が国境を越えて行う電子書籍や音楽の配信事業については、上記の4原則から外れるため、消費税の課税対象から外れていました。

しかし電子書籍や音楽配信などの国境を越えた電子取引は年々増加しており、国内事業者との間で不公平が広がってきていました。分かりやすい例で言うと、kindleと楽天ブックスの電子書籍の価格の違いが挙げられます。

日本の居住者向けに対し、1冊500円の漫画(電子書籍)を販売したとします。

〇KindleはAmazon社のサービスであるため、運営者は海外企業になります。
よって、国外取引として消費税が課されず、500円で日本居住者に販売することができます。

〇楽天ブックスの提供元である㈱楽天は日本の居住法人であるため、国内取引として消費税が10%が課されることになり、550円(税込)で販売しなければなりません。

提供される漫画は全く同じものであるにもかかわらず、提供する事業者の所在国によって最終消費者に販売される金額が異なることになり、国内事業者の競争力を著しく低下させてしまいます。

このような事態に対応すべく、国境を越えた電気通信利用役務の提供に係る消費税の取り扱いが見直されることになりました。その結果「国内において」の取引に該当するかどうかの判定基準が、役務提供者の所在地から、役務の提供を受ける者の住所に改正されました

先ほどの電子書籍の例で言うと、役務提供を受ける者、すなわち電子書籍の購入者が日本で住所を持ち、商品が購読される場合は国内取引に該当するという形に変更されました。

なお、住所等が国内にあるかどうかの判定は、客観的かつ合理的な基準に基づき行うこととなります。

例えば、電子書籍をダウンロードさせるサービスなどにおいては、顧客がインターネットを通じて申し出た住所地と顧客が決済で利用するクレジットカードの発行国情報とを照合して確認する等、各取引の性質等に応じて、合理的かつ客観的に判定できる方法により行うこととなります。

「電気通信利用役務の提供」に該当する取引・該当しない取引

以下のような事業は、電子通信利用役務の提供に該当する例に該当します。

  • インターネット等を通じて、対価を得て行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲームなどの様々なアプリケーションを含みます。)の配信
  • 顧客に、クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
  • 顧客に、クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
  • インターネット等を通じた広告の配信・掲載
  • インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金等)
  • インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス
  • インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの)
  • インターネットを介して行う英会話教室
(引用)国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等について
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/cross-kokugai.pdf

逆に、以下のような事業に該当する場合は電子通信利用役務の提供に該当しないことが国税庁のホームページに記載されています。

  • 電話、FAX、電報、データ伝送、インターネット回線の利用など、他者間の情報伝達を単に媒介するもの(いわゆる通信)
  • ソフトウエアの制作等
  • 国外に所在する資産の管理・運用等(ネットバンキングも含まれます。)
  • 国外事業者に依頼する情報の収集・分析等
  • 国外の法務専門家等が行う国外での訴訟遂行等
(引用)国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等について
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/cross-kokugai.pdf

ドバイ法人が「国境を越えて行われる電気通信利用役務の提供」に該当した場合の対応

国境を越えて行われる電子通信利用役務の提供に該当した場合は、それがBtoC(消費者向け)なのか、BtoB(事業者向け)の事業なのかによって、会社の対応が異なることになります。

BtoC事業(消費者向け電気通信利用役務の提供)に該当する場合

例えば、情報プラットフォーム(NoteやTips等)を利用した情報の販売や、ラジオメディア(Voicy等)を通じた音声の有料配信などが挙げられます。

このような事業は、国境を越えて行われる電子通信利用役務の提供に該当すると考えられ、外国法人であるUAE法人から商品を販売したとしても、消費税の課税取引に該当することとなります。
そのため、UAE法人であっても財務情報を集計し、消費税を適切に計算した上で日本の管轄税務署に納税する必要があります。

ただし、原則としてその課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税義務が免除されます(消費税の事業者免税点)。
この場合の課税売上高とは、電気通信利用役務の提供のみを行っている国外事業者の場合、国内に対して行った「消費者向け電気通信利用役務の提供」に係る売上高で判定します。
なお、この事業者免税点がインボイス制度の導入により、どのように変更されるかについては、まだ細則が発表されていません。

国内に住所又は居所がないドバイ法人については、申告書・届出書の提出や税金の納付等、国税に関する事項を行うために、納税管理人を選任する必要があります。

BtoB事業(事業者向け電気通信利用役務の提供)に該当する場合

BtoBの事業に該当する場合、例えばインターネットを通じたリスティング広告や、日本居住者に向けてアフィリエイトを行う場合のASP(アフィリエイトサービスプロバイダ)との取引等に関しては、BtoB取引に該当することが多いものと思われます。

BtoB事業を行う海外事業者は、自社で消費税を納税せず、消費税を支払った日本法人側が消費税を納税する義務を負います。消費税を納税する義務が、海外法人(受け取り側)から日本法人(支払い側)に移転することから、リバース・チャージ方式と言われます。

「事業者向け電気通信利用役務の提供」を行う国外事業者は、あらかじめ当該取引が「リバース・チャージ方式」の対象である旨の表示を行わなければなりません。
また、インターネット上の取引内容を紹介している場所や個別に取引内容の交渉を行う場合にその交渉時の連絡文書等において、取引の相手が容易に認識できるよう当該表示を行っておく必要があります。

ここまで読んでいただくと分かる通り、BtoCに該当するUAE法人の場合は、自社が日本の消費税の納税を行わなければならず、BtoBの事業を行う企業の場合は、取引先に自社に替わって消費税の納税をするよう依頼しなければならない可能性がある、ということになります。

まとめ

消費税の納税義務、特に国境を越えた電子通信利用役務の提供による論点は難易度が高く、ドバイの法人設立エージェントや税理士でない日本人エージェントが見落としがちな論点です。しかし、これを見落とした場合の消費税の影響は非常に大きく、慎重に進める必要があると考えます。

UAEに進出をお考えの方で消費税の不安や疑問がある方は、お気軽に当会計事務所までご連絡いただければと思います。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(日本・UAE)。ドバイ在住。日本とドバイで会計事務所を経営しています。税務顧問や会計監査、ドバイへの移住支援を行っています。

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