ドバイでゴールドカンパニー(金取引)会社を設立する方法

投稿:2025年11月26日更新:2025年11月26日未分類

ドバイは世界的に有名な金取引の中心地です。毎年、世界の金取引量の約25パーセントがドバイで取引されており、ドバイ・ゴールド・スークなどの活気ある市場には、日々、世界中から多くの取引業者や投資家が集まります。このような好環境の中で、金取引ビジネスの開設を検討されている方も多いのではないでしょうか。

ドバイ・ゴールド・スーク

しかし、ドバイで金取引会社を設立する際には、単に商号登録をしてオフィスを借りるだけでは不十分です。特別なライセンス取得税務上の申告義務、そしてSIRA(Security Industry Regulatory Authority)という政府機関からの承認を得る必要があります。これらのプロセスを正確に理解していないと、後々ペナルティが課せられたり、違法営業と見なされたりするリスクがあります。

本記事では、ドバイで金取引会社を設立する際に必ず押さえておくべき法務面、税務面、そして実務面でのポイントを解説します。

金取引事業に適した場所の選択

ドバイで金取引ビジネスを始める際の最初の重要な決断は、本土(Mainland)とフリーゾーン(Free Zone)のいずれで会社を設立するかという点です。

本土での設立は、経済開発局(DED:Department of Economic Development Dubai)が管轄し、AED 18,500程度から始められます。本土設立の場合、ドバイ国内での小売り、卸売り、金取引を幅広く展開できるメリットがあります。

一方、DMCC(Dubai Multi Commodity Centre)などのフリーゾーンでの設立は、金取引に特化した環境が整っており、100パーセント外資出資が可能という大きな利点があります。フリーゾーンでは、金の輸出入の関税がゼロになるため、国際的な取引戦略を展開する場合には特に有利です。ただし、フリーゾーンでの設立には追加の手続きが必要になることもあります。

どちらの場所を選ぶかは、事業規模や取引戦略、ターゲット市場によって異なります。

取得すべき許可とライセンス

金取引会社を開設する際には、複数のライセンスや許可を取得する必要があります。

金取引ライセンスは、DED(本土の場合)またはDMCC(フリーゾーンの場合)から取得します。このライセンスにより、金の購入、販売、輸入、輸出、保管が法的に認められます。金取引ライセンスの申請時には、会社の定款(Memorandum of Association)、株主合意書、パスポートのコピー、事業計画書などの提出が必要です。

ライセンス取得後には、Ejari(賃貸借登録)も忘れてはいけません。オフィススペースを借りた場合、ドバイ土地局からEjariを取得する必要があります。これはオフィス所在地、賃料、契約期間などを登録するための法的文書で、SIRA承認を得る際の必須書類になります。

金の延べ棒とビジネス

SIRA承認は金取引ビジネスの要

SIRA(Security Industry Regulatory Authority)は、ドバイ政府傘下の規制機関で、金や宝石などの貴金属取引事業に対するセキュリティ基準の遵守を監督しています。金取引会社を開設する場合、SIRA承認は避けては通れない要件です。

SIRAが要求する主なセキュリティ要件は、以下の通りです。

1. 監視カメラシステム

24時間365日の連続録画が可能な高画質CCTV(HD以上、最低1080P解像度)をオフィスの各所に設置する必要があります。エントランス、オフィス内の取引エリア、金庫周辺、バックオフィス、出入口など、重要な場所すべてに配置されなければなりません。録画データはデジタル保存され、通常は最低6ヶ月間の保管が要求されます。

2. 警報システム

侵入検知装置や盗難警報器など、複数の警報システムの設置が求められます。これらは24時間監視されるべきです。

3. 金庫・セキュアストレージ

金や貴金属を保管する金庫やセキュアストレージについて、SIRA承認済みの設備であることが必須です。

4. アクセス制限

オフィス内への出入りを制限し、認可された者のみが重要エリアにアクセス可能にするシステム(ドアキーカード、パスワードロックなど)の導入が必要です。

5. セキュリティスタッフと訓練

セキュリティスタッフの配置、および定期的なセキュリティ訓練の実施も条件に含まれます。

オフィスのCCTVセキュリティシステム

これらの要件を満たした上で、SIRA承認済みのセキュリティ企業に依頼して、セキュリティ設計の認証を取得し、SIRAに申請します。SIRA審査官がオフィスを視察し、すべての要件が満たされていることを確認した後、初めてSIRA承認証が発行されます。

税務面での重要な考慮事項

ドバイは法人税がない代わりに、年間行政ライセンス料を支払う仕組みになっています。ただし、税務面で重要なのはVAT(付加価値税)法人税です。

2023年6月から、UAE全体で法人税(税率9パーセント)が導入されました。金取引会社の課税所得がAED 375,000を超える場合、その超えた部分に対して9パーセントの法人税が課税されます。課税所得がAED 375,000以下の場合は、税率は0パーセントですが、申告自体は必須です。

VATについては、年間売上高がAED 375,000を超える場合、通常VATの納税義務が生じます。ただし、売上が100パーセント海外(日本向けなど)である場合は、VAT免除申請を行うことで、申告納税が不要になる可能性があります。この免除申請は「VAT Exemption」と呼ばれ、事前に申請し、承認を受ける必要があります。申請していなかった場合、後から遡って罰金や延滞税が課せられることもあるため、注意が必要です。

実務的な準備と段階的なステップ

手続きの段階 内容 完了期間の目安
ビジネス活動の決定 金取引、輸出入など具体的な活動内容を決定 随時
場所の選択 本土またはフリーゾーン、具体的なオフィス選定 1~2週間
オフィス契約とEjari登録 賃貸借契約、Ejari登録 2~3週間
ライセンス申請 DED/DMCCへの貿易ライセンス申請 2~3週間
セキュリティ設計・導入 SIRA承認済みセキュリティ企業に依頼 3~4週間
SIRA申請・審査 SIRA承認取得 2~4週間
法人税・VAT登録 連邦税務局(FTA)への登録 1~2週間
銀行口座開設 ビジネス銀行口座の開設 1~2週間

実際には、これらのプロセスが部分的に並行して進むため、全体では2~3ヶ月程度が目安になります。

よくある落とし穴と対策

金取引ビジネス設立時に陥りやすいのは、SIRA承認の重要性を過小評価することです。セキュリティ投資がコストに見えて、その実施を後回しにしたり、簡略化しようとする事業者がいますが、これは大きな誤りです。SIRA基準を満たさないオフィスでビジネスを行えば、罰金のみならず、事業ライセンスの取り消しや営業禁止といった厳しい措置が取られます。

また、VAT免除申請の手続きを忘れることも多いです。売上が海外向けであっても、事前に申請していなければ、後から遡って膨大な税金と罰金を支払う羽目になります。設立初期段階で、会計事務所や税理士と相談して、正確な税務登録を行うことが極めて重要です。

まとめ

ドバイで金取引会社を設立することは、世界的な金市場へのアクセスと、UAE政府による手厚いビジネスサポートの恩恵を受ける素晴らしい機会です。しかし、そのプロセスは適切な法務・税務知識なしには進められません。特にSIRA承認、ライセンス取得、税務登録は、それぞれ独自のルールと要件を持っており、これらを正確に理解して実行することが成功の鍵になります。

ドバイでの金取引ビジネス設立を検討されている方で、法務面や税務面での不安がある、あるいは既に設立しているが後々の手続きに不確実性があるという方は、ぜひ当会計事務所にお問い合わせください。お客様の事業内容に応じた最適な設立プランを、税務と法務の両面から総合的にご提案いたします。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(日本・UAE)。ドバイ在住。日本とドバイで会計事務所を経営しています。税務顧問や会計監査、ドバイへの移住支援を行っています。

の記事一覧へ

コメントをどうぞ!

メールアドレスが公開されることはありません。

ドバイで日本人向け不動産仲介会社を設立する方法 ドバイで出版会社を設立する方法

お気軽にお問い合わせください