ドバイ法人の関税実務|GCC共通5%・フリーゾーン無関税・再輸出で関税を取り戻す方法

投稿:2025年11月26日更新:2026年10月8日ブログ

ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。

UAEの関税制度はGCC(湾岸協力会議)共通関税を基盤としており、フリーゾーンの保税扱いや各種免税制度など、輸出入ビジネスを有利に進める選択肢が用意されています。2026年8月3日にはDubai Customs Notice No. 16/2026が施行され、越境ECの少額出荷に係る免税枠が大きく広がりました。本記事では、ドバイでの関税率、免税制度、実務手続きを最新の運用にあわせて解説します。

UAEの関税制度の基本

UAEの関税は、2003年1月に発効したGCC共通関税同盟に基づいて運用されています。加盟国はサウジアラビア、UAE、バーレーン、オマーン、カタール、クウェートの6か国で、制度の詳細はGCC事務局の関税同盟ページで確認できます。最大の特徴は、GCC域内原産品には関税が課されない一方、域外からの輸入品には原則として一律の税率が適用される点です。

標準関税率は5%

UAEに輸入される大半の商品には、CIF価格の5%が関税として課されます。CIF価格とは、商品代金に保険料と運賃を加えた金額を指します。国際的に見ても低い水準であり、貿易ハブとしての地位を維持するための政策的な設定です。通関手続きはDubai Customsの公式サイトを通じてオンラインで完結します。

CIF価格 = 商品代金(Cost)+ 保険料(Insurance)+ 運賃(Freight)

高税率が適用される品目

健康・社会政策の観点から、一部の品目には高い税率が設定され、さらにExcise Tax(物品税)が上乗せされます。税率の一覧は連邦税務庁のExcise Taxページで公表されており、タバコ製品・電子タバコ・エナジードリンクが100%、炭酸飲料と糖入飲料が50%です。

品目 関税率 備考
アルコール飲料 50% 輸入には特別なライセンスが必要
タバコ製品 100% Excise Tax 100%も別途課税される
豚肉製品 輸入制限あり イスラム法に基づく規制が適用される

アルコールについては、ドバイ自治体の地方酒税30%が2025年1月1日に復活し、現在も継続しています。連邦関税50%、Excise Tax、地方酒税30%、VAT 5%が積み上がる構造になるため、飲食業や小売業では仕入原価の見積りに注意が必要です。

関税が免除される主なケース

UAEでは経済活動を促進するために多様な免除制度が設けられています。ドバイ法人で輸出入を行う場合、どの免除に乗せるかを取引設計の段階で決めておくことが実務上の要点になります。

域内原産品・工業用原材料・基礎物資

GCC加盟国で生産された商品は、原産地証明書を提出することで関税が免除されます。UAE国内で製造業を営む企業は、生産に使用する原材料や部品について免除を申請でき、この場合はFederal Customs Authorityや所管当局への事前申請と承認が前提となります。加えて、米や小麦粉などの基礎食料品、承認を受けた医薬品、教育用教材、障がい者向け補助器具なども免税対象です。連邦の制度情報はUAE財務省の公式サイトで確認できます。

越境ECの少額免税枠がAED 1,000へ拡大

越境ECのB2C出荷については、2026年7月30日に発出され同年8月3日に施行されたDubai Customs Notice No. 16/2026により、関税免税の上限額がAED 300からAED 1,000に引き上げられました。1AED43円換算で約12,900円から約43,000円への拡大です。同通達は2021年12月20日付Notice No. 15/2021の第4条と第11条を改正するもので、報道の概要はKhaleej Timesの記事、実務論点の整理はBDO UAEの解説が参考になります。

免税の対象外となる品目も明記されており、タバコおよびタバコ製品、電子喫煙具とその関連機器・付属品、ニコチンを含む液体、アルコール飲料、アルコールを含む調理食品は従来どおり課税されます。あわせて、B2C目的で企業経由で返品される貨物は、すでに関税を納付した事実を証明でき、かつ搬出日から60日以内に返品された場合に関税が免除されます。紛争処理の担当は従来の関税分類・原産地部門からLegal Affairsに移りました。

実務への影響は二方向にあります。日本からドバイの消費者へ直販する事業者は、1件あたりAED 1,000以下に収まる出荷であれば関税が発生しなくなるため、単価設計や同梱の仕方を見直す余地が生まれます。返品率の高いアパレルや雑貨では、60日という期限を返品ポリシーの運用日数に組み込んでおくことが重要です。一方、ドバイ在住者が日本から商品を取り寄せる場合も同じ枠で判定されますが、免税されるのは関税のみであり、VATや商業目的の輸入に関する判定は別ルールで行われます。事業者が反復的に商業輸入を行う場合は、この免税枠に依存せず通常の通関を前提に据えるべきです。

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フリーゾーンにおける関税の取扱い

ドバイのフリーゾーンは保税地域として扱われるため、海外から搬入する時点では関税が課されません。商品がゾーン内に留まる限り関税の支払いは繰り延べられます。VATについては、当該ゾーンがDesignated Zone(指定地域)に該当するかどうかで取扱いが分かれ、区分の詳細は連邦税務庁のVATページで確認できます。Designated Zoneでない一般フリーゾーンは本土と同じ扱いになります。

取引形態 関税 VAT
海外からフリーゾーンへ輸入 0%(保税扱い) Designated Zone内取引は対象外
フリーゾーンから本土へ移動 5% 5%
フリーゾーンから第三国へ再輸出 0% ゼロ税率(書類完備が条件)
フリーゾーン間の移動 0% Designated Zone間取引は対象外

フリーゾーンから本土へ商品を移す場合は輸入とみなされ、CIF価格に対して関税5%とVAT 5%が課されます。逆に、搬入した商品をそのまま第三国へ再輸出するのであれば関税もVATも実質的に発生しないため、ドバイを中継貿易の拠点として使う再輸出モデルが成立します。在庫を本土に出さない設計を維持できるかどうかが、実質的な関税負担を左右します。

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関税とVATの計算とHSコード12桁化

輸入時の税額は段階的に計算されます。CIF価格100AED(約4,300円、1AED43円換算)の商品を輸入する場合、関税は5AED、VATの課税標準はCIF価格に関税を加えた105AEDとなり、VATは5.25AED、合計支払額は110.25AEDです。VATは関税を含めた金額に対して計算される点が実務での見落としポイントになります。VAT登録事業者であれば輸入VATはリバースチャージ方式で申告書上で精算され、同時に仕入税額控除を取れるため、最終的なキャッシュアウトは関税分のみになるケースが多いです。

12桁関税分類への段階的移行

UAEではCustoms Notice No. 10/2025に基づき、従来の8桁コードから12桁Integrated Customs Tariffへの移行が2025年8月1日から段階的に進んでいます。2026年2月からのPhase 2ではGCC向け取引とフリーゾーンから本土への輸入で12桁が必須となり、2026年8月開始のPhase 3では第三国からの輸入にも拡大し、2027年2月以降に全領域が完全移行する予定です。品目表はDubai CustomsのIntegrated Customs Tariffで公開されています。分類誤りは関税の過払いや通関遅延、罰金につながるため、初めて扱う商品は事前相談をおすすめします。

輸入手続きとFTA・CEPAの活用

輸入通関に必要な書類は、コマーシャルインボイス、パッキングリスト、原産地証明書、船荷証券または航空貨物運送状、そして通関コード(Customs Client Code)です。通関コードは輸出入を行うすべての法人が各首長国の税関に申請して取得するもので、連邦税務庁への税務登録とは別の手続きになります。食品、医薬品、化粧品、電気製品、玩具などは、所管省庁の事前承認や適合証明書が追加で必要です。

関税優遇の面では、UAEはGCC-EFTA FTAやGAFTAに加え、インド、イスラエル、インドネシア、トルコ、カンボジア、ジョージア、韓国などとCEPAを相次いで発効させています。締結状況はUAE経済省のCEPA一覧で更新されます。日本とUAEの間では2026年3月に交渉妥結が確認されたものの、署名と国内手続きが残っており、発効までは日本原産品にも原則としてMFN税率が適用されます。優遇税率を使うには原産地証明書の取得が前提です。

ドバイ移住者と出国税の視点

個人としてドバイへ移住し、現地法人で輸出入ビジネスを始める場合には、関税とは別に日本側の課税を確認しておく必要があります。有価証券などの評価額が1億円以上ある方が出国する際には、国税庁が示す国外転出時課税、いわゆる出国税の対象となり、含み益に所得税が課されます。移住後にドバイ法人へ在庫や商流を移す場合は、日本法人との取引が移転価格やタックスヘイブン対策税制(トリガー税率は特定外国関係会社27%、対象外国関係会社20%)の検討対象になり得ます。関税の最適化だけを先に決めてしまうと日本側で想定外の課税が生じることがあるため、移住のタイミングと商流設計は同時に検討することをおすすめします。

まとめ

📋 今回のポイント

  • 標準関税はCIF価格の5%、酒類50%・たばこ100%の例外あり
  • Notice No. 16/2026で越境EC免税枠がAED 1,000(約43,000円)へ拡大
  • タバコ・電子喫煙具・ニコチン液・アルコール類は免税対象外
  • B2C返品は搬出後60日以内かつ納付済み証明で免税
  • フリーゾーンは保税扱い、本土移送時に関税5%とVAT 5%
  • HS 12桁移行は2027年2月に完全移行予定
  • 移住時は出国税とCFC税制の同時検討が必要

当会計事務所は、ドバイでの輸出入ビジネスに関する税務相談、フリーゾーン活用と再輸出スキームの設計、越境ECの免税枠を踏まえた商流の検討、日本側の出国税やタックスヘイブン対策税制への対応まで一貫してサポートしています。関税実務やドバイ進出についてご検討中の方は、当会計事務所までお気軽にお問い合わせください。

根拠条文・出典

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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