ドバイで経費にする領収証は日本語の保存でも大丈夫か

投稿:2025年11月29日更新:2025年11月30日ブログ

ドバイで法人を経営されている方や、フリーランスとして活動されている方から、「日本出張時の領収証」や「日本のECサイトで購入した物品の請求書」の扱いについて、非常によくご相談をいただきます。

「日本の領収証は日本語で書かれていますが、そのままドバイの会計に使っていいのでしょうか?」
「わざわざ英語に翻訳しないといけないのでしょうか?」

結論から申し上げますと、「日本語のままで保存しても問題はありませんが、会計ソフトへの入力と監査対応には工夫が必要」です。今回は、UAE(アラブ首長国連邦)の税務手続法および法人税法に基づき、日本語の領収証を経費にするための正しいルールと実務的な対応策について解説します。

1. 法律上の「言語」ルールはどうなっているか?

まず、UAEの税務当局(FTA:Federal Tax Authority)が定めている「帳簿保存の言語」に関するルールを確認しましょう。連邦税務手続法(Tax Procedures Law)では、以下のように規定されています。

対象 言語ルール
アラビア語 原則。UAE公用語のため、税務関連書類の原則言語。
英語 実務上、FTAは英語での記録・保存を認めている。
日本語など 当局から要請があった場合には、翻訳を提出しなければならない。

つまり、「日本語の領収証を持っていること自体は違法ではないが、税務調査が入ったときに、調査官が読める状態(英語またはアラビア語)にして説明できなければならない」というのが正確な解釈です。

当然ですが、UAEの税務調査官は日本語を理解していません。「お品代」や「接待交際費」と書かれていても、それがビジネスに必要な経費なのか、個人的な買い物なのかを判別できないためです。

そのため、「日本語の領収証をただファイルに挟んでおくだけ」では、否認される(経費として認められない)リスクが高まります。

2. 実務的にどのように処理すべきか

では、すべての日本の領収証を英訳して添付する必要があるのでしょうか?数枚ならまだしも、大量にある場合は現実的ではありません。弊所では、以下の3ステップでの管理を推奨しています。

ステップ①:会計ソフトへの入力は「英語」で行う

領収証自体が日本語であっても、会計ソフト(Xero, QuickBooks, Zoho Booksなど)に入力する際のDescription(摘要欄)は必ず英語で記載してください。

❌ 悪い例

Expenses in Japan(これでは内容が不明なためNG。日本と同様)

✅ 良い例

Dinner with client Mr. Sato regarding marketing strategy in Tokyo(誰と、何のために、どこで使ったかが明確です)

会計データ自体が「英語の明細書」の役割を果たすようにしておくことが、第一の防衛線です。

ステップ②:領収証の余白にメモ書きをする

紙の領収証であれば余白に、デジタルの領収証であればPDFのコメント機能で、「英語のメモ」を残しておくと安心です。

Meeting / Dinner(会議費・会食)

Office Supplies(事務用品)

Taxi(交通費)

これをしておくだけで、万が一の税務調査の際、翻訳業者に依頼するコストと時間を大幅に削減できます。

ステップ③:正式な翻訳は「要請されてから」でOK

最初から全てを法廷翻訳(Legal Translation)する必要はありません。税務調査が入り、特定の取引について「この日本語の書類は何だ? 正式な翻訳を出せ」と言われた時点で翻訳すれば足ります。日々の記帳段階では、ステップ①と②で十分です。

3. 「VAT(付加価値税)」と「法人税」で扱いが違う

ここが非常に重要なポイントですが、「VATの還付(Input VAT Recovery)」と「法人税の経費(Deductible Expenses)」では、求められる要件の厳しさが異なります。

項目 日本の領収証の扱い 理由
UAE VAT 還付不可 日本の消費税はUAEのVATではないため。また、UAEのTRN(登録番号)が記載されていないため。
UAE 法人税 経費計上可能 ビジネスに関連する費用であれば、海外で発生した費用も利益から控除できます。

✅注意:日本の消費税は「コスト」になる

日本の領収証に含まれる10%の消費税は、UAEでは「税金」として取り扱われません。単なる「経費の一部(コスト)」として処理します。UAEのVAT申告(VAT Return)で、日本の消費税を「仕入税額控除」としてマイナスすることはできませんのでご注意ください。

4. 日本円のレシート、レート換算はどうする?

会計帳簿はAED(ディルハム)で作成する必要があります。日本円の領収証を計上する際のレートは、以下のルールに従います。

① 取引日のレートを使用する
原則として、その経費を支払った日(Transaction Date)のUAE中央銀行(Central Bank of UAE)の為替レートを使用します。

② クレジットカードの引落額でも許容される場合がある
実務上は、クレジットカードの明細に記載された「AED換算後の引落金額」をそのまま経費計上することも、中小企業の経費処理としては一般的です(監査上、重要性の原則に照らして許容されるケースが多いです)。

ただし、厳密な監査対応を求めるのであれば、「取引日の公定レート」で換算し、実際の決済額との差額を「為替差損益」として処理するのが最も正確な会計処理です。

5. 証憑の保存期間と形式

UAE法人税法およびVAT法において、記録の保存期間は厳格に定められています。

▶ 一般企業
7年間の保存義務(法人税法)

▶ 不動産関連
15年間の保存義務となるケースあり

スキャン保存(電子帳簿保存)は認められるか?

認められます。原本が紙であっても、スキャンして鮮明なデジタルデータとして保存していれば、原本を廃棄しても問題ないケースが大半です(ただし、当局が原本提出を求める権限は残っているため、重要な契約書などは原本保管を推奨します)。

日本の「電子帳簿保存法」と同様に、ドバイでもクラウド会計ソフトに証憑(PDFや写真)を添付して保存しておくのが、最も安全で効率的な方法です。

6. まとめ

▼ ドバイでの日本語領収証の取扱い要点

  • 日本語の領収証でも経費化は可能。ただし、英語での説明責任が伴います。
  • 会計ソフトへの入力は必ず「英語」で行う。これが翻訳の代わりとなります。
  • 日本の消費税はUAEのVAT還付対象外。全額を「コスト」として計上します。
  • 保存期間は7年間。クラウド会計へのデータ添付・保存を強く推奨します。
  • 税務調査が入った場合のみ、必要に応じて正式な翻訳を行います。

ドバイの税務は年々厳格化しており、特に2023年6月から導入された法人税の影響で、経費の正当性(Business Purpose)が厳しく見られるようになっています。

「日本語だからバレないだろう」という考えは危険です。中身が日本語であっても、「いつ、誰が、何の目的で使った経費なのか」を英語で説明できる状態にしておくことこそが、最も確実な税務対策となります。

弊所では、日本からUAEへ進出された企業の会計記帳代行や、税務監査対応を専門に行っております。日本の商習慣とUAEの法規制、双方を理解した記帳指導が必要な方は、ぜひお気軽にご相談ください。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(日本・UAE)。ドバイ在住。日本とドバイで会計事務所を経営しています。税務顧問や会計監査、ドバイへの移住支援を行っています。

の記事一覧へ

コメントをどうぞ!

メールアドレスが公開されることはありません。

ドバイでファミリーオフィスを設立する方法 【2025年最新】Director10年ゴールデンビザが改悪されました

お気軽にお問い合わせください