ドバイ居住者が税務証明書(TRC)を取得する方法と条件

投稿:2025年11月30日更新:2025年11月30日ブログ

ドバイに移住した方にとって、どこで税金を納税するかを証明する根拠として税務居住証明書(TRC: Tax Residency Certificate)が必要になることがあります。

TRCは、UAE財務省(Ministry of Finance)および税務当局(FTA: Federal Tax Authority)が発行する公式文書で、個人がUAEの税務上の居住者であることを証明するものです。しかし、重要なポイントとして、TRCはUAE側でのあなたの居住者地位を証明するものであり、日本側での税務上の扱いは、このTRCの存在だけでは決定されません。むしろ、TRCを持つことで、日本の税務当局に対してあなたの非居住者性を立証する根拠となるものです。

今回は、個人がTRCを取得する条件、必要書類、申請手続きの流れ、そして日本での活用方法について詳しく解説します。

ドバイのスカイライン

TRC(税務居住証明書)とは

TRCは、UAE財務省および連邦税務局が発行する公式文書で、個人がUAEの税務上の居住者であることを証明するものです。UAEは現在、日本を含む117カ国以上と二重課税防止条約を締結しています。二重課税防止条約とは、同じ所得に対して2つの国が税金を課さないようにするための国際条約のことです。

TRCには主に以下の2種類があります。

種類 用途
条約目的TRC(Treaty Purpose) 二重課税防止条約の適用を受けるため、他国に提出する
国内目的TRC(Domestic Purpose) UAE国内での税務居住者としての地位を証明する

日本との関係では、条約目的TRCが主に活用されます。このTRCを日本の税務当局に提出することで、あなたが日本の非居住者である可能性が高いことを示す証拠となり、日本での課税方法が全世界所得課税ではなく国内源泉所得課税に限定されることになります。

個人がTRCを取得するための居住者要件

TRCを申請するためには、まずUAEの税務上の居住者として認定される必要があります。この認定基準は、2022年9月に発表された閣議決定第85号(Cabinet Decision No. 85 of 2022)により定められ、2023年3月1日から施行されています。

個人がUAEの税務居住者と認められるには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

滞在日数 追加要件
183日以上 連続する12カ月間にUAEに物理的に滞在していれば、追加要件なし
90日以上183日未満 UAE国籍、GCC加盟国国籍、または有効な居住ビザを保有し、かつUAEに恒久的住居があるか、UAEで就業または事業活動を行っている
上記に該当しない場合 UAEが通常の居住地または主たる居住地であり、経済的・個人的利益の中心がUAEにあること

滞在日数は連続している必要はありませんが、連続する12カ月間での計算となります。なお、やむを得ない事情(病気や自然災害など)によりUAEを離れられなかった場合は、当局の判断で日数から除外される可能性があります。

重要な変更として、2024年10月のFTA新ガイドラインにより、個人は納税期間の完了を待たずに、居住者要件を満たした時点で即座にTRCを申請できるようになりました。例えば、10月15日に183日滞在の要件を満たしたなら、翌年3月31日まで待つのではなく、その時点で申請を進めることができます。

個人TRC申請に必要な書類

TRCを申請する際、183日以上滞在しているか否かによって必要書類が異なります。具体的には以下のような書類が必要になります。

条約目的TRC(183日以上滞在の場合)

入出国記録は、UAEICP(Federal Authority for Identity, Citizenship, Customs & Port Security)のアプリから取得できます。この記録は、UAE国内での滞在日数を証明するために必須の書類です。

2024年10月のFTA新ガイドラインでは、銀行取引明細書の提出要件が削除されました。以前は過去6カ月分の銀行口座の活動を証明する必要がありましたが、現在は不要となっています。

国内目的TRC(90日以上183日未満の場合)

90日以上183日未満の滞在期間でTRCを申請する場合、以下の書類が必要です。

国内目的TRC(経済的・個人的利益の中心がUAEの場合)

90日未満の滞在であっても以下の条件を満たせばTRCが取得できる可能性がありますが、形式的な要件を満たしていないことから実務上は難しいケースが多いです。

TRC申請手続きの流れ

TRCの申請は、FTAのオンラインポータル「EmaraTax」を通じて行います。

ステップ1 EmaraTaxへの登録・ログイン

FTAの公式サイト([https://eservices.tax.gov.ae/](https://eservices.tax.gov.ae/))にアクセスし、UAE Passまたはアカウント情報でログインします。アカウントがない場合は新規作成が必要です。

ステップ2 TRC申請タイプの選択

ダッシュボードから「Tax Residency Certificate」を選択します。その後、以下のいずれかを選択します。

ステップ3 必要書類のアップロード

求められる書類をPDFまたはJPEG形式でアップロードします。書類は鮮明で、すべての情報が読み取れる状態である必要があります。

ステップ4 手数料の支払い

申請時に手数料を支払います。2025年10月以降の新ルールでは、発行手数料を含む全額を事前に支払う必要があり、申請が却下された場合でも返金されません。

申請者区分 提出手数料 発行手数料
個人(TRN未取得) AED 50 AED 1,000
ハードコピー(任意) AED 250(追加)

※ 1 AED ≒ 約40円

ステップ5 審査・証明書の発行

FTAが書類を審査し、通常5営業日程度で結果が通知されます。承認されると、TRCは電子形式(PDF)でダウンロード可能となり、登録メールアドレスにも送付されます。

✅TRCの有効期間と更新

TRCの有効期間は発行日から1年間です。翌年度も引き続きTRCが必要な場合は、毎年新たに申請を行う必要があります。更新手続きは新規申請と同様のプロセスとなります。なお、TRCは現在進行中または過去の納税期間に対してのみ発行されます。将来の期間に対しては発行されません。

UAEのTRCと日本の非居住者認定

TRCが日本側で果たす役割

UA側がTRCを発行する=UAE側でのあなたの居住者性を証明するもので、直接的には日本側の租税条約の適用には該当しません。

しかし、TRCを保有することで、日本の税務当局に対してあなたが日本の非居住者であることを立証する根拠材料となります。日本の租税条約の特典条項(Benefit Clause)では、租税条約の恩恵を受けるための要件として「対象国(UAE)の税務居住者であること」が定められているためです。

つまり、あなたがドバイに183日以上滞在してTRCを取得することは、日本の税務当局に「この人はもはや日本の課税対象ではなく、UAEが主たる課税権を有する」という主張を可能にするものなのです。

日本の非居住者と全世界所得課税

日本には、全世界所得課税という原則があります。これは、日本の居住者であれば、世界中のどこで発生した所得であっても、日本で課税対象となるということです。

一方、非居住者の場合は、日本国内に源泉のある所得(国内源泉所得)にのみ課税されます。例えば、非居住者がドバイで得た給与やビジネス所得は、日本では課税対象外となります。

課税の基準 内容
居住者 全世界所得に対して日本で課税される
非居住者 日本国内に源泉のある所得にのみ課税される

TRCを取得してUAEの税務居住者としての地位を確立することで、日本の税務当局に対して非居住者であることを主張する根拠が生まれるのです。

日本での非居住者認定のためのTRC活用

日本の税務当局に非居住者性を立証するためには、TRCの他にも複数の資料が必要です。ベトナムの事例では、日本の「居住者証明書」(日本の税務署が発行する証明書)を提出することで、相手国での非居住者認定が得られるケースもあります。

日本からドバイに移住する際には、以下の点に注意が必要です。

これらの要件を満たし、TRCを取得することで、日本での非居住者性の立証がより強固になります。

まとめ

TRC(税務居住証明書)は、ドバイに居住する個人にとって、UAE側での居住者地位を証明し、それを通じて日本側での非居住者性を立証する根拠となる重要な書類です。

UAE側がTRCを発行することで、あなたがドバイで真実の意味で生活と経済活動の中心を置いていることが証明されます。これは日本の税務当局に対して、「この個人は日本の非居住者であり、日本での課税範囲は国内源泉所得に限定される」という主張を支える根拠となります。

TRCを申請する際には、閣議決定第85号に定められた居住者要件を満たしているかを確認し、入出国記録、給与証明書など、UAEとの結びつきを証明する書類を漏れなく準備することが重要です。

ドバイへの移住を予定されている方や、既に移住済みの方であっても、日本側での適切な税務処理を行うには、TRC取得を通じた非居住者性の立証が第一歩となります。TRCの申請手続きや日本での非居住者認定について不安がある方は、お気軽に当会計事務所までお問い合わせください。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(日本・UAE)。ドバイ在住。日本とドバイで会計事務所を経営しています。税務顧問や会計監査、ドバイへの移住支援を行っています。

の記事一覧へ

コメントをどうぞ!

メールアドレスが公開されることはありません。

ドバイ法人でTRCを取得する方法 【2025年最新】日本とドバイのタックス・ヘイブン税制に関する考え方

お気軽にお問い合わせください