ドバイ法人で経費計上するときの注意点

投稿:2025年11月28日更新:2025年11月28日ブログ

今私の記事を見てくださっている方には、すでにドバイで法人を設立されている方や、これから設立を検討されている方も多いのではないでしょうか。

ドバイに法人を設立して事業を行う場合、2023年6月から導入されたUAE法人税の申告にあたり、どのような支出が経費として認められるのかを正確に理解しておくことが非常に重要です。

日本で会計や税務に馴染みのある方でも、UAEの経費計上ルールは日本とは異なる部分が多く、知らずに申告すると損金算入が認められなかったり、罰金が発生するリスクもあります。

そこで本日は、「ドバイで経費計上する際の注意点」について、日本の税務ルールと比較しながら解説していきます。後から「知らなかった」では済まされない重要なポイントばかりですので、しっかりと確認しておきましょう。

ドバイのビジネスエリア

UAE法人税における経費計上の基本原則

UAEの法人税法(Federal Decree-Law No. 47 of 2022)において、経費が損金として認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。

要件 内容
事業目的のための支出 経費は事業運営のためだけに発生したものでなければなりません
資本的支出ではないこと 固定資産の取得など資本的性質の支出は一括で経費にできません
発生した課税年度で計上 発生主義に基づき、その支出が発生した課税年度に計上します

日本の法人税においても、「損金経理」が要件とされており、確定した決算において費用または損失として経理することが求められます。ただし、日本では交際費など特定の費目について損金算入に上限があるのに対し、UAEでは交際費(接待費)の50%のみが損金算入可能という独自のルールがあります。

UAEで損金算入が認められる主な経費

UAEの法人税法では、以下のような支出が一般的に損金として認められています。

1. 人件費(給与・賞与・福利厚生費)

従業員に支払う給与、ボーナス、退職金(End of Service Gratuity)、ビザ取得費用、健康保険料などは全額損金算入が可能です。

日本との比較
日本では従業員給与は全額損金算入できますが、役員報酬については「定期同額給与」等の要件を満たさなければ損金不算入となります。具体的には、事業年度開始から3か月以内に株主総会で決議し、毎月同額を支給することが求められます。

UAEでは役員報酬に関してこのような厳格な要件はなく、事業目的であれば損金算入が認められますが、オーナーによる「引き出し」や配当は損金不算入となります。

2. 事務所家賃・光熱費

オフィスや倉庫の賃借料、電気・水道・インターネット代などの光熱費は全額損金算入可能です。これは日本でも同様であり、事業用の賃借料や光熱費は全額経費として計上できます。

3. 専門家報酬(会計士・弁護士・コンサルタント費用)

監査費用、法務費用、コンサルティング費用などは全額損金算入できます。日本でも同様に損金算入が認められますが、顧問料が過大と認められる場合は税務調査で否認されるリスクがあります。

4. 接待交際費(Entertainment Expenses)

ここが日本と大きく異なるポイントです。

接待交際費の損金算入ルール
UAE 顧客・取引先への接待費は50%のみ損金算入可能
日本(資本金1億円以下) 年間800万円まで全額損金算入可能、または接待飲食費の50%
日本(資本金1億円超) 接待飲食費の50%のみ損金算入可能

UAEでは、従業員向けの社内イベント(社員旅行・忘年会等)は100%損金算入可能ですが、顧客や取引先を接待する費用は一律50%までしか認められません。これは日本の大企業向けルールに似ていますが、金額の上限がない点が異なります。

5. 減価償却費

UAEでは、IFRSに基づいた会計処理が求められており、固定資産の減価償却費は損金算入が認められます。

日本との比較
日本では、税法で定められた法定耐用年数に基づき、定額法または定率法で償却限度額が計算されます。会計上の減価償却費が税法上の限度額を超えた場合、超過部分は損金不算入となります。UAEではIFRS(国際財務報告基準)に従った減価償却がそのまま税務上も認められるのが基本ですが、2025年からは投資不動産について新たな減価償却ルール(年4%)が導入されています。

6. 支払利息

借入金に対する支払利息も損金算入可能ですが、一般支払利子控除制限(GIDLR)が適用されます。

項目 内容
基本ルール 純支払利息がEBITDAの30%まで損金算入可能
De Minimis 純支払利息がAED 1,200万以下の場合は制限なし

日本でも「過大支払利子税制」が存在し、関連者への支払利子のうち、調整所得金額の50%(一定の場合20%)を超える部分は損金不算入となります。

財務書類と計算機

UAEで損金算入が認められない経費

以下の支出は、UAEの法人税法において損金算入が認められません。

損金不算入となる経費 備考
罰金・違約金 交通違反金、行政罰金など。ただし損害賠償金は除く
賄賂・違法な支払い 全額損金不算入
配当金・利益分配 オーナーへの配当は経費ではありません
オーナーの引き出し 事業主個人の私的支出
UAE法人税そのもの 法人税は損金不算入
回収可能なVAT VAT還付対象のVATは経費計上不可
寄付金(一部) 認定公益団体以外への寄付
日本との比較
日本でも法人税、住民税、罰金、賄賂は損金不算入ですが、寄付金については一定の限度額まで損金算入が認められる点が異なります。日本の一般寄付金の損金算入限度額は以下の計算式で求められます。(資本金等の額×0.25%+所得金額×2.5%)×1/4

UAEでは、FTA(連邦税務当局)が認定するQualifying Public Benefit Entityへの寄付のみ損金算入が認められ、それ以外の寄付は全額損金不算入となります。

関連者間取引(Related Party Transactions)への注意

UAEでは、関連者(Related Party)や関係者(Connected Person)との取引について、独立企業間価格(Arm’s Length Price)での取引であることが求められます。

例えば、オーナーの家族が経営する会社にサービスを依頼し、市場価格より高い金額を支払った場合、その超過部分は損金不算入となります。

日本との比較
日本でも同族会社間の取引については「行為計算否認規定」があり、不当に税負担を減少させる取引は否認される可能性があります。また、国外関連者との取引については移転価格税制が適用されます。

証拠書類の保管義務

経費を損金算入するためには、適切な証拠書類の保管が必須です。

証拠書類の保管期間
UAE(法人税) 課税期間終了後7年間
日本(法人税法) 確定申告書提出期限の翌日から7年間
日本(会社法) 10年間

UAEでは、請求書、契約書、銀行明細書、固定資産台帳、給与記録などを最低7年間保管する義務があります。これらの書類が不備の場合、FTAの監査で経費が否認されたり、AED 10,000以上の罰金が課される可能性があります。

請求書や領収書の整理

小規模事業者向けの救済措置(Small Business Relief)

UAE法人税では、売上高がAED 300万(約1億2,000万円)以下の事業者は、Small Business Relief(小規模事業者救済措置)を選択することで、課税所得がゼロとして扱われます。

要件 内容
売上基準 当期および過去全ての課税期間で売上がAED 300万以下
適用期間 2023年6月1日以降開始の課税期間から2026年12月31日まで
注意点 一度でもAED 300万を超えると将来的に適用不可

この救済措置を適用する場合でも、法人税登録と申告は必要です。また、意図的に事業を分割してAED 300万以下に抑える行為は、租税回避防止規定(Anti-Abuse Rules)により否認される可能性があります。

罰金・ペナルティに注意

UAEのFTAは、法人税に関するコンプライアンス違反に対して厳格な罰金制度を設けています。

違反内容 罰金額
法人税登録の遅延 AED 10,000
申告書の遅延提出 AED 500〜20,000
記録保管義務違反 AED 10,000(再発時AED 20,000)
誤った申告 未納税額の最大200%
情報提供の遅延 1日あたりAED 1,000

日本では、無申告加算税(最大20%)、過少申告加算税(最大15%)、重加算税(最大40%)などが課されますが、UAEの罰金制度は定額制のものが多い点が特徴的です。

✅ 結論・まとめ

ドバイ(UAE)で経費を計上する際には、日本の税務ルールとは異なる点を十分に理解しておく必要があります。主なポイントは以下の通りです。

  • 経費は「事業目的のみ」に使われたものでなければ損金算入できません
  • 接待交際費は50%しか損金算入できないのが日本との大きな違いです
  • 関連者間取引は独立企業間価格での取引が求められます
  • 証拠書類は7年間保管が必須であり、不備があると罰金の対象となります
  • Small Business Relief(売上AED 300万以下)を活用すれば法人税負担を軽減できます
  • 罰金制度が厳格であるため、期限内の登録・申告・納税を徹底してください

UAEでの経費計上に対して不安がある方や、日本との税務上の差異について詳しく知りたい方は、当会計事務所までお気軽にお問い合わせください。貴社の状況に即した最適なアドバイスをご提案させていただきます。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(日本・UAE)。ドバイ在住。日本とドバイで会計事務所を経営しています。税務顧問や会計監査、ドバイへの移住支援を行っています。

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