QFZP(適格フリーゾーン法人)とは?税制優遇について解説

投稿:2025年11月28日更新:2025年11月28日ブログ

ドバイのフリーゾーン

ドバイのフリーゾーンやビジネスエリア(イメージ)

ドバイで法人設立を検討されている方、あるいは既にフリーゾーンで事業を行っている経営者の皆様にとって、最大の関心事はやはり「法人税が0%になるのかどうか」という点ではないでしょうか。

UAE(アラブ首長国連邦)では2023年6月より法人税が導入されましたが、フリーゾーン法人に関しては、一定の要件を満たすことで法人税率0%の恩恵を受けられる制度が設けられています。これを「QFZP(Qualifying Free Zone Person:適格フリーゾーン法人)」と呼びます。

しかし、単にフリーゾーンに登記していれば自動的に0%になるわけではありません。要件は非常に細かく、一つでも満たせない場合は通常の9%課税、場合によってはそれ以上の税負担が生じる可能性もあります。

そこで本日は、このQFZPの定義や要件、そして昨今話題となっている「トップアップ税(第2の柱)」との関係について、実務的な観点から解説していきたいと思います。

QFZP(適格フリーゾーン法人)の定義と5つの要件

まず、QFZPとして認められ、法人税0%の適用を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。どれか一つでも欠けてしまうと、その年度から5年間はQFZPの資格を失い、通常通り9%の法人税が課されることになりますので注意が必要です。

要件 内容
1. 実体要件 UAE国内に適切な実体(オフィス、従業員、十分な支出など)を維持していること。
2. 特定所得要件 「特定所得(Qualifying Income)」を得ていること。
3. 選択の不適用 一般税制(税率9%)の適用を選択していないこと。
4. 移転価格税制 関連者との取引において独立企業間価格(アームズ・レングス原則)を遵守し、文書化していること。
5. 監査済み決算書 監査済みの財務諸表を作成し、維持していること。

特に見落とされがちなのが「5. 監査済み決算書」の要件です。メインランドの小規模事業者などでは監査が免除されるケースもありますが、フリーゾーン法人が0%の恩恵を受けるためには、売上規模に関わらず外部監査人による監査が必須となります。これはコストも手間もかかる部分ですので、事前の予算組みが重要です。

「特定所得(Qualifying Income)」とは何か?

QFZPの判定において最も複雑で重要なのが、この「どのような活動から得られる利益が0%対象になるのか」という点です。基本的には、以下の活動(適格活動)から生じる所得が0%の対象となります。

  • 物品や材料の製造・加工
  • 株式や証券の保有
  • 船舶の所有・管理・運航
  • 再保険サービス
  • ファンドマネジメント、ウェルスマネジメント(規制対象のもの)
  • 本社機能(ヘッドクォーター)の提供
  • 関連者への財務・資金調達サービス
  • 航空機のファイナンス・リース
  • 指定区域(Designated Zone)における物品の流通
  • 物流サービス

ここで重要なのは、「誰と取引するか」も影響するという点です。例えば、フリーゾーン企業同士の取引であれば多くのケースで「特定所得」となりますが、フリーゾーン外(メインランドや海外)との取引の場合は、上記のリストにあるような特定の活動でなければ0%にはなりません。

会計士が書類を確認

財務諸表の監査は必須要件(イメージ)

デ・ミニマス(De Minimis)ルールの活用

では、少しでも「特定所得以外」の売上があったら即座にアウトなのでしょうか?実は、これには救済措置があります。それがデ・ミニマス(De Minimis)ルールです。

非特定所得(本来0%にならない所得)の金額が、以下のいずれか低い金額を超えなければ、例外的にその所得も含めて全体を0%として扱うことができます。

  • 総売上高の5%
  • 500万AED(約2億円)

この基準値以内に収まっていれば、少額の雑収入や対象外の売上があってもQFZPの地位を維持できます。しかし、これを1ディルハムでも超えてしまうと、その年度の全所得に対して9%が課税され、さらに翌4年間もQFZPの資格を剥奪されるという厳しいペナルティがあります。

トップアップ税(Pillar 2)との比較・影響

最近、国際税務の分野で大きなトピックとなっているのが、OECD主導の「第2の柱(Pillar 2)」、いわゆるグローバル・ミニマム課税です。UAEでも2025年1月以降開始の事業年度から導入される動きがあります。

「QFZPで0%になるなら、トップアップ税は関係ないのでは?」と思われるかもしれませんが、実は大いに関係があります。

対象となる企業規模の違い

まず、このトップアップ税が影響するのは、連結総収入が7億5,000万ユーロ(約1,200億円相当)以上の多国籍企業グループです。

税率比較の図表

企業規模による税率の違い(イメージ)

企業区分 特徴 税務上の取扱い
中小企業・個人経営の法人 売上規模が7億5,000万ユーロ未満 トップアップ税の対象外。QFZPの要件を満たせば実質税率0%を享受できます。
大規模多国籍企業(MNE) グループ全体の売上が7億5,000万ユーロを超える UAE国内でQFZPとして0%の適用を受けていたとしても、トップアップ税(国内ミニマム課税:DMTT)によって15%まで課税が上乗せされます。

つまり、大企業グループ傘下のフリーゾーン法人にとっては、QFZPの0%メリットが事実上消滅し、15%の納税義務が生じることになります。一方で、多くの独立系企業や中小規模の法人にとっては、依然としてQFZPは非常に強力な節税手段として機能します。

申告・手続き上の注意点

QFZPの適用を受けるためには、単に「自分たちは条件を満たしている」と思うだけでは不十分です。

1. 法人税登録

税金が0%であっても、UAE連邦税務当局(FTA)への法人税登録は必須です。

2. 確定申告書の提出

納税額がゼロであっても、申告書の提出義務があります。「税金がかからないから何もしなくていい」というのは大きな間違いで、無申告加算税などのペナルティ対象となります。

3. 監査報告書の備え付け

前述の通り、外部監査が必要です。決算期が来てから慌てて監査法人を探すのではなく、期中から会計帳簿を適切に整備しておく必要があります。

結論・まとめ

QFZP(適格フリーゾーン法人)は、正しく活用すればUAEでの税負担をゼロにできる非常に魅力的な制度です。しかし、その要件は「特定所得の範囲」や「監査の実施」など厳格に定められており、違反した際のリスクも小さくありません。

また、トップアップ税の導入により、企業の規模によって取るべき戦略が変わってきています。

  • 自社の活動が「特定所得」に該当するか不明確である
  • デ・ミニマスルールの計算に不安がある
  • 監査対応のできる会計帳簿作成を依頼したい

このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ当会計事務所までお問い合わせください。貴社のビジネスモデルに合わせた最適な税務ストラクチャーをご提案させていただきます。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(日本・UAE)。ドバイ在住。日本とドバイで会計事務所を経営しています。税務顧問や会計監査、ドバイへの移住支援を行っています。

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