ドバイで出版会社を設立する方法

投稿:2025年11月26日更新:2025年11月26日未分類

ドバイは中東における主要なビジネスハブとして、出版業界においても魅力的な市場環境を提供しています。外国人投資家が100%の所有権を持つことができ、税制優遇措置や充実したインフラが整備されているため、出版会社の設立地として注目を集めています。本記事では、ドバイで出版会社を設立するための具体的な手順、必要書類、費用、そして税務や法務上の留意点について詳しく解説します。

Dubai Media City

ドバイにおける出版ライセンスの種類と管轄

ドバイで出版会社を設立する際には、まず事業形態と管轄を選択する必要があります。出版ライセンスは主に「出版・印刷ライセンス」に分類され、新聞、雑誌、書籍の印刷版およびデジタル版の発行、通信社の運営、プレスリリースの配信などが対象となります。

ライセンスの発行機関は、本土(Mainland)の場合は経済開発局(DED、現在はDET)または経済観光省、フリーゾーンの場合はドバイメディアシティ(DMC)などのフリーゾーン当局です。そして全国的な規制については、UAE Media Council(UAE メディア評議会)が中心的な役割を担っています。出版業務を行うためには、UAE Media Council からの承認が必須となる点が特徴的です。

本土とフリーゾーンの比較

出版会社を設立する際の重要な選択肢として、本土とフリーゾーンのどちらで事業を展開するかという点があります。

項目 本土(Mainland) フリーゾーン(DMC等)
外国人所有権 100%可能 100%可能
事業範囲 UAE全域で営業可能 フリーゾーン内に制限あり
オフィス要件 物理オフィス必須(Ejari登録) フリーゾーン内オフィス
設立費用(概算) AED 15,000~35,000 AED 12,000~25,000
税制(2023年6月以降) 課税所得AED 375,000超に9% 課税所得AED 375,000超に9%

本土で設立する場合、UAE全域で制限なく営業できるという大きなメリットがありますが、物理的なオフィススペースの確保とEjari登録が必須となります。一方、フリーゾーンのドバイメディアシティで設立する場合は、設立費用がやや低廉で100%の利益送金が可能という利点があります。

重要な点としてフリーゾーン企業もメインランド企業と同様に、2023年6月1日以降施行のUAE法人税法の対象となりました。ただしフリーゾーン企業が「適格フリーゾーン事業者(QFZP)」の要件を満たす場合、適格所得に対しては0%の税率が適用されます。適格所得とは、フリーゾーン内での適格活動から生じた収入であり、本土での取引や適格外活動からの収入は非適格所得として9%の税率が適用されます。

Dubai Business License

出版会社設立の具体的な手順

出版会社を設立するための手順は以下の通りです。

ステップ 内容 所要期間
1 事業形態と管轄の選択 1-2日
2 商号の予約と事前承認 2-3日
3 オフィススペースの確保 1週間
4 必要書類の準備と提出 3-5日
5 UAE Media Council の承認取得 1-2週間
6 ライセンス発行と法人銀行口座開設 1-2週間

まず、本土またはフリーゾーンのいずれかを選択し、事業形態(有限責任会社、支店、フリーランス許可など)を決定します。次に、UAE命名ガイドラインに従って商号を選択し、DETまたはフリーゾーン当局に事前承認を申請します。

オフィススペースの確保は重要なステップです。本土の場合、商業用不動産の賃貸契約を締結し、不動産規制庁(RERA)のEjariシステムで登録する必要があります。Ejari証明書はライセンス申請に必須の書類となります。フリーゾーンの場合は、フリーゾーン内のオフィススペースを確保します。

必要書類と承認プロセス

出版会社設立に必要な主な書類は以下の通りです。

書類名 備考
株主・取締役の有効なパスポート 全株主・取締役分が必要
UAE居住者の場合はエミレーツID 居住ビザ取得時に必要
事業計画書 アラビア語翻訳が必要な場合あり
定款(MOA) 公証が必要
賃貸契約書(Ejari登録済) 本土の場合は必須
UAE Media Council の承認 出版業特有の要件

株主を個人とするか法人とするかは重要な検討事項です。個人株主の場合、必要書類はパスポートのみで手続きが簡素化されますが、法人株主の場合は商業登記、定款、取締役会決議の提出とそれらの英訳、公証、UAE大使館での領事認証が必要となり、時間とコストがかかります。

出版業務にはUAE Media Council からの承認が必要です。このプロセスは、出版物の内容がUAEの法律と文化的価値観に準拠していることを確認するためのもので、通常1~2週間を要します。

Dubai Publishing Office

ライセンス費用と年間更新

出版会社の設立費用は、選択する管轄と事業形態によって異なります。本土の場合、商業ライセンスまたは専門ライセンスの費用はAED 10,000~30,000の範囲で、これに商号登録費(AED 620~750)、事前承認費(AED 310~500)、定款作成・公証費(AED 1,500~3,000)、商工会議所登録費(AED 1,000~3,000)が加算されます。オフィス賃料は立地により大きく異なり、年間AED 15,000~50,000以上となります。

フリーゾーンの場合、最低資本金はAED 50,000で、ライセンス費用を含めた初期費用はAED 12,000~25,000程度です。

ライセンスは1年ごとの更新が必要で、更新費用は事業活動の種類、所在地、ビザ数により異なります。更新は有効期限の30~90日前に開始することが推奨されており、Ejari証明書(本土の場合)、貿易ライセンスのコピー、パスポートとエミレーツIDのコピー、必要に応じて関連当局からの承認書などの書類が必要となります。更新費用は概ねAED 8,000~15,000の範囲です。

法人銀行口座開設とビザ取得

ライセンス取得後、法人銀行口座の開設が必要です。UAE中央銀行の規制により、法人銀行口座は事業運営の必須要件となっています。銀行が求める主な書類には、貿易ライセンス、設立証明書、定款、株式証明書、会社印、全株主のパスポートコピー、エミレーツIDと居住ビザ(UAE居住者の場合)、住所証明などがあります。

KYC(顧客確認)手続きは厳格で、銀行によっては株主の過去6ヶ月分の個人口座明細書、事業計画書、予想キャッシュフロー、既存の銀行口座がある場合は過去3~6ヶ月の明細書、売上請求書や契約書などの事業活動証明も求められます。口座開設には数週間を要することが一般的です。

株主や取締役としてUAEに居住する場合、投資家ビザまたはパートナービザの取得が可能です。ビザ申請には有効な貿易ライセンス、定款(株主または パートナーとして記載されているもの)、パスポートコピー、入国許可証、健康診断証明書、エミレーツID申請書などが必要です。株主は自己スポンサーとして扱われ、会社のスポンサーシップに依存しない点が特徴です。

法人税と税務コンプライアンス

2023年6月1日から施行されたUAE法人税法(連邦令第47号)により、出版会社も法人税の対象となります。課税所得がAED 375,000以下の場合は0%、AED 375,000を超える部分に対しては9%の税率が適用されます。

本土企業はこの標準税率の対象となりますが、フリーゾーン企業が適格フリーゾーン事業者(QFZP)要件を満たす場合、適格所得に対しては0%が適用されます。ただし適格要件を満たさない場合や、本土での取引による非適格所得は9%の税率が適用されます。

2024年3月1日以前にライセンスを取得した企業は2024年5月31日までに、2024年3月1日以降にライセンスを取得した企業はライセンス発行から3ヶ月以内に連邦税務庁(FTA)への登録が必要です。登録が遅れた場合、AED 10,000の罰金が科されます。

法人税申告は財務年度終了後9ヶ月以内に行う必要があります。例えば、2023年12月31日に財務年度が終了する企業の場合、2025年9月30日までに最初の法人税申告を完了しなければなりません。申告には税務登録番号(TRN)、有効な貿易ライセンス、株主・経営者・署名権者のパスポートとエミレーツIDのコピー、監査済み財務諸表などが必要です。

結論とまとめ

ドバイでの出版会社設立は、外国人による100%所有が可能であり、充実したインフラを備えた魅力的な選択肢となっています。本土で設立する場合はUAE全域での営業が可能ですが、Ejari登録された物理オフィスが必須となり、法人税9%の適用対象となります。一方、ドバイメディアシティなどのフリーゾーンで設立する場合は、設立費用がやや低廉であり、適格フリーゾーン事業者要件を満たせば適格所得に対して0%の税率が適用されるという利点があります。

出版業特有の要件として、UAE Media Council からの承認取得が必須となる点に注意が必要です。設立には通常4~6週間を要し、初期費用は本土でAED 25,000~75,000、フリーゾーンでAED 12,000~25,000程度です。ライセンスは年次更新が必要で、法人税申告、銀行口座開設、ビザ取得など継続的なコンプライアンス対応が求められます。

事業計画や資金調達の観点から株主構成を慎重に検討し、専門家のサポートを活用することで、スムーズな会社設立と持続可能な事業運営が実現できるでしょう。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(日本・UAE)。ドバイ在住。日本とドバイで会計事務所を経営しています。税務顧問や会計監査、ドバイへの移住支援を行っています。

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