日本とUAE間で貿易を行う企業にとって、国際貨物に対するVAT(付加価値税)の取り扱いは非常に重要なテーマです。両国間の輸出入では、どのような場面でVATが課税されるのか、またゼロ税率が適用される条件は何かを正確に理解しておく必要があります。
本記事では、UAE VAT法と日本の消費税法の両面から、国際貨物にかかる税務の考え方を解説します。
国際輸送に対する課税の基本的な考え方
国際輸送に対する課税については、日本とUAEの両国で「仕向地主義」という共通の考え方が採用されています。
仕向地主義とは、商品が最終的に消費される国で課税するという原則です。そのため、輸出される商品には輸出元の国では消費税やVATを課さず、輸入される商品には輸入先の国で課税を行います。この原則により、国境を越える貨物については、輸出側でゼロ税率(税率0%)が適用されるのが一般的です。
UAE側のVATの取り扱い
UAEからの輸出はゼロ税率
UAEから日本への輸出貨物については、VATはゼロ税率(0%)が適用されます。
UAE閣議決定第52号(2017年)第33条において、国際輸送サービスはゼロ税率の対象となることが明確に規定されています。これにはUAEから出発する貨物、UAEに到着する貨物、またはUAEを経由する貨物の輸送が含まれます。
UAE国内区間を含む場合の取り扱い
国際輸送の一環として、UAE国内での輸送区間(ドメスティック・レッグ)が発生する場合、その国内区間の取り扱いには注意が必要です。
UAE VAT法では、国際輸送の一部としてのUAE国内区間について、以下の条件を満たす場合に限りゼロ税率が適用されます。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 同一サプライヤー | 国内区間と国際区間が同一の事業者によって提供されること |
| 単一契約 | 全区間が一つの輸送契約でカバーされていること |
この条件を満たせば、ドバイからアブダビ港までのトラック輸送と、アブダビ港から日本への海上輸送を組み合わせた全区間に対してゼロ税率が適用されます。
契約が分かれている場合は5%課税
しかし、もし国内輸送と国際輸送で契約が別々だったり、サプライヤーが異なる場合には、UAE国内区間の輸送には標準税率の5%が課税されます。
具体例で見るVATの取り扱い
ケース1 同一事業者、一括契約の場合(ゼロ税率)
ある物流会社が以下の輸送を一括で請け負ったとします。
- ドバイの倉庫からアブダビ港へのトラック輸送
- アブダビ港から東京港への海上輸送
この場合、両区間が同一事業者によって単一契約で提供されているため、ドバイからアブダビへの国内区間を含む全区間がゼロ税率の対象となります。
ケース2 複数の事業者、別契約の場合(分割課税)
一方で、以下のように契約が分かれている場合を考えます。
- A社がドバイからアブダビ港までのトラック輸送を担当
- B社がアブダビ港から東京への海上輸送を担当
この場合、A社が提供するドバイ→アブダビ間は独立した国内輸送とみなされ、5%のVATが課税されます。一方、B社の国際区間はゼロ税率となります。
| 区間 | 契約形態 | VAT税率 |
|---|---|---|
| ドバイ→アブダビ | A社と個別契約 | 5% |
| アブダビ→東京 | B社と個別契約 | 0% |
日本側の消費税の取り扱い
日本からの輸出は免税
日本からUAEへの輸出貨物については、消費税法第7条により輸出免税(税率0%)が適用されます。
日本の輸出免税の対象となる主な取引は以下の通りです。
- 国内からの輸出として行われる資産の譲渡または貸付け
- 国内と国外との間の通信または郵便
- 国際輸送サービス
仕入税額控除と還付
輸出免税取引は売上に対して消費税がかからないだけでなく、その輸出のために国内で支払った消費税については仕入税額控除を受けることができます。
控除しきれない場合には、その差額が還付金として戻ってきます。これは輸出事業者にとって大きなメリットとなる制度です。
国際輸送の一環としての国内区間
日本においても、国際輸送の一環として行われる国内輸送区間については、一定の条件を満たす場合に輸出免税の対象となります。
条件としては、契約において国内輸送部分が国際輸送の一環であることが明確にされていることが求められます。
| 輸送区間 | 免税条件 |
|---|---|
| 保税地域への搬入前の国内輸送 | 一貫輸送契約であることが書面で確認できる場合は免税 |
| 保税地域内での荷役、保管 | 免税 |
| 輸入許可後の国内輸送 | 課税(国内取引として扱う) |
UAE輸入時のVATと関税
日本からUAEへ貨物を輸出した場合、UAE側では輸入時に以下の税金が発生します。
関税
UAEはGCC共通関税を採用しており、対外税率は原則として5%です。
課税基準はCIF価格(商品価格+保険料+運賃)となっています。
| 品目 | 関税率 |
|---|---|
| 一般品目 | 5% |
| アルコール | 50% |
| タバコ | 100% |
| 医薬品、生鮮食品など | 免税 |
VAT
関税に加え、輸入品には5%のVATがCIF価格+関税額に対して課税されます。
ただし、VAT登録事業者は輸入時に支払ったVATを仕入税額控除(Input Tax Credit)として申告することができます。
保存すべき証拠書類
UAE FTAの公式見解(VATP013)および日本の消費税法上、ゼロ税率や輸出免税を適用するためには、適切な証拠書類の保存が求められます。
保存すべき主な書類は以下の通りです。
- 輸送契約書(全区間をカバーする一括契約であることが確認できるもの)
- 船荷証券(B/L)または航空運送状(AWB)
- 税関輸出申告書または輸出許可証
- インボイス(国際輸送として発行されたもの)
- 貨物がUAEを出たことを証明する書類
まとめ
UAEと日本間の国際貨物に対するVATの取り扱いは、両国とも仕向地主義に基づき、輸出についてはゼロ税率(免税)が適用されます。
ただし、UAE国内区間を含む輸送については、同一サプライヤーによる単一契約という条件を満たさない限り、国内区間には5%のVATが課税される点に注意が必要です。
また、輸出免税やゼロ税率の適用を受けるためには、輸送契約書やB/L、税関申告書などの証拠書類を適切に保存しておくことが重要です。
日本・UAE間の貿易における税務についてご不明な点がありましたら、当会計事務所までお気軽にお問い合わせください。
UAEと日本間の国際貨物にかかるVATの考え方
日本とUAE間で貿易を行う企業にとって、国際貨物に対するVAT(付加価値税)の取り扱いは非常に重要なテーマです。両国間の輸出入では、どのような場面でVATが課税されるのか、またゼロ税率が適用される条件は何かを正確に理解しておく必要があります。
本記事では、UAE VAT法と日本の消費税法の両面から、国際貨物にかかる税務の考え方を解説します。
国際輸送に対する課税の基本的な考え方
国際輸送に対する課税については、日本とUAEの両国で「仕向地主義」という共通の考え方が採用されています。
仕向地主義とは、商品が最終的に消費される国で課税するという原則です。そのため、輸出される商品には輸出元の国では消費税やVATを課さず、輸入される商品には輸入先の国で課税を行います。この原則により、国境を越える貨物については、輸出側でゼロ税率(税率0%)が適用されるのが一般的です。
UAE側のVATの取り扱い
UAEからの輸出はゼロ税率
UAEから日本への輸出貨物については、VATはゼロ税率(0%)が適用されます。
UAE閣議決定第52号(2017年)第33条において、国際輸送サービスはゼロ税率の対象となることが明確に規定されています。これにはUAEから出発する貨物、UAEに到着する貨物、またはUAEを経由する貨物の輸送が含まれます。
UAE国内区間を含む場合の取り扱い
国際輸送の一環として、UAE国内での輸送区間(ドメスティック・レッグ)が発生する場合、その国内区間の取り扱いには注意が必要です。
UAE VAT法では、国際輸送の一部としてのUAE国内区間について、以下の条件を満たす場合に限りゼロ税率が適用されます。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 同一サプライヤー | 国内区間と国際区間が同一の事業者によって提供されること |
| 単一契約 | 全区間が一つの輸送契約でカバーされていること |
この条件を満たせば、ドバイからアブダビ港までのトラック輸送と、アブダビ港から日本への海上輸送を組み合わせた全区間に対してゼロ税率が適用されます。
契約が分かれている場合は5%課税
しかし、もし国内輸送と国際輸送で契約が別々だったり、サプライヤーが異なる場合には、UAE国内区間の輸送には標準税率の5%が課税されます。
具体例で見るVATの取り扱い
ケース1 同一事業者、一括契約の場合(ゼロ税率)
ある物流会社が以下の輸送を一括で請け負ったとします。
- ドバイの倉庫からアブダビ港へのトラック輸送
- アブダビ港から東京港への海上輸送
この場合、両区間が同一事業者によって単一契約で提供されているため、ドバイからアブダビへの国内区間を含む全区間がゼロ税率の対象となります。
ケース2 複数の事業者、別契約の場合(分割課税)
一方で、以下のように契約が分かれている場合を考えます。
- A社がドバイからアブダビ港までのトラック輸送を担当
- B社がアブダビ港から東京への海上輸送を担当
この場合、A社が提供するドバイ→アブダビ間は独立した国内輸送とみなされ、5%のVATが課税されます。一方、B社の国際区間はゼロ税率となります。
| 区間 | 契約形態 | VAT税率 |
|---|---|---|
| ドバイ→アブダビ | A社と個別契約 | 5% |
| アブダビ→東京 | B社と個別契約 | 0% |
日本側の消費税の取り扱い
日本からの輸出は免税
日本からUAEへの輸出貨物については、消費税法第7条により輸出免税(税率0%)が適用されます。
日本の輸出免税の対象となる主な取引は以下の通りです。
- 国内からの輸出として行われる資産の譲渡または貸付け
- 国内と国外との間の通信または郵便
- 国際輸送サービス
仕入税額控除と還付
輸出免税取引は売上に対して消費税がかからないだけでなく、その輸出のために国内で支払った消費税については仕入税額控除を受けることができます。
控除しきれない場合には、その差額が還付金として戻ってきます。これは輸出事業者にとって大きなメリットとなる制度です。
国際輸送の一環としての国内区間
日本においても、国際輸送の一環として行われる国内輸送区間については、一定の条件を満たす場合に輸出免税の対象となります。
条件としては、契約において国内輸送部分が国際輸送の一環であることが明確にされていることが求められます。
| 輸送区間 | 免税条件 |
|---|---|
| 保税地域への搬入前の国内輸送 | 一貫輸送契約であることが書面で確認できる場合は免税 |
| 保税地域内での荷役、保管 | 免税 |
| 輸入許可後の国内輸送 | 課税(国内取引として扱う) |
UAE輸入時のVATと関税
日本からUAEへ貨物を輸出した場合、UAE側では輸入時に以下の税金が発生します。
関税
UAEはGCC共通関税を採用しており、対外税率は原則として5%です。
課税基準はCIF価格(商品価格+保険料+運賃)となっています。
| 品目 | 関税率 |
|---|---|
| 一般品目 | 5% |
| アルコール | 50% |
| タバコ | 100% |
| 医薬品、生鮮食品など | 免税 |
VAT
関税に加え、輸入品には5%のVATがCIF価格+関税額に対して課税されます。
ただし、VAT登録事業者は輸入時に支払ったVATを仕入税額控除(Input Tax Credit)として申告することができます。
保存すべき証拠書類
UAE FTAの公式見解(VATP013)および日本の消費税法上、ゼロ税率や輸出免税を適用するためには、適切な証拠書類の保存が求められます。
保存すべき主な書類は以下の通りです。
- 輸送契約書(全区間をカバーする一括契約であることが確認できるもの)
- 船荷証券(B/L)または航空運送状(AWB)
- 税関輸出申告書または輸出許可証
- インボイス(国際輸送として発行されたもの)
- 貨物がUAEを出たことを証明する書類
まとめ
UAEと日本間の国際貨物に対するVATの取り扱いは、両国とも仕向地主義に基づき、輸出についてはゼロ税率(免税)が適用されます。
ただし、UAE国内区間を含む輸送については、同一サプライヤーによる単一契約という条件を満たさない限り、国内区間には5%のVATが課税される点に注意が必要です。
また、輸出免税やゼロ税率の適用を受けるためには、輸送契約書やB/L、税関申告書などの証拠書類を適切に保存しておくことが重要です。
日本・UAE間の貿易における税務についてご不明な点がありましたら、当会計事務所までお気軽にお問い合わせください。
