交際費にかかる消費税(VAT)にかかる日本とUAEの差について解説

投稿:2025年12月13日更新:2025年12月13日ブログ

日本企業のUAE進出や、ドバイでの法人設立のご相談を受ける中で、意外と見落とされがちなのが「交際費(Entertainment Expenses)」の扱いです。

日本では「交際費」といえば、法人税上の「損金算入限度額(中小企業なら800万円など)」の話が中心になりますが、実は消費税(VAT)の取り扱いにおいて、日本とUAEでは決定的な違いがあります。

ここを勘違いしていると、UAEで「還付されると思っていた税金が還付されない」という事態になり、キャッシュフロー計算が狂うこともあります。

今回は、この「交際費にかかる消費税(VAT)」について、日本とUAEの決定的なルールの違いを、法務・税務の視点から解説します。

交際費のVAT還付(仕入税額控除)の比較

まず、両者の一番の違いは「支払った消費税が戻ってくるかどうか(仕入税額控除できるか)」です。

交際費の消費税(VAT) 扱い
日本 原則、還付OK(控除可) 事業用経費であれば、全額仕入税額控除の対象(※インボイス必須)
UAE 原則、還付NG(控除不可) Blocked Input Tax(ブロックされた仕入税額)として、控除が禁止されている

このように、日本とUAEでは真逆の対応となります。ここを詳しく見ていきましょう。

日本のルールでは、原則「全額控除」

日本でビジネスをされている方なら馴染みがあると思いますが、日本における消費税のルールは比較的シンプルです。

法人税と消費税は別物

よく混同されるのが、法人税(会社の利益にかかる税金)と消費税(預かった税金から払った税金を引く計算)の違いです。

つまり、日本では「取引先との会食」で支払った消費税(10%)は、確定申告の際に「預かった消費税」から差し引くことができるため、実質的な会社負担にはなりません。

日本のビジネスミーティング

インボイス制度には注意

ただし、2023年10月から開始されたインボイス制度により、適格請求書(領収書)の保存が厳格化されています。相手先がインボイス発行事業者でない場合、控除ができなくなる点には留意が必要です。

UAEのルールでは、原則は控除不可

UAEのVAT法(付加価値税法)では、交際費(Entertainment Expenses)にかかるVATは、原則として一切還付されません。これを専門用語で「Blocked Input Tax(ブロックされた仕入税額)」と呼びます。

根拠法令:Executive Regulations Article 53

UAE連邦国税庁(FTA)のVAT施行規則第53条において、以下の支出にかかるVATは控除できない(Non-recoverable)と明記されています。

  1. 従業員以外(顧客、株主、オーナー、役員など)への接待
  2. 従業員への娯楽提供(慰安旅行、パーティーなど)

具体的には、以下のようなものが対象外となります。

日本と同じ感覚で「仕事の経費だから、払ったVAT(5%)は後で申告すれば戻ってくる(相殺できる)」と思っていると、後で痛い目を見ます。UAEでは、交際費にかかるVATは「コスト(費用)」として会社が完全に負担しなければならないのです。

ドバイのレストラン接待風景

例外的に、会議中の「お茶・お菓子」はOK

ただし、すべての飲食がダメなわけではありません。FTAは例外として、「通常のビジネスミーティングの範囲内」で提供される軽微なものについては、VATの還付を認めています。

区分 対象
○ 還付OKの例 オフィスでの会議中に出すコーヒー、お茶、水、ちょっとしたお菓子など。
× 還付NGの例 会議の後に場所を移動して行う「ランチ」や「ディナー」。

この線引きは非常に厳格です。「ランチミーティング」であっても、それがレストランで行われるしっかりとした食事であれば、それは「Entertainment(接待)」とみなされ、VAT控除は否認されるリスクが極めて高いのが実情です。

ドバイのビジネスミーティング風景

まとめ

日本とUAEでは、交際費に対する税務当局のスタンスが大きく異なります。

UAEで経理処理を行う際は、接待交際費のVATを誤って「Recoverable(還付可能)」として計上しないよう、会計システムの設定やマニュアルを徹底する必要があります。VAT監査(Tax Audit)が入った際、最も指摘されやすい項目の一つがこの「交際費のVAT処理」ですので、十分にご注意ください。

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弊社では、UAE独自のVATルールや、日本との税制の違いを踏まえた会計処理のアドバイスを行っております。ドバイ進出や法人設立、税務調査への備えなど、お気軽にご相談ください。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(日本・UAE)。ドバイ在住。日本とドバイで会計事務所を経営しています。税務顧問や会計監査、ドバイへの移住支援を行っています。

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