非居住者になった後の税金はどうしたらいい?居住者のときの違いは?

投稿:2023年7月26日更新:2023年8月28日ブログ

今後ドバイへの長期間の海外勤務や、海外法人設立に伴う移住の際に日本の非居住者になり、UAEの居住者に該当する方もいらっしゃると思います。

日本で非居住者となった場合、居住者だった時と比べ、その納税範囲や対象も変わってきます。

今日は日本の非居住者に該当した場合に、日本側でどのような税務手続が必要とされるのかについて解説します。

居住者と非居住者の納税範囲の整理

日本では原則として、全世界所得課税という考え方をとっています。これは日本の居住者であれば世界中のどこで所得が発生したとしても、日本で納税するべきとする考え方です。

全世界所得課税の考え方によると、居住者(非永住者を除く)の場合は、日本で発生する給与や事業、不動産などの所得のみならず、海外で発生した所得(例えば海外で行った講演会の報酬やFX・暗号資産による所得等)についてもその全て日本側で所得を合算し、申告・納税することになります。

裏を返せば、非居住者となった場合は全世界所得課税には該当しません。
非居住者は日本に居住していないため、課税はあくまでその者が居住する国においてなされるべきという考え方をとっているからです。

非居住者の場合は、その利益の源泉が日本にある所得に対して、課税されることになります。

居住者  …全世界所得課税

非居住者 …日本の国内源泉所得にのみ課税

非居住者の国内源泉所得とは何か?

非居住者の課税範囲は国内源泉所得に限られていますが、恒久的施設(Permanent Establishment, PE)の有無により課税方法が異なります。

PEとは、支店や不動産、法人格、事業所、代理人等のことを表す税務上の概念です。事業を行ううえで必要とされる一定の場所や現地代理人など、海外で所得を稼得するために必要不可欠なリソースのことを表します。特に不動産は典型的なPEに該当します。

例えば、もともと日本居住だったAさんがドバイに駐在をすることになり、非居住者となりました。
その際に保有していた居住用の不動産には住まなくなったので、今後は誰かに賃貸するとします。
当該不動産は今後非居住者となるAさんのPEに該当することから、不動産の賃貸により得られる所得はPEに帰属する国内源泉所得に該当することになります。

また、必ずしもPEがなくとも国内源泉所得に該当するケースもあります。
例えば、非居住者が日本において講演等を行い得た報酬については、不動産などのPEを源泉とする所得には該当しませんが、日本国内に源泉のある所得であると言えます。これはPEに帰属しない国内源泉所得と言います。

PEに帰属する国内源泉所得については、
PE自体が日本居住者のような人格があるものとして、総合課税(他の所得と合算して)所得を計算する必要があります。すなわち確定申告を行うことが必要です。

PEに帰属しない国内源泉所得については、
上記同様に総合課税となるケースのほか、収益発生時に源泉徴収のみで課税関係が完結され、確定申告を必要としない分離課税になるケースがあります。

非居住者PEがある1. PEに帰属した所得確定申告が必要(総合課税)
2. 上記以外確定申告が必要(総合課税)
又は
源泉徴収(源泉分離課税

非居住者の国内源泉所得に対する源泉徴収の税率

非居住者の国内源泉所得に対する源泉徴収の税率は、その所得がどのような方法で発生したかにより異なります。所得の種類に非常に細かく設定されているため詳細は省きますが、源泉徴収税率は概ね10.21%-20.42%の間で設定されています。

ドバイ移住の場合によく相談がある事例としては、以下のような税率があります。

人的役務の提供事業の対価:20.42%

不動産の賃貸料等:20.42%

上場株式等の配当等:15.315%

非上場会社の配当等:20.42%

給与その他人的役務の提供に対する報酬、退職手当等:20.42%

これはあくまで、発生時に源泉徴収の義務が発生するということであり、源泉徴収後に総合課税として確定申告が必要なケースもあれば、当該源泉徴収のみで課税関係が完了するケースもあります。

租税条約は国内法に優先する点に留意

上記の税率はあくまで日本国内の税率によるものです。実際に源泉徴収の税率を考える際は、日本国内の税法だけでなく日本・UAE間の租税条約も検討しなければなりません。
なぜなら租税条約は二国間の取り決めであるため、二国間の法律よりも租税条約が優先されるからです。

すなわち、日本国内法に税率の記載があったとしても、租税条約上で別の規定があれば、当該税率が適用されます。具体的には、以下のようなものがあります。

配当所得:10%(親子会社間は 5%) 

利子所得:10%(政府等は免税)

使用料 :10%

例えば、非上場会社の配当について、日本の税法では20.42%と記載があります。

しかし、租税条約によれば、配当所得は10%を上限とする旨の記載があります。

この場合、配当に関する源泉徴収の税率は10%となります。

非居住者が日本で納税が必要な場合の対応方法

先述の通り非居住者の納税方法は、確定申告が不要な源泉分離課税によるものと、確定申告が必要な総合課税に該当するものの二つがあります。

源泉分離課税の場合、支払者が非居住者の代わりに源泉徴収をすることで課税関係が完結します。

例えば、非居住者に対して企業が給与や配当の支払いを行う場合、支払者が源泉徴収の金額を控除した上で非居住者に支払を行い、預かった源泉税を非居住者の代わりに税務署に納税します。この源泉税の支払をもって課税関係が完結しており、確定申告は不要です。

非居住者となったものは忘れずに源泉徴収を行うことを支払者に伝え、源泉税の徴収漏れがないようにする必要があります。近年は不動産の賃借料など、非居住者に対する源泉徴収の徴収漏れが多発しており、税務署に指摘され延滞税を払うことも増えてきているため、特に慎重になる必要があります。

一方で総合課税によるものは、その他所得と合算が必要なことから確定申告を行う必要があります。
しかし非居住者になった後は、日本に住所や連絡先を通常持たないことから、納税者の代わりに税務申告を行う納税管理人を選定することが一般的です。

納税管理人は、税理士や公認会計士などの専門家である必要はなく、親や親族、友人など誰でも本人の代わりになることが可能です。また、個人でなく法人でも構いません。

非居住者となる際に、遅滞なく納税管理人を設定し、届出しておくことで税務上の優遇もあるため、出国前に遅滞なく納税管理人を設定しておきましょう。

まとめ

非居住者が日本で納税が必要になったケースについて説明してきました。

源泉徴収の税率や租税条約、恒久的施設、納税管理人など、あまりなじみのない制度が絡み合い、非常に複雑なことがお分かりいただけたかと思います。

当会計事務所は、日本およびアラブ首長国連邦の両方で公認会計士資格を登録しており、非居住者に対する税金等について適切にアドバイスすることが可能です。

お困りの際には、当会計事務所までお気軽にご相談ください。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(日本・UAE)。ドバイ在住。日本とドバイで会計事務所を経営しています。税務顧問や会計監査、ドバイへの移住支援を行っています。

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