ドバイ法人でも日本の消費税がかかるって本当?「電気通信利用役務の提供」を国際税理士が解説

投稿:2023年7月26日更新:2026年5月30日ブログ

ドバイで法人を設立し、現地に移住しつつ日本市場向けにインターネットビジネスを行おうとされる方が近年増えています。そういった方が見落としがちなのが、「日本の」消費税の論点です。

たとえUAEで法人を設立したとしても、インターネットを介在したビジネスを日本居住者向けに行う場合、日本の消費税がドバイ法人にも課される可能性があります。本記事では、海外法人から日本市場向けにサービスを提供する場合の消費税の取り扱いについて、最新制度を踏まえて解説いたします。

1. 消費税が課税される取引の4要件

消費税とは「消費」に対してかけられる税金であり、ほとんどの商品やサービスが課税対象となります。消費税の課税対象となるためには、以下の4つの要件を全て満たす必要があります(消費税法第4条(課税の対象))。

要件 内容
国内において行われるものであること
事業者が事業として行うものであること
対価を得て行われるものであること
資産の譲渡・貸付けまたは役務の提供であること

これらの要件に該当しない取引には、消費税は課税されません。ドバイ法人との取引については、原則として「①国内において」という要件を満たさないため、国外取引として消費税は課されないというのが本来の取扱いです。

2. 「電気通信利用役務の提供」に該当する場合の例外

2-1. 改正の背景

従来、国外事業者が国境を越えて行う電子書籍や音楽の配信事業については、上記の4要件の「国内において」を満たさないとして、消費税の課税対象から外れていました。

しかし、電子書籍・音楽配信などの国境を越えた電子取引は年々増加し、国内事業者との間で不公平が拡大していきました。分かりやすい例として、Kindleと楽天ブックスの電子書籍の価格差が挙げられます。

事業者 所在地 改正前の販売価格
Kindle(Amazon) 海外法人 500円(消費税非課税)
楽天ブックス 日本法人 550円(税込10%)

同じ電子書籍であるにもかかわらず、提供する事業者の所在国によって最終消費者への販売価格に差が生じてしまい、国内事業者の競争力を著しく低下させる構造となっていました。

2-2. 内外判定基準の改正

こうした状況に対応するため、平成27年度税制改正により、国境を越えた電気通信利用役務の提供に係る消費税の取り扱いが見直されました。その結果、「国内において」の取引に該当するかの判定基準が、役務提供者の所在地から、役務の提供を受ける者の住所等に改正されました(国税庁「国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税」)。

先ほどの電子書籍の例で言えば、役務提供を受ける者(電子書籍の購入者)が日本国内に住所を有し、日本国内で購読される場合は国内取引に該当するという形に変更されました。

住所等が国内にあるかどうかの判定は、客観的かつ合理的な基準に基づき行います。例えば電子書籍のダウンロードサービスでは、顧客がインターネットを通じて申し出た住所地と、決済で利用するクレジットカードの発行国情報とを照合する等、各取引の性質に応じて合理的かつ客観的に判定できる方法を採ることとなります。

3. 電気通信利用役務の提供に該当する取引・該当しない取引

3-1. 該当する取引(例)

以下のような事業は、電気通信利用役務の提供に該当すると国税庁が示しています(国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等について」)。

3-2. 該当しない取引(例)

一方、以下のような事業は電気通信利用役務の提供に該当しないとされています。

4. BtoC事業(消費者向け電気通信利用役務の提供)に該当する場合

4-1. ドバイ法人による直接納税

例えば、情報プラットフォーム(note・Tips等)を利用した情報の販売や、音声配信プラットフォーム(Voicy等)を通じた有料配信などは、消費者向け電気通信利用役務の提供に該当する典型例です。

このような事業は、外国法人であるUAE法人から商品・サービスを販売した場合でも、日本の消費税の課税取引に該当します。そのため、UAE法人であっても財務情報を集計し、消費税を適切に計算した上で日本の管轄税務署に申告・納税する必要があります(国税庁タックスアンサー No.6118(国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係))。

4-2. 事業者免税点制度(基準期間と特定期間の2段階判定)

原則として、その課税期間の基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、消費税の納税義務が免除されます(事業者免税点。国税庁タックスアンサー No.6501(納税義務の免除))。電気通信利用役務の提供のみを行う国外事業者の場合、国内に対して行った「消費者向け電気通信利用役務の提供」に係る売上高で判定します。

ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間(個人は前年1月1日〜6月30日、法人は原則として前事業年度開始の日以後6か月)における課税売上高が1,000万円を超える場合には、納税義務は免除されません(消費税法第9条の2)。法人設立2期目は基準期間が存在しないため、この特定期間判定が事実上の納税義務判定基準となります。

4-3. 国外事業者は給与等支払額による判定が不可(令和6年度改正)

従来、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額により行うことが認められており、これによって設立2期目も免税事業者となるケースが多く発生していました。

しかし令和6年度税制改正により、2024年10月1日以後に開始する課税期間から、国外事業者(所得税法上の非居住者である個人事業者および法人税法上の外国法人)については、特定期間における1,000万円の判定を給与等支払額により行うことができなくなりました。つまり、ドバイ法人(外国法人)は、特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合、給与水準に関係なく設立2期目から納税義務を負うこととなります。これは日本市場向けにインターネットビジネスを展開するドバイ法人にとって極めて重要な改正であり、設立直後から消費税の納税義務が発生し得る点に十分な留意が必要です。

また、ドバイ法人がインボイス制度(適格請求書等保存方式、2023年10月開始)の適格請求書発行事業者として登録した場合は、基準期間・特定期間の課税売上高にかかわらず課税事業者となります。日本の取引先が仕入税額控除を受けるためにインボイス発行を求めるケースもあるため、登録の要否は事業実態に応じて慎重に検討する必要があります(国税庁「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」)。

4-4. プラットフォーム課税の創設(2025年4月開始)

2024年度税制改正により、2025年4月1日以降、国外事業者がApp Store・Google Play等の特定のデジタルプラットフォームを介して日本国内の消費者向けに電気通信利用役務を提供する場合、一定要件を満たすプラットフォーム事業者が国外事業者に代わって消費税の納税義務を負うこととなりました(プラットフォーム課税)。

ドバイ法人が直接消費者と取引するのではなく、特定プラットフォームを経由する場合は、ドバイ法人側の納税義務がプラットフォーム事業者に移転する可能性があるため、自社のビジネスモデルが該当するかを確認する必要があります(国税庁「プラットフォーム課税の創設について」)。

4-5. 納税管理人の選任

国内に住所または居所を有しないドバイ法人については、申告書・届出書の提出や税金の納付等、日本の国税に関する事項を行うために納税管理人を選任する必要があります。

5. BtoB事業(事業者向け電気通信利用役務の提供)に該当する場合

5-1. リバースチャージ方式

BtoB事業に該当する取引としては、インターネット広告の配信(リスティング広告など)や、日本居住者向けにアフィリエイトサービスを提供するASP(アフィリエイトサービスプロバイダ)との取引等が典型例として挙げられます。

BtoB事業を行う国外事業者は、自社で消費税を納税せず、サービスの提供を受けた日本国内の事業者側が消費税を申告・納税する義務を負います。消費税の納税義務がサービス受給側(日本法人)に移転することから、これをリバースチャージ方式(特定課税仕入れに係る課税の特例)と呼びます(国税庁タックスアンサー No.6121(事業者向け電気通信利用役務の提供))。

5-2. 事前表示義務

「事業者向け電気通信利用役務の提供」を行う国外事業者は、あらかじめ当該取引が「リバースチャージ方式」の対象である旨を表示しなければなりません。

具体的には、インターネット上で取引内容を紹介する場所、または個別に取引内容の交渉を行う場合の連絡文書等において、取引相手が容易に認識できるよう当該表示を行う必要があります。

5-3. BtoCとBtoBで異なる対応

ここまでをまとめると、BtoC事業に該当するUAE法人は自社が日本の消費税を申告・納税する必要があり、BtoB事業を行う場合は取引先(日本法人)にリバースチャージによる納税を行ってもらう旨を事前に明示する必要があります。事業類型に応じて全く異なる対応が求められる点に注意が必要です。

6. まとめ

国境を越えた電気通信利用役務の提供に関する消費税の論点は難易度が高く、ドバイの法人設立エージェントや国際税務に精通していない税理士が見落としがちな分野です。しかし、これを見落とした場合の消費税の影響は売上規模に比例して極めて大きくなり、追徴課税や加算税のリスクも無視できません。

当事務所では、ドバイ・UAEを拠点に活動する日本人公認会計士として、UAE法人による日本向けインターネットビジネスの消費税対応、納税管理人の受任、インボイス・プラットフォーム課税への対応をワンストップでご提供しております。UAE進出をご検討中で消費税の不安や疑問がある方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

【根拠法令・出典】

※本記事は2026年5月時点の情報に基づきます。最新の改正動向は国税庁公式情報および当事務所までご確認ください。

 

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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