【ドバイ暗号資産】VARAが法人税の主管当局に指定、暗号資産関連ビジネスへの影響とは

投稿:2026年5月24日更新:2026年5月24日ブログ

UAEで暗号資産関連のビジネスを展開されている方や、これからフリーゾーンでファンド運用業を始めようとお考えの方にとって、無視できない動きが2026年2月にありました。UAE財務省が閣僚決定第336号(Ministerial Decision No. 336 of 2025)を発出し、ドバイの仮想資産規制庁 VARA(Virtual Assets Regulatory Authority)が法人税法上の「主管当局」として正式に追加されたのです。

この改正により、VARAライセンスを保有する一定のフリーゾーン法人が法人税率0%(QFZP扱い)の適用を受ける道が制度上明確になりました。一方で「VARAライセンスを取得すれば自動的に0%」というわけではなく、要件を誤解すると思わぬ課税リスクを抱えることになります。本稿では公認会計士の視点から、第336号の中身と実務上の留意点を整理します。

1. ニュースの概要|閣僚決定第336号で何が変わったか

UAE法人税法(連邦政令法第47号)と閣僚決定第229号は、フリーゾーン法人が0%税率を享受するための「適格活動」のうち、ファンド運用サービスやウェルス・投資運用サービスについて主管当局の規制下にあることを要件としていました(出典はGulf NewsおよびBaOne UAEの解説)。

これまで主管当局リストはCBUAE、DFSA、FSRA、SCAの4機関に限定されており、ドバイ本土(DIFC外)の仮想資産事業を所管するVARAは含まれていませんでした。第336号はこの空白を埋め、VARA下のファンド運用業務およびウェルス・投資運用業務を適格活動の枠組みに正式に組み込んだものです。

項目 改正前 改正後(第336号)
主管当局リスト CBUAE / DFSA / FSRA / SCA の4機関 上記4機関+VARA
VARA下のファンド運用 適格活動該当性が不明確 適格活動として明確化
VARA下のウェルス・投資運用 同上 適格活動として明確化
取引所運営・カストディ・ブローカー業務 適格活動に該当せず 引き続き対象外
QFZP他要件(実質活動・監査・移転価格) 必須 引き続き必須

2. 「VARA取得=0%」ではない理由

最大の誤解ポイントは、第336号によってVARA規制下のすべての暗号資産事業者が自動的に0%になるわけではないという事実です。第336号はQFZP(適格フリーゾーン法人)の要件のうち「主管当局要件」のひとつをクリアしやすくしたにすぎず、ほかの要件をすべて満たさなければ標準税率9%が適用されます。

 課税所得300万AEDの試算

  • QFZP要件をすべて満たす場合は、法人税0AED
  • QFZP要件を満たさない場合は、約236,250AEDの法人税が発生(375,000AED超部分に9%)

体制を整えれば数十万AEDの節税効果が見込めますが、以下3点の論点を必ず確認しておきたいところです。

論点 実務チェックポイント
適格活動該当性 業務内容がファンド運用またはウェルス・投資運用の定義に合致しているか。カストディや取引所運営が主業の場合は不該当
実質的活動(Substance) 専属従業員、ドバイ国内での意思決定、適切なオフィスの確保。クラウド完結型の運営では立証が難しい
監査・移転価格 監査済財務諸表の作成保管、関連者取引のTPドキュメント整備

3. 日本側論点|タックスヘイブン対策税制

日本居住者の方がドバイにVARA下の暗号資産ファンドを設立する場合、日本側のタックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)が依然として大きな論点です。

UAE側で0%が適用されることがそのままトリガー税率を下回る根拠となり、結果として日本側で合算課税の対象になるケースが出てきます。UAEで節税できても日本側で取り戻されては意味がありませんので、日本の親会社や個人レベルでの税負担まで見据えた設計が不可欠です。

まとめ

閣僚決定第336号は、ドバイで暗号資産関連のファンド運用・ウェルス運用業を行う事業者にとって、税務取扱いを明確化する前向きな改正です。とはいえVARAライセンス取得=即0%ではなく、QFZP要件全体を満たす体制づくりが伴って初めて効果が出ます。

📋 今回のポイント

  1. VARAが主管当局に追加 ファンド運用とウェルス・投資運用が適格活動として明確化
  2. 取引所運営・カストディは対象外 主業務の内容を改めて確認
  3. QFZP他要件は引き続き必須 実質活動、監査、移転価格をクリア
  4. 日本側CFC税制に注意 UAEで0%でも日本側で合算課税の可能性
  5. 設立段階からの税務設計が安全 ライセンス取得と並行して構造を整える

VARAライセンスの取得をご検討中の方や、既にライセンスを保有していて事業内容の整理を検討されている方は、お早めに当会計事務所までご相談ください。UAE側と日本側の両面から、貴社の事業内容に即したストラクチャーをご提案いたします。お役に立てることがありましたら、お気軽にお問合せください。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(日本・UAE)。ドバイ在住。日本とドバイで会計事務所を経営しています。税務顧問や会計監査、ドバイへの移住支援を行っています。

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