ドバイ法人にキャピタルゲイン税はかかる?参加持分免税制度で節税する方法を解説

投稿:2026年1月26日更新:2026年6月6日ブログ

ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。

中東拠点としてドバイ法人を設立し、株式や不動産の売却益を狙うケースが増えています。

「ドバイはキャピタルゲイン税がゼロだから、法人名義で売却しても非課税だよね?」

結論からお伝えすると、UAEには独立したキャピタルゲイン税はないものの、法人が計上する売却益は原則として法人税(9%)の課税所得に含まれます一方、個人名義の資産売却益は通常UAE側で非課税です。本記事では、ドバイ法人を中心にキャピタルゲインの課税関係と実務上の注意点を整理します。

UAEにおけるキャピタルゲインの基本構造

UAEには「キャピタルゲイン税」という独立税目は存在せず、2023年6月導入の連邦法人税法があらゆる事業所得(資産売却益を含む)を一括して課税所得とみなします。したがって、個人と法人で扱いが大きく異なります。

保有者区分 UAE側でのキャピタルゲインの原則的な扱い
個人 原則非課税(法人税も個人所得税も非課税)
UAE居住法人 売却益は事業所得として法人税の課税対象(ただし免税規定あり)
UAE非居住法人 UAEに恒久的施設やUAE不動産がある場合に限定して課税

UAE法人税法におけるキャピタルゲインの位置付け

UAE法人税の基本枠組みは次の通りです。

区分 税率と概要
課税所得AED 375,000以下 法人税率0%
課税所得AED 375,000超 超過部分に9%課税
適格フリーゾーン法人(QFZP) 適格所得に0%、それ以外は9%
大規模多国籍企業(売上7.5億ユーロ超) 2025年1月1日以降、Pillar Two準拠でDMTT 15%適用

キャピタルゲインは独立の概念として置かれず、資産売却益は他の収益と同様、課税所得に含まれる事業所得として扱われます。なお、未実現の評価益については実現基準方式(Realisation Basis)を選択することで売却時まで課税を繰り延べることが可能です。不動産や長期保有資産では初年度申告前の選択判断が重要です(参考:PwC UAE Corporate Tax Income Determination)。

個人のキャピタルゲイン

UAEでは個人所得税も個人レベルのキャピタルゲイン税も存在しないため、個人名義の資産売却益(不動産・上場株式・暗号資産など)は原則非課税です。

ただし不動産については、売買時にドバイ土地局(DLD)の登録手数料(取引額の4%)や商業用物件のVAT 5%など、別形態のコストが生じます。

また「個人名義でビジネス収入を受け取れば9%を回避できる」といった発信もありますが、実態が事業活動と認定されれば、法人設立義務・将来的な課税・罰金リスクが生じます

参加持分免税(Participation Exemption)

UAE法人税法において、キャピタルゲインに最も大きな影響を与える制度が参加持分免税です。一定要件を満たす持分から生じる配当や売却益を、法人税の課税所得から除外できます。

主な要件

  • 持分割合5%以上、または取得価額AED 400万以上
  • 12カ月以上保有(または保有意図)
  • 対象子会社が所在国で9%以上の法人税等の課税対象(純粋持株会社は緩和あり)
  • 対象会社の資産構成に関するAsset Test

2025年1月1日以降の改正に注意

Ministerial Decision No. 302 of 2024により、所有要件の代替基準(Ownership Threshold Alternatives)やAsset Testの適用範囲が改正されました。取得価額AED 400万基準を満たせば、5%所有要件・5%利益分配要件・(非関連者であれば)Asset Testがバイパスされます。従来は問題なかったストラクチャーでも、改正後の「Subject-to-Tax要件」と「5%所有要件」の再検証が必要です。

典型的には、ドバイ持株会社が9%以上課税国の子会社株式を5%以上・12カ月以上保有した後に売却するケースで、売却益が法人税非課税となる余地があります。一方、少数持分の短期売買は要件を満たさず、通常9%課税の対象です。

フリーゾーン法人とキャピタルゲイン

DIFCやDMCCなどのフリーゾーン法人については、「フリーゾーンならキャピタルゲインは常にゼロ」は誤りです適格フリーゾーン法人(QFZP)として認定された場合に、適格所得に対してのみ0%が適用されます。

適格所得には他フリーゾーン法人との取引所得や、株式・証券の投資目的保有関連所得などが含まれます。一方、UAE国内居住者個人との取引・UAE国内不動産関連所得・除外対象事業所得は適格所得から除外され、9%課税となります。

2025年事業年度から義務化されたQFZPの監査要件

Ministerial Decision No. 84 of 2025により、すべてのQFZPは売上規模を問わず監査済財務諸表が必須となりました(休眠法人も対象)。さらに、QFZP要件を一度でも満たさないと、その事業年度およびその後4年間(計5年間)9%課税となります。暦年決算の場合、初回監査済財務諸表とCT申告は事業年度末から9カ月以内が期限です。

関連記事:適格フリーゾーン法人(QFZP)とは?法人税を0%にする5つの要件について解説

不動産関連キャピタルゲインの注意点

ドバイ不動産投資で特に注意すべきは、UAE国内不動産から生じる所得や売却益は、フリーゾーン法人であっても原則として9%課税の対象になる点です。

所有者 UAE側のキャピタルゲイン取扱い
個人 原則非課税(ただしDLD 4%・商業用VATは発生)
UAE法人(本土) 課税所得に含まれ、超過部分に9%課税
フリーゾーン法人 国内不動産関連所得は適格所得から除外され9%課税

また、不動産そのものを売却せずSPC株式の譲渡形態を取る場合でも、実質を重視して不動産譲渡と判断される可能性があり、当局の課税関係判断には注意が必要です。

日本側税制との関係

日本居住者や日本法人がドバイ法人を通じて投資する場合、UAE側だけでなく日本側の税制も同時に考慮する必要があります。

タックスヘイブン対策税制(CFC税制)

UAEの法人税率9%は、日本のCFC税制における適用免除基準となる租税負担割合の閾値(特定外国関係会社:27%以上で免除/対象外国関係会社:20%以上で免除)を下回るため、持株構造や所得内容によっては、ドバイ法人の所得が日本側で合算課税される可能性があります。UAE側で参加持分免税により非課税となっても、日本側で合算課税されればグループ全体として日本の税率に近い負担が生じます。

関連記事:ドバイ法人にかかるタックスヘイブン対策税制(CFC税制)について解説

国外転出時課税

一定額以上の有価証券を保有してドバイへ移住する場合、国外転出時課税の対象となることがあります。出国時点で未実現含み益に対して日本側で課税されるため、UAEで非課税であっても日本側課税が先行します。

関連記事:出国税(国外転出時課税)の納税猶予制度|申請要件と最大10年延長ルールを解説

実務上の注意点

まとめ

📋 今回のポイント

  • UAEに独立したキャピタルゲイン税はない:法人の売却益は法人税の課税所得に含まれる
  • 個人のキャピタルゲインは原則非課税:ただし不動産はDLD登録手数料4%等のコスト発生
  • 参加持分免税で実質非課税も可能:5%以上・12カ月以上・Subject-to-Tax要件など2025年改正に注意
  • QFZPは全社監査義務化:Ministerial Decision 84 of 2025、要件外れで5年間9%課税
  • 日本側CFC税制・出国税との整合が不可欠:UAE非課税でも日本側で合算課税の可能性

ドバイ法人を利用したキャピタルゲインの計画は、UAE法人税、フリーゾーン規制、各国との租税条約、日本側の国際税務ルールが複雑に絡み合います。自社グループの構成や投資計画に応じて最適なスキームは大きく異なりますので、当会計事務所は、ドバイ法人のキャピタルゲインに関する税務面で包括的なアドバイスを提供しています。ご検討の方は、ぜひ当会計事務所までご相談されることをおすすめします。

根拠条文・出典

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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