中小企業の経営者が、ドバイに法人設立し、現地に移住した後も引き続き日本の得意先にコンサルティングを行ったり、アフィリエイトなどの事業を継続するケースがあります。
そういった会社の場合、UAEで何か税金を支払う必要があるでしょうか?
納税義務があるにもかかわらず、申告や納税を行わなかった場合は、罰金などのペナルティーが課されてしまうこともあります。そのような税務リスクを避けるため、今回はマネジメントやマーケティング、アフィリエイト等のサービス(役務)の提供を行うUAE企業に対する税制について解説したいと思います。
主に考えるべき税金は「VAT」と「法人税」
UAEには税金が全くないと思われることも多いですが、実際には様々さまざまな税制が取り入れられています。
例えば、エナジードリンクなどを仕入れる際に課される物品税や、製品輸入時の支払う関税、製品を購入した際やサービスを受けた際に支払う必要があるVAT(付加価値税)、そして2023年6月から始まった法人税などもあります。
その中で、日本向けにコンサルティングやサービスを提供する一人会社などのオーナー企業が特に気を付けるべきは「VAT」と「法人税」です。
なぜなら、上記2つは有形資産(製品・商品等)の仕入れや販売のみならず、サービスの提供に対してもかかる税金であるとともに、自主的に申告しなければならず、期限に遅れると罰金がかかる性質があるからです。
それでは、VATと法人税について申告及び納税の義務があるのかどうかについて記載します。
VATの申告納税義務はあるのか
UAEでは年間で一定の売り上げを上げる法人に対して、VAT(Value Added Tax)の納税する義務があります。具体的には、1年間で375,000AEDを超える売上高を上げる法人が納税義務者となります。
1AED=40円とすると、日本円で約1500万円くらいです。日本では売上高が1000万円を超える会社が消費税の納税義務者となっていることから、日本に比べると少し緩いものの似たようなルールになっています。
いずれにしても、年間で375,000AEDを超える売り上げを現地法人で計上している場合、VATの申告と納税を行う必要があります。
「日本向けの売上にはVATはかからないから、VATの申告は不要なんじゃないの?」
という質問をよく受けることがあります。
確かにVATの申告が不要の人もいますが、申告が必要な人もいます。
原則としては、先ほどの売上高の閾値を超えていれば、原則として3か月(もしくは各月)ごとにVATの申告と納税をしなければなりません。ただし例外があり、売上が全て(100%)が海外に対するものである法人は、一定の届け出を行うことでVATの申告が免除されることがあります。
これを免除申請(VAT Exemption)と言い、申請が受理された場合はVATの申告は不要になります。逆に言うと、免除申請をしていなかった場合や申請を怠っていた場合は原則通りVATの申告義務が生じます。
免除申請を行っていなかった場合で、売上高が375,000AEDを超える法人は、原則通り課税対象者となるためVATの登録及び申告が漏れていることになります。罰金や延滞税が発生する可能性もあるため、注意してください。
まとめると、以下のようになります。
・売上が375,000AEDを超えていない場合:VATの申告納税は不要。
・売上が375,000AEDを超えており、日本向け売上が100%である場合:VATの納税義務があるものの、免除申請を行い、承認された場合に限り申告納税は不要。
・売上が375,000AEDを超えており、その100%が海外売上ではない場合:VATの申告納税が必要
法人税の申告納税義務はあるのか
UAE法人は課税事業者に該当することから、法人税についても申告納税の対象となります。
具体的には、課税所得の金額が375,000AEDを超えなければ0%、375,000AEDを超えた場合は、その超えた金額のみ9%の法人税が課されます。
ここで注意が必要なのは、VATが売上高が375,000AEDを超えた場合に課税されるのに対し、法人税は課税所得が375,000AEDを超えた場合に課税される点です。
課税所得は売上高よりも利益に近い概念であり、対象者が異なるため注意が必要です。
そして法人税については100%が海外売上であったとしても、VATのように免除申請を行うことはできません。UAE法人で計上された利益(課税所得)の9%は、国内売上か海外売上かどうかにかかわらず、申告・納税が必要です。
仮に課税所得が375,000AED未満であっても、VATと違って申告は必要になります(納税は不要)。
課税所得の9%を計算するためには、会社の売上や経費などを正確に計算し、利益を適切に算出する必要があります。つまり、会計帳簿を適切に作成し、情報を整理しておく必要があることを理解しておくことが重要です。
まとめると、以下のようになります。
・課税所得が375,000AEDまでの場合:法人税率は0%。
・課税所得が375,000AEDを超えた場合:超えた部分に対して9%の法人税が課される。
VAT登録についての勘違いが多い印象
主に税金対策を目的としてUAEに移住された方々の中で、VATに関する届出が漏れているケースが多い印象です。
実際には、VATの納税額がゼロだったとしても、適切な登録や免除申請が行われていなければ、罰金が発生することがあります。登録が遅れれば遅れるほど、罰金や延滞税が増える可能性があるため、登録が適切に行われていない場合は、早急に申請を行うことが重要です。
日本側の消費税や源泉税は別途検討が必要
ここまで説明した内容は全てUAE側の税制です。
売上の性質によっては、日本側(取引先)で源泉徴収を行う必要があったり、日本の消費税をドバイ法人で払わなければならないケースもあります。日本やUAEの国内法のみならず、両国の視点から税金を考えなければなりませんので、慎重に検討が必要なケースもあります。
まとめ
UAEは非常に税制が優遇されている地域ですが、国際的な要請により税制が変更されています。今後は、税金に関しても正確な申告と納税が求められています。また、会計帳簿の作成や証拠書類の整備も必要です。VATや法人税などの専門分野に関しては、専門家に相談することをお勧めします。ご質問があれば、お気軽に当会計事務所までお問い合わせください。