UAEと日本で大きく違う交際費のVAT(消費税)|Blocked Input Taxで還付不可となる落とし穴と実務対応

投稿:2025年12月13日更新:2026年5月26日ブログ

日本企業のUAE進出やドバイでの法人設立のご相談を受ける中で、意外と見落とされがちなのが交際費(Entertainment Expenses)の扱いです。

日本では「交際費」といえば、法人税上の損金算入限度額(中小企業なら800万円など)の話が中心になりますが、実は消費税(VAT)の取り扱いにおいて、日本とUAEでは決定的な違いがあります。

ここを勘違いしていると、UAEで「還付されると思っていた税金が還付されない」という事態になり、キャッシュフロー計算が狂うこともあります。本記事ではこの「交際費にかかる消費税(VAT)」について、日本とUAEの決定的なルールの違いを解説します。

1. 交際費のVAT還付(仕入税額控除)の比較

両者の一番の違いは「支払った消費税が戻ってくるかどうか(仕入税額控除できるか)」です。

交際費の消費税(VAT) 扱い
日本 原則、還付OK(控除可) 事業用経費であれば、全額仕入税額控除の対象(※インボイス必須)
UAE 原則、還付NG(控除不可) Blocked Input Tax(ブロックされた仕入税額)として、控除が禁止されている

このように、日本とUAEでは真逆の対応となります。以下、それぞれを詳しく見ていきます。

2. 日本のルール:原則「全額控除」

法人税と消費税は別物

よく混同されるのが、法人税(会社の利益にかかる税金)と消費税(預かった税金から払った税金を引く計算)の違いです。

つまり日本では、取引先との会食で支払った消費税(10%)は、申告時に「預かった消費税」から差し引くことができるため、実質的な会社負担にはなりません。

インボイス制度には注意

ただし、2023年10月から開始されたインボイス制度により、適格請求書の保存が厳格化されています。相手先がインボイス発行事業者でない場合、控除ができなくなる点には留意が必要です(2026年9月までの経過措置で80%控除、2029年9月までの経過措置で50%控除)。

3. UAEのルール:原則は控除不可

UAEのVAT法では、交際費(Entertainment Expenses)にかかるVATは、原則として一切還付されません。これを「Blocked Input Tax(ブロックされた仕入税額)」と呼びます。

根拠法令:Executive Regulations Article 53

UAE連邦国税庁(FTA)のVAT施行規則第53条(UAE財務省 VAT施行規則PDF)において、以下の支出にかかるVATは控除できない(Non-recoverable)と明記されています。

  1. 従業員以外(顧客、見込み顧客、株主、オーナー、役員など)への接待
  2. 従業員への娯楽提供(慰安旅行、社員パーティーなど)
  3. 事業用車両であっても個人利用可能な場合のVAT

具体的に控除対象外となるのは以下のようなものです。

日本と同じ感覚で「仕事の経費だから払ったVAT(5%)は後で申告すれば戻ってくる」と思っていると、後で痛い目を見ます。UAEでは、交際費にかかるVATは「コスト(費用)」として会社が完全に負担しなければならないのです。

例外的に、会議中の「お茶・お菓子」はOK

FTAは例外として、「通常のビジネスミーティングの範囲内」で提供される軽微なものについてはVATの還付を認めています。

区分 対象
○ 還付OKの例 オフィスでの会議中に出すコーヒー、お茶、水、ちょっとしたお菓子など軽微な提供
× 還付NGの例 会議の後に場所を移動して行うランチやディナー、レストランでの会食

この線引きは非常に厳格です。「ランチミーティング」であっても、それがレストランで行われるしっかりとした食事であれば、それは「Entertainment(接待)」とみなされ、VAT控除は否認されるリスクが極めて高いのが実情です。

従業員への提供は限定的に控除可

従業員に対する飲食・宿泊等についても、以下のいずれかに該当すれば例外的に控除が認められます。

逆に言えば、参加費を徴収しない無料の社員忘年会や懇親会・社員旅行のVATは、福利厚生であっても原則控除不可です。

4. 出張費・宿泊費の取扱いにも注意

実務で迷うのが出張費・宿泊費の取扱いです。従業員が業務出張で使用したホテル宿泊費・食事代については、VAT還付が認められます。一方、顧客や取引先のキーパーソン(見込み顧客含む)をドバイに招いた際のホテル宿泊費・食事代はEntertainmentに該当しVAT還付不可となります。同じホテル宿泊でも、「誰のための費用か」で取扱が正反対となるため、出張本人と招待実績の記録を明確に区分して会計処理する必要があります。

5. 実務上の対応ポイント

UAEで経理処理を行う際は、接待交際費のVATを誤って「Recoverable(還付可能)」として計上しないよう、以下の対応が重要です。

VAT監査(Tax Audit)が入った際、最も指摘されやすい項目の一つがこの「交際費のVAT処理」です。なお、2026年4月施行のCabinet Decision No. 129 of 2025により、VATの延滞金・過怠金が改定されており、過去の誤処理が指摘された場合の負担はさらに増しています。

6. まとめ

日本とUAEでは、交際費に対する税務当局のスタンスが大きく異なります。

UAEでは「事業のための支出だからVATは戻ってくるはず」という日本的な感覚が通用しません。会計システムの設定段階から、接待交際費とミーティング軽飲食を明確に区別し、適切に処理する必要があります。

📋 今回のポイント

  1. 日本は交際費VAT全額控除可、UAEは原則控除不可(Blocked Input Tax) 真逆の取扱い
  2. UAEの根拠法令はExecutive Regulations Article 53 顧客・株主・役員等への接待、従業員への娯楽提供がブロック対象
  3. 会議中の軽微な茶菓は還付OK ただしレストランでの会食はNG
  4. 従業員向けでも例外控除には根拠書類が必須 労働法・契約書・社内規程の整備
  5. VAT監査で最も指摘されやすい項目 2026年4月の罰則改定で負担増

UAE独自のVATルールや、日本との税制の違いを踏まえた会計処理のアドバイスについては、当会計事務所までお気軽にお問い合わせください。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

コメントをどうぞ!

メールアドレスが公開されることはありません。

three × one =

POEM(実効的管理場所)とは?ドバイ法人が日本で課税されるリスクと判定基準を実務解説 ドバイ子会社への貸付けと日本親会社の消費税|輸出免税・課税売上割合・移転価格の仕組みと実務上の注意点

お気軽にお問い合わせください