ドバイ法人においてキャピタルゲインに課税はあるのか

投稿:2026年1月26日更新:2026年1月26日ブログ

中東拠点としてドバイ法人を設立し、株式や不動産の売却益を狙うケースが増えています。

「ドバイはキャピタルゲイン税がゼロだから、法人名義で売却しても非課税だよね?」

このようなご相談を受けることが非常に多くなっています。

結論からお伝えすると、現在のUAE法人税法の下では、ドバイには日本のような独立したキャピタルゲイン税という税目はありませんが、法人が計上する売却益は原則として法人税の課税所得に含まれます

一方で、一定の条件を満たす株式の売却益については参加持分免税により実質的に非課税とできる余地があります。それに対して、個人が自分名義で保有する株式や不動産を売却した場合は、通常UAE側でのキャピタルゲイン課税はありません。

以下では、ドバイ法人に焦点を当てて、キャピタルゲインの課税関係と実務上の注意点を整理していきます。

1 ドバイにキャピタルゲイン税という独立税目はあるのか

まず前提として押さえるべき点は、UAEには「キャピタルゲイン税」という名称の独立した税目は存在しないということです。

2023年6月以降、UAEでは連邦レベルの法人税制度が導入されましたが、この法人税法は「あらゆる事業所得」を一括して課税所得とみなし、その中に資産売却益も含める形を採用しています。

したがって、

は、税務上まったく異なる扱いになります。

この構造を簡単に整理すると、次のようになります。

保有者区分 UAE側でのキャピタルゲインの原則的な扱い 具体例
個人 原則として課税なし。
法人税も個人所得税も非課税
個人名義で保有した不動産や上場株式の売却
UAE居住法人 売却益は事業所得として法人税の課税対象 ただし免税規定あり ドバイ法人名義で保有する不動産や子会社株式の譲渡
UAE非居住法人 UAEに恒久的施設やUAE不動産がある場合に限定して課税される 外国法人がUAEに支店や不動産を保有した場合の売却

ドバイ法人にとって重要なのは「キャピタルゲインは別枠課税ではなく、法人税の一部として取り込まれる」という点です。

2 UAE法人税法におけるキャピタルゲインの位置付け

法人税の基本枠組み

現在のUAE法人税の大枠は次のようになっています。

区分 税率と概要
課税所得375,000ディルハム以下 法人税率0%
課税所得375,000ディルハム超 超過部分に9%課税
フリーゾーンの適格法人 条件を満たす「適格所得」に対して0%
それ以外は9%

UAE corporate tax guide

法人税法上、キャピタルゲインという独立の概念は置かれておらず、資産売却益は他の収益と同様に課税所得に含めるべき事業所得とされています。

損益計算のイメージは次の通りです。

なお、法人税法では未実現の評価益をどの時点で課税所得に含めるかについて、通常の会計処理を前提とする方法と、売却時まで課税を繰り延べる実現基準方式の選択肢が認められています。特に不動産や長期保有資産については、どちらを選択するかでキャッシュフローが大きく変わるため、初年度申告前に慎重な検討が必要になります。

3 個人と法人で大きく異なるキャピタルゲイン課税

個人の場合

UAEでは個人に対する所得税や個人レベルのキャピタルゲイン税は導入されておらず、個人が自分名義で保有する資産の売却益は原則として非課税です。

具体的には、次のような利益は通常UAE側の税負担は発生しません。

もっとも、不動産についてはキャピタルゲイン税こそありませんが、売買時のドバイ土地局の登録手数料や、商業用物件に対する付加価値税など、別の形でコストが生じます。

また、近年はインフルエンサーなどが「個人名義でビジネス収入を受け取れば九パーセントを回避できる」といった発信を行うことがありますが、実態として事業として行っている活動については、法人設立やライセンス取得を求められる可能性があります。形式だけ個人名義にしても、当局から事業活動と認定されれば、将来的に法人税や罰金のリスクが生じる点に注意が必要です。

UAE法人の場合の基本的な考え方

UAEの法人が計上するキャピタルゲインは、原則として法人税の課税所得に含まれます。対象となる典型例は次のようなものです。

資産の種類 売却主体がUAE法人の場合の扱い 補足
事業用設備や無形資産 売却益は課税所得に含まれ、実効九パーセント課税の対象 機械設備やソフトウェアなどの売却差益
UAE国内の不動産 売却益は法人税課税所得に含まれる 不動産関連は原則免税対象外 フリーゾーン法人が保有する国内不動産も基本的に課税
子会社株式などの事業持分 条件を満たす場合は参加持分免税により非課税も可能 持株会社やグループ再編で重要
短期売買目的の証券投資 通常の事業所得と同様に課税 免税には参加持分の条件が必要 トレーディング会社など
海外不動産や海外株式 UAE居住法人であれば原則として世界所得として課税対象 参加持分免税や外国税額控除により負担調整 持株会社やファンドで多い構造

このように、「法人名義だからキャピタルゲインもゼロ」という単純な構図ではなく、資産の種類と保有目的によって課税か免税かが分かれていく点が実務上のポイントになります。

4 参加持分免税によりキャピタルゲインを非課税にできるケース

UAE法人税法の中で、キャピタルゲインの取扱いに最も大きな影響を与えるのが参加持分免税です。

これは、UAE法人が一定の条件を満たす持分を保有している場合、その持分から生じる配当や売却益を法人税の課税所得から除外する制度です。

参加持分免税の主な要件

細かな条件は法律や大臣決定で詳細に定められていますが、実務上特に重要となるポイントは次の通りです。

これらの条件を満たす場合、

法人税の課税所得に算入しないことが認められています。

特に、グループ持株会社や投資ホールディング会社にとっては、参加持分免税を前提としたストラクチャリングが重要になります。

4の2 実務上よくあるパターン

典型的なケースとして、次のようなものが挙げられます。

一方で、少数持分の短期売買などは参加持分免税の要件を満たさないことが多く、通常の事業所得として九パーセント課税の対象になります。


5 フリーゾーン法人とキャピタルゲイン

ドバイでは、DIFCやDMCCなど各種フリーゾーンを活用して持株会社や投資ビークルを設立するケースが多く見られます。

このときに誤解が生じやすいのが、「フリーゾーンならキャピタルゲインは常にゼロ」という認識です。

5の1 適格フリーゾーン法人と適格所得

法人税法では、一定の要件を満たしたフリーゾーン法人を適格フリーゾーン法人とし、その適格所得に対して0パーセントを適用するという枠組みを採用しています。

適格所得の代表例としては、次のようなものがあります。

一方で、

適格所得から除外され、九パーセント課税の対象になります。

5の2 DIFCやADGMにおけるキャピタルゲイン

DIFCやADGMの案内資料やプロモーションでは、長年「法人税ゼロ」「キャピタルゲイン税ゼロ」といった表現が用いられてきました。

現在は連邦法人税制度との整合性を図るため、

といった形で整理が進んでおり、全てのDIFC法人やADGM法人のキャピタルゲインが無条件に非課税というわけではありません

実務としては、

などを総合的に確認しながら、九パーセント課税となる部分と〇パーセントが維持できる部分を切り分けていく必要があります


6 不動産に関するキャピタルゲインとドバイ法人

ドバイ不動産への投資は、個人のみならず法人名義でも多く行われています。

ここで特に注意すべきなのは、UAE国内不動産から生じる所得やキャピタルゲインは、フリーゾーン法人であっても原則として法人税の課税対象になるという点です。

6の1 個人と法人の対比

不動産に関するキャピタルゲインのイメージを、個人と法人で対比すると次のようになります。

所有者 UAE側のキャピタルゲイン取扱い 補足
個人 不動産売却益は原則として非課税 ただし登録手数料や商業用物件の付加価値税などは発生 ドバイにおける一般的な個人投資家
UAE法人 本土 不動産売却益は課税所得に含まれ、超過部分に九パーセント課税 不動産開発会社 賃貸法人など
フリーゾーン法人 UAE国内不動産からの所得や売却益は多くの場合適格所得から除外され九パーセント課税 フリーゾーン法人が本土の物件を保有するケース

また、構造によっては、

といった論点もあり、当局が実質を重視して課税関係を判断する可能性が指摘されています。

加えて、不動産を公正価値で継続的に評価する会計処理を採用している場合、未実現評価益を課税所得に含めるかどうかという点も、先ほどの実現基準方式の選択と密接に関係します。


7 非居住外国法人や投資ファンドから見たキャピタルゲイン

日本を含む海外からドバイ法人を利用する場合、UAE側でどこまで課税されるかも押さえておく必要があります。

法人税法上、非居住法人は次のような場合にUAE法人税の対象になると整理されています。

このうちキャピタルゲインに関係するのは、主として次の二つです。

したがって、海外ファンドや外国法人が、UAEと特段の恒久的施設を持たずに上場株式などを売買するだけであれば、UAE側でキャピタルゲイン課税の対象になるケースは限定的です。

一方で、日本人投資家がインド株式や投資信託に投資する際、UAE居住者であることを前提にインド側のキャピタルゲイン課税を軽減するストラクチャーなども紹介されており、各国との租税条約の内容によっては、キャピタルゲインの課税権が居住国側に移転するケースもあります。この場合、UAE側で個人のキャピタルゲインが非課税であることが、最終的な税負担ゼロという結果につながることになりますが、日本など他国側の出国税やCFC税制との整合性もあわせて検討する必要があります。


8 日本の税務との関係

ドバイ法人自体のキャピタルゲインは、ここまで見た通り、UAE側の法人税法とフリーゾーン規制によって課税か免税かが決まります。

しかし、日本の居住者や日本法人がドバイ法人を通じて投資を行う場合には、日本側の税制も同時に考慮しなければなりません。

特に重要になるのが、

などです。

8の1 タックスヘイブン対策税制との関係

日本のタックスヘイブン対策税制では、一定の低税率国に所在する外国関係会社の所得を、日本側の親会社や一定持分を有する株主の所得に合算する仕組みが採用されています。

UAEの法人税率九パーセントは、日本側のトリガー税率を下回ることから、持株構造や所得の内容によっては、ドバイ法人の所得が日本側で合算課税の対象となる可能性があります。

この場合、UAE側で参加持分免税によりキャピタルゲインがゼロになっていたとしても、日本側で合算課税されれば、グループ全体としては日本の税率に近い税負担が発生することになります。

8の2 出国時課税や日本側キャピタルゲイン課税

日本居住者がドバイに移住する際、一定額以上の有価証券を保有している場合には、国外転出時課税の対象となることがあります。

自社株式や上場株式などを大量に保有したまま出国すると、出国時点で未実現の含み益に対して日本側でキャピタルゲイン課税が行われる可能性があり、その後ドバイにおける売却時点ではUAE側で非課税であっても、日本側での課税が先行しているという事態が起こり得ます。

また、ドバイ法人を通じて行った投資から日本に配当を還流する場合や、将来的にドバイ法人株式を日本居住者が売却する場合の課税関係なども、日本側の法人税法や所得税法に基づき個別に検討する必要があります。


9 実務上よくある論点と注意点

最後に、ドバイ法人を利用してキャピタルゲインを得る際に、実務で特に注意すべき論点を整理します。


10 まとめ

本記事のポイントを整理すると、次の通りです。

ドバイ法人を利用したキャピタルゲインの計画は、UAE法人税、フリーゾーン規制、各国との租税条約、日本側の国際税務ルールといった複数の法令が複雑に絡み合います。

自社グループの構成や投資計画に応じて最適なスキームは大きく異なりますので、ドバイ法人のキャピタルゲインに関する税務や法務面で不安がある方は、個別の状況を伺った上で整理することをおすすめします。

当事務所では、UAE側の法人税はもちろん、日本側のタックスヘイブン対策税制や出国時課税も踏まえたうえで、ドバイ法人のキャピタルゲインに関するストラクチャーや申告実務をサポートしています。

具体的な案件やご質問がある場合は、お気軽にお問い合わせください。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(日本・UAE)。ドバイ在住。日本とドバイで会計事務所を経営しています。税務顧問や会計監査、ドバイへの移住支援を行っています。

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