ドバイ法人設立の資本金はいくら必要?フリーゾーン別最低資本金と入金義務を整理

投稿:2025年11月26日更新:2026年5月30日ブログ

ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。

ドバイで法人を設立する際、多くの日本人経営者から「資本金はいくら必要ですか?」というご質問をいただきます。日本の会社法では資本金1円から株式会社を設立できますが、UAEでは法形態や設立場所(メインランド/フリーゾーン)によって最低資本金の考え方が大きく異なります。本記事では、ドバイ法人設立に必要な資本金について、法定要件・実務運用・銀行口座開設との関係まで、国際税務の専門家の視点から整理して解説します。

1. UAE会社法における資本金の基本ルール

UAEの会社法は、Federal Decree-Law No. 32 of 2021 on Commercial Companies(2022年1月2日施行)によって規定されています。この法律では、有限責任会社(LLC)について資本金の最低額を法律で一律に定めていません。条文上は「会社の目的を達成するために十分な額」とされ、具体的な金額はUAE経済省および各首長国の経済開発局(DED)または各フリーゾーン当局のガイドラインに委ねられています。

日本との大きな違い

日本の会社法では資本金1円から株式会社設立が可能ですが、UAEでは実務上、形式的な最低資本金が存在し、加えて事業内容に応じた「適切性」が当局の審査対象になります。形式的に低額の資本金で設立しても、ライセンス取得や銀行口座開設の段階で実態が問われる点に注意が必要です。

資本金の通貨単位

UAE法人の資本金はAED(UAEディルハム)建てで設定するのが原則です。2026年5月時点の為替レートはおおむねAED 1≒43円で、AED 10,000は約43万円、AED 50,000は約215万円に相当します。

2. メインランド法人(DED登録)の資本金

ドバイのメインランド法人(オンショア法人)は、Dubai Department of Economy and Tourism(旧DED)に登録する形態で、UAE全土での事業活動が可能です。

LLCの実務的な資本金水準

メインランドLLCについては、法律上の最低額は明示されていませんが、実務ではAED 300,000(約1,290万円)が伝統的な目安とされてきました。ただし2021年の会社法改正以降、当局はより柔軟な運用を採用しており、業種によってはAED 50,000〜100,000程度での設立も認められています。

業種別の資本金要件

特定の業種(建設業、コンサルティング、貿易業など)では業種別の最低資本金が定められている場合があります。また、外国人100%出資が認められた現在も、業種によっては地元エージェント(Local Service Agent)の任命が必要です。

3. フリーゾーン法人の最低資本金

ドバイには30以上のフリーゾーンがあり、それぞれが独自の最低資本金規定を設けています。主要フリーゾーンの代表的な水準は以下のとおりです。

フリーゾーン 最低資本金(目安) 払込義務
IFZA(Dubai) AED 50,000(約215万円) 形式上の登録のみ
DMCC AED 50,000(約215万円) 1株あたりAED 1,000以上
DIFC 業種により異なる(金融業はUSD建て) 事業計画に応じて要請
JAFZA AED 1,000,000(FZ-LLCの場合) 払込証明書が必要
DAFZA AED 1,000(FZCOの場合)〜 形式上の登録のみ
SAIF Zone AED 150,000 形式上の登録のみ

関連記事:フリーゾーンごとの特徴や選び方の詳細は、2026年最新版 ドバイのおすすめフリーゾーン10選をご覧ください。

「払込義務なし」の実態

多くのフリーゾーンでは登録時の資本金払込証明を求めません。これは「Authorised Capital(授権資本)」として登録するだけで足りるという運用です。ただし、これは実際に出資をしなくてよいという意味ではありません。MOA(基本定款)に記載された資本金は法的にコミットメントとして残り、後述する銀行口座開設や法人税申告の場面で実態が問われます。

4. 資本金の払込と銀行口座開設の関係

UAE法人設立後、現地銀行で法人口座を開設する際には、資本金の実体が重要な審査ポイントになります。UAE中央銀行はAML(マネーロンダリング対策)規制を強化しており、各銀行はKYC(顧客確認)プロセスで資本金の出所と実態を厳しくチェックします。

銀行が確認する典型的なポイント

UAEはFATF(金融活動作業部会)のグレーリストから2024年2月に除外されましたが、銀行のコンプライアンス姿勢は引き続き厳格です。形式上はAED 50,000で設立できても、銀行口座開設時には事業規模に見合った実態のある資本金が事実上要求されます。

関連記事:UAEの銀行口座開設実務の詳細は、ドバイ法人の銀行口座開設ガイドをご覧ください。

5. MOA(基本定款)への資本金記載の実務

UAE法人のMOA(Memorandum of Association)には、以下の事項を記載する必要があります。

MOA記載必須事項

資本金変更の手続き

設立後に資本金を増減する場合は、MOAの修正と当局への届出が必要です。手続きには公証費用やライセンス更新費用が発生するため、設立時点で将来の事業規模を見据えた資本金設定が重要です。

6. 法人税・Small Business Reliefと資本金の関係

2023年6月から導入されたUAE法人税(標準税率9%)において、資本金そのものは課税ベースに直接影響しませんが、関連する論点がいくつかあります。

Small Business Reliefの適用

Ministerial Decision No. 73 of 2023により、年間収益AED 300万以下(約1,290万円以下)の法人は、2024年12月31日までに終了する課税期間についてSmall Business Reliefを選択できます。この特例は資本金額ではなく収益額で判定される点に注意が必要です。

過少資本税制と移転価格

UAE法人税には日本のような明文の過少資本税制(Thin Capitalisation Rule)はありませんが、関連者間借入についてはFTA(連邦税務庁)のArm’s Length原則が適用されます。過度に資本金を低く抑えて借入で資金調達すると、支払利息の損金算入に制限がかかる可能性があります。

7. 日本の親会社・個人株主から見たCFC税制リスク

日本の親会社や個人が10%以上を出資するUAE法人は、日本の国税庁タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)の対象となる可能性があります。

トリガー税率の判定

UAE法人税の標準税率は9%で、20%未満であるため日本のCFC税制のトリガー税率(20%)を下回ります。したがってペーパーカンパニー基準・実体基準・管理支配基準・所在地国基準・非関連者基準のすべてを満たして経済活動基準をクリアしなければ、所得が日本側で合算課税される可能性があります。

資本金水準とCFC判定への影響

資本金が著しく低く実体を欠くと判断されると、ペーパーカンパニー認定のリスクが高まります。日本の親会社・個人株主がUAE法人を保有する場合は、実体ある事業活動と適切な資本金水準の両立が極めて重要です。

8. 実務上の資本金設定の考え方

形式的な最低額だけで判断せず、以下の観点を総合的に検討して資本金を設定することをお勧めします。

資本金設定のチェックポイント

関連記事:UAE法人税登録の期限と罰金については、UAE法人税登録の罰金10,000AEDと7か月ルールもあわせてご確認ください。

9. まとめ

📋 ドバイ法人設立に必要な資本金のポイント

  • UAE会社法では一律の最低資本金は規定されておらず、各当局のガイドラインで運用される
  • メインランドLLCは伝統的にAED 300,000が目安、業種により柔軟な運用も可能
  • フリーゾーンはAED 1,000〜1,000,000まで幅広く、IFZA・DMCC・DAFZAなど多くが払込証明不要
  • 「払込義務なし」でも銀行口座開設・法人税申告・CFC判定で実態が問われる
  • MOA記載額は法的コミットメントとして残るため、増資コストも考慮した設計が重要
  • 日本の親会社・個人株主はCFC税制対応の観点から実体ある資本金水準を確保すべき

ドバイ法人設立における資本金は、単なる「最低金額をクリアすればよい」という形式論ではなく、事業計画・銀行口座開設・法人税対応・日本側のCFC税制まで含めた総合的な視点で設計する必要があります。特に日本の親会社や個人株主がUAE法人を保有するケースでは、ペーパーカンパニー認定を回避するための実体構築と、適切な資本金水準の両立が成否を分けます。

当事務所では、ドバイ法人設立の初期段階から、業種・事業規模・将来計画・日本側の税務影響まで踏まえた最適な資本金設計をサポートしております。ドバイでの法人設立をご検討の際は、当事務所までお気軽にご相談ください。

 

根拠法令・参考資料

  • Federal Decree-Law No. 32 of 2021 on Commercial Companies(UAE会社法)
  • Federal Decree-Law No. 47 of 2022 on Taxation of Corporations and Businesses(UAE法人税法)
  • Ministerial Decision No. 73 of 2023(Small Business Relief)
  • 各フリーゾーン(IFZA・DMCC・DIFC・JAFZA・DAFZA・SAIF Zone)のCompany Regulations
  • UAE Central Bank AML/CFT Regulations
  • 租税特別措置法第66条の6(外国子会社合算税制)

※本記事は2026年5月時点の情報に基づいています。法令・実務運用は変更される可能性があるため、実際の手続きにあたっては最新の公式情報のご確認、または専門家へのご相談をお勧めします。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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