ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。
昨今のドバイは税制面での優遇措置や戦略的な地理的立地により、中東のビジネスハブとして多くの日本企業が進出しています。しかし、2023年6月1日以後に開始する事業年度から法人税制度が適用開始されたことで、法人税登録や法人税申告義務が厳格化されており、適切な手続きを踏まなければ罰金のリスクもあります(Federal Decree-Law No. 47 of 2022(法人税法本体)、FTA Corporate Tax公式)。
本記事では、2026年最新の情報をもとに、ドバイでの現地法人設立の流れを実務的な視点から解説いたします。
1. フリーゾーン法人とメインランド法人の選択
ドバイで法人を設立する際、まず決めなければならないのがフリーゾーン法人とメインランド法人のどちらを選ぶかという点です(UAE経済省 会社設立ガイド)。
ざっくりと判断するならば、UAE国内で店舗を持った事業を行いたい場合はメインランド法人、対日本向けやUAE国外のみでしかビジネスが発生しない場合はフリーゾーン法人という考え方になります。
フリーゾーン法人は100%外資出資が可能で、設立手続きが比較的簡素化されています。輸入関税の免除などのメリットがある一方、UAE本土での直接取引には制限があります。一方メインランド法人は、UAE全域で事業活動が可能で、政府系案件への入札参加もできます。多くの業種で外国人100%出資が可能になったため、以前ほど現地パートナーを必要としなくなりました。
| 項目 | フリーゾーン法人 | メインランド法人 |
| 外資出資比率 | 100%可能 | 100%可能(多くの業種で) |
| UAE本土での取引 | 制限あり | 制限なし |
| 法人税率 | QFZP要件充足時は適格所得0%・非適格所得9%/非QFZP時は通常9% | 課税所得AED 375,000以下の部分は0%、超過部分は9% |
| 設立手続き | 比較的簡素 | やや複雑 |
| オフィス要件 | フレキシデスク可 | 物理オフィス必須 |
| 初期費用の目安 | 150万円〜250万円 | 200万円〜220万円 |
📖 関連記事:自社に適したフリーゾーンの比較検討はドバイフリーゾーン10選2026最新版をご確認ください。
税務面では、フリーゾーン法人であってもQFZP(Qualifying Free Zone Person)の5要件(適格活動・実質的活動・適格所得・移転価格適合・財務諸表監査等)を満たさない限り、法人税9%が適用されるケースが多く、日本人が運営する事業では免税条件を満たすことが困難な場合もあります(Cabinet Decision No. 100 of 2023(QFZP Qualifying Income))。
なお、課税所得AED 375,000以下の部分が0%となるSmall Business Reliefおよび段階課税は、フリーゾーン法人(QFZP非該当)・メインランド法人の双方に適用される点に注意が必要です。
📖 関連記事:QFZP(適格フリーゾーン法人)の5要件と適格所得の詳細はQFZP(Qualifying Free Zone Person)基礎をご確認ください。
2. 法人設立の具体的な流れ
ドバイでの法人設立は、以下のステップで進めていきます。
2-1. ステップ1:事業形態と所在地の選択
フリーゾーンかメインランドか、そしてフリーゾーンの場合はどのフリーゾーンにするかを決定します。DMCC、DIFC、ジュベル・アリ(JAFZA)、RAKEZなど、フリーゾーンによって設立費用や維持費用が大きく異なります(DMCC ビジネスセットアップ、DIFC 会社設立ガイド、メインランドの場合はDubai Department of Economy and Tourism)。
2-2. ステップ2:会社名の登録
宗教的・政治的に問題のない名称であることを確認し、メインランド法人の場合はDED(Dubai Department of Economy and Tourism)、フリーゾーン法人の場合は各フリーゾーン当局に申請します。この手続きには通常3〜5営業日かかります。
2-3. ステップ3:初期承認(Initial Approval)の取得
事業計画書、パスポートコピー、株主や役員の情報などを提出し、当局からの承認を得ます。この段階では事業活動はまだ開始できませんが、次のステップに進むための重要な手続きです。
2-4. ステップ4:定款(Memorandum of Association)の作成と公証
定款には会社の目的、資本構成、株主の責任などが明記されます。メインランド法人の定款はDED提出用にアラビア語版が必要であり、実務上は英語・アラビア語のバイリンガル版で作成するのが一般的です。フリーゾーン法人については当局により異なり、英語のみで受理されるケースもあります。公証手続きには公証人の前で全株主が署名する必要があり、公証費用は1,500〜5,000AED程度かかります。
2-5. ステップ5:オフィススペースの確保
メインランド法人の場合は物理的なオフィスが必要ですが、フリーゾーン法人の場合はフレキシデスクやバーチャルオフィスでも可能な場合があります。オフィス賃貸契約書(Ejari証明書)は、ライセンス取得に必要な書類となります。
2-6. ステップ6:トレードライセンスの取得
必要書類を揃えて当局に提出し、審査を経て貿易ライセンスが発行されます。ライセンスの種類には商業ライセンス、工業ライセンス、専門職ライセンスなどがあり、事業内容に応じて選択します。
3. 必要書類と準備事項
3-1. 基本的な必要書類
- 全株主と役員のパスポートコピー
- 事業計画書
- 承認された会社名
- 定款(Memorandum of Association)
- オフィス賃貸契約書(Ejari証明書)
- 株主および役員の住所証明
- 銀行リファレンスレター
3-2. アポスティーユ認証の取扱い(2025年以降)
UAEは2025年にハーグ条約(外国公文書の認証を不要とする条約)に加盟したことにより、日本から書類を持ち込む際の認証手続きが従来の領事認証からアポスティーユ認証へ移行しました。日本の外務省でアポスティーユ証明書を取得することで、UAE側での個別認証が不要となるケースが増えています。ただし、書類の種類や提出先当局によって運用に差があるため、事前に提出先当局に確認することを推奨します。この手続きには2〜3週間程度かかることが多いため、余裕を持って準備することが重要です。
3-3. 最低資本金の取扱い
法人設立時には資本金の設定も必要です。DMCC等の主要フリーゾーンでは、業種・ライセンス種類により最低資本金が設定される場合があり、過去に運用されていた「1株主あたり10,000AED・会社全体50,000AED」「貿易ライセンスは100万AED」といった一律規定は現在では緩和・撤廃されているケースもあります。実務上は当局に都度確認のうえ、自社のライセンス種類に応じた最低資本金を設定する運用が必要となります。
4. 設立後の重要な手続き
法人設立後にも重要な手続きが待っています。
4-1. 法人税登録
2023年6月以後に開始する事業年度から施行された法人税法により、全ての法人はFTAが公表するスケジュールに従って法人税登録を行う必要があります。2024年3月1日以後に新規設立される法人については、原則として設立日(incorporation date)から3か月以内に法人税登録が必要です(FTA Decision No. 3 of 2024(法人税登録期限))。
登録を怠った場合、AED 10,000(約38万円)の罰金が課されます。法人税登録はFTAのEmaraTaxポータルを通じてオンラインで行います(FTA EmaraTaxポータル)。
📖 関連記事:法人税登録の期限ルール(既存法人のスケジュール)と罰金回避の実務はUAE法人税登録の罰金10,000AED・7か月ルールをご確認ください。
4-2. 銀行口座の開設
銀行口座開設には以下の書類が必要です。
- トレードライセンス
- 設立証明書
- 定款(Memorandum of Association)
- 株主のパスポートとビザ
- エミレーツID
- 事業計画書
- オフィス住所の証明書
銀行によっては最低預金額がAED 25,000〜500,000と幅があるため、事前に確認することが重要です。近年はUAE銀行のコンプライアンス(AML/KYC)審査が厳格化しており、書類不備による口座開設の遅延・拒否事例が増加しているため、事業実態を明確に示す資料準備が鍵となります。
📖 関連記事:ドバイでの銀行口座開設の流れとよくある拒否事例はドバイ銀行口座開設の実務をご確認ください。
4-3. レジデンスビザとエミレーツIDの取得
会社設立後、入国許可証を申請し、UAEに入国後に健康診断を受け、バイオメトリクス(指紋・顔認証)登録を行います。エミレーツIDの発行には入国後から通常7〜10営業日かかります(UAE ICP公式)。
| 手続き | 必要期間 | 主な要件 |
| 法人税登録 | 設立日から3か月以内(新規法人) | EmaraTaxポータルでオンライン登録 |
| 銀行口座開設 | 1〜2週間 | トレードライセンス、定款、エミレーツID等 |
| レジデンスビザ申請 | 2〜3週間 | 入国許可証、健康診断、バイオメトリクス登録 |
| エミレーツID発行 | 7〜10営業日 | バイオメトリクス登録完了後 |
5. 費用と期間の目安
ドバイでの法人設立には一定の費用と時間がかかります。法人形態、ビザの種類及びビザ数によって大きく異なりますが、1ビザを発行する場合の費用感は以下の通りです。
5-1. フリーゾーン法人の費用
| 費用項目 | 金額の目安 |
| 初期設立費用 | 150万円〜200万円 |
| 年間維持費用 | 60万円〜120万円 |
| ビザ申請料(1人あたり) | AED 3,000〜8,000 |
| エミレーツID発行費用 | 別途必要 |
| 健康診断費用 | 別途必要 |
5-2. メインランド法人の費用
| 費用項目 | 金額の目安 |
| 初期設立費用 | 180万円〜220万円 |
| オフィス賃料(年間) | AED 5,000〜 |
| 政府登録費用(申請料) | AED 1,035 |
| 政府登録費用(登録料) | AED 9,020 |
| 定款作成費用 | AED 2,020 |
5-3. 設立期間の目安
- 日本側でのアポスティーユ取得:約2〜3週間(配偶者ビザを取る、子会社として設立する場合)
- ドバイでの法人登記・ビザ手続き:約1か月
- ドバイでの手続(エミレーツIDや銀行解説):約10日〜2週間
- 全体として2〜3か月程度を見込んでおくと良いでしょう
6. まとめ
ドバイでの現地法人設立は、フリーゾーンかメインランドかの選択から始まり、会社名登録、初期承認、定款作成、オフィス確保、ライセンス取得という流れで進みます。設立後も法人税登録、銀行口座開設、ビザ取得など重要な手続きが続き、それぞれに期限と罰則が設定されているため、計画的な実行が欠かせません。
当事務所では、ドバイ法人設立から法人税登録、銀行口座開設サポート、ビザ取得、設立後の会計・税務申告まで一貫したワンストップサービスを提供しております。これからドバイ進出をご検討されている経営者の方は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
【根拠法令・出典】
- Federal Decree-Law No. 47 of 2022(UAE法人税法本体)
- Cabinet Decision No. 100 of 2023(QFZP Qualifying Income)
- FTA Decision No. 3 of 2024(法人税登録期限)
- UAE財務省 法人税ポータル
- UAE財務省 Corporate Tax FAQ
- FTA Corporate Tax公式
- FTA EmaraTaxポータル
- UAE経済省 会社設立ガイド
- Dubai Department of Economy and Tourism(DED)
- DMCC ビジネスセットアップ
- DIFC 会社設立ガイド
- UAE ICP(連邦市民権・身分・税関・港湾安全保障庁)
※本記事は2026年5月時点の情報に基づきます。最新の改正動向はFTA公式情報および当事務所までご確認ください。
