海外移住時の納税管理人制度とは?選任のメリットと届出のポイントを国際税務の専門家が解説

投稿:2023年2月22日更新:2026年5月29日ブログ

こんにちは、ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。

日本から海外へ移住される方からよく頂くご質問の一つに「納税管理人は本当に必要ですか?」「誰に頼めばよいですか?」というものがあります。納税管理人制度は、海外移住後の日本側の税務手続きを円滑に進めるための重要な仕組みであり、特に国外転出時課税(いわゆる出国税)の対象となる方にとっては、納税猶予を受けるための必須要件にもなります。

本記事では、納税管理人制度の概要、届出のメリット、そして国際税務に強い専門家に依頼する利点について、最新の制度を踏まえて解説いたします。

1. 納税管理人制度とは何か

1-1. 制度の概要

納税管理人制度とは、日本国内に住所および居所を有しない個人または日本国内に本店等を有しない法人(以下「非居住者等」)が、日本の税務に関する手続きを行う必要がある場合に、その手続きを代理で行う個人または法人を選任する制度です(国税通則法第117条)。

具体的には、納税者が確定申告書の提出、税金の納付、税務署からの問い合わせへの対応などを納税管理人に委任することができます。届出書の正式名称は「所得税・消費税の納税管理人の届出書」であり、納税地を所轄する税務署長に提出します。

1-2. 海外移住時に納税管理人を誰に選任すべきか

納税管理人は「納税管理人の届出書」を提出することで基本的に誰でもなることが出来るため、ご親族や税理士に任せるケースが一般的です。個人だけでなく法人も受任することができます。

ただし、納税者の代わりに税務手続きを代行できてしまうという性質上、信頼関係を築ける人物であることが重要です。さらに、税務署から問い合わせがあった場合に適切な回答をするためにも、一定の税務知識を有する人物であるほうが望ましいでしょう。

2. 海外移住の際に納税管理人の届出は必ず必要か

必ずしも納税管理人の届出が義務付けられているわけではありませんが、以下のような理由からメリットが大きいため、届出をしておくことを強くお勧めします。

2-1. 海外に長期滞在中も日本国内の税務手続きが発生し得る

海外滞在中であっても、日本国内で発生した所得(不動産所得、事業所得など)がある場合や、不動産を売却した場合、相続や贈与等が発生した場合などは、日本側で納税義務が生じます。

こうしたケースで納税のためだけに帰国するのは煩雑であり、コストもかかります。納税管理人を選任しておけば、委任により国内で手続きを完結させることができます。

2-2. 一定金額以上の有価証券等を保有している場合(国外転出時課税)

出国時点で有価証券・匿名組合契約の出資の持分・未決済デリバティブ取引等の合計が1億円以上であり、かつ出国前10年以内に国内に5年超住所等を有していた居住者に該当する場合、出国時点でこれらを譲渡したものとみなして、含み益に対して所得税が課されます。これが「国外転出時課税(出国税)」です(国税庁「国外転出時課税制度」)。

原則として出国日までに申告・納税を完了させる必要がありますが、出国前に納税管理人の届出を提出していれば、申告・納期限が翌年3月15日まで繰り下げられます。

さらに、申告期限までに担保提供および納税猶予の申請を行えば、最長5年(延長申請により最長10年)まで納税が猶予され、その間に対象資産を譲渡しなければ実際の課税は発生しません(国税庁タックスアンサー No.1478(国外転出時課税の納税猶予))。

2-3. 出国前に事業所得等の所得が発生している場合

年の中途で出国する場合、原則として出国日までに、その年の1月1日から出国日までの所得について申告・納税を完了させる「出国時申告」が必要となります。これは、出国後は納税者との連絡が取りづらくなるため、出国までに手続きを終わらせておく必要があるという趣旨です(国税庁タックスアンサー No.1923(出国する場合の確定申告))。

しかし、出国前に納税管理人の届出を提出していれば、この出国時申告は不要となり、通常の居住者と同様に翌年3月15日を申告・納期限として確定申告を行うことができます。

3. 国際税務に強い税理士に納税管理人を任せるメリット

3-1. 税務署からの難しい問い合わせにも対応できる

海外移住後に税務署から問い合わせがあった場合、日本の国内税法だけでなく、移住先国の税法、さらに日本と移住先国との租税条約も加味した上で適切な回答を行う必要があります。

通常、日本の税理士は英語が苦手であったり、日本の税務には詳しいものの海外税法に精通しているケースは多くありません。こうした取り扱いに慣れている国際税務の専門家に任せるほうが安心です。

3-2. 公認会計士・税理士が納税管理人であることによる税務署の心証向上

先述の通り、納税管理人は原則として誰でも就任できますが、公認会計士や税理士が納税管理人として受任していることで、税務署側にも安心感を与えることができ、問い合わせや調査対応もスムーズに進む傾向があります。

3-3. 非居住者の日本での確定申告にも対応可能

海外移住し非居住者となった後でも、日本国内に源泉のある所得(国内不動産の賃貸収入、国内法人からの役員報酬、日本株式の譲渡所得など)がある場合は、確定申告が必要となるケースがあります(国税庁タックスアンサー No.2884(非居住者・外国法人の課税))。

その際、海外関係の取引や租税条約の適用が絡む案件については、確定申告を受任しない税理士も少なくありません。国際税務に強い専門家であれば、こうしたケースでも安心してお任せいただけます。

4. 国際税務に強い専門家に納税管理人を依頼したい場合

当事務所では、ドバイ・UAEを中心に海外移住される日本人の方々に対し、納税管理人サービスを提供しております。料金体系および対応範囲については、当事務所のウェブサイトに掲載しております。

ご依頼を検討されている方は、お問い合わせフォームより「納税管理人サービス希望」とご連絡いただけましたら、追ってご案内させていただきます。

5. まとめ

📋 今回のポイント

  • 納税管理人制度は、非居住者等が日本の税務手続きを代理人に委任するための制度(国税通則法第117条)
  • 海外移住時の届出は義務ではないが、国外転出時課税の納税猶予や出国時申告の回避のため、提出を強く推奨
  • 有価証券等1億円以上を保有する居住者は、納税管理人の届出+担保提供+猶予申請で最長5年(延長10年)の納税猶予が可能
  • 出国前に納税管理人の届出を提出すれば、出国時申告は不要となり、翌年3月15日が申告・納期限となる
  • 非居住者の日本での確定申告や租税条約適用が絡む案件は、国際税務に強い専門家への依頼が安心

納税管理人制度は、海外移住という人生の大きな節目において、日本側の税務リスクを最小化するための極めて重要な仕組みです。特に国外転出時課税の対象となる方や、日本国内に資産・所得源を残したまま海外へ移住される方にとっては、適切な納税管理人の選任が、その後の税務トラブル回避に直結します。

当事務所では、ドバイ・UAEに拠点を置く日本人公認会計士として、日本側の納税管理人業務と移住先国(UAE等)の税務アドバイスをワンストップでご提供しております。海外移住に伴う納税管理人の選任や国外転出時課税への対応にお悩みの方は、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。

【根拠法令・出典】

※本記事は2026年5月時点の情報に基づきます。最新の改正動向は国税庁公式情報および当事務所までご確認ください。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(日本・UAE)。ドバイ在住。日本とドバイで会計事務所を経営しています。税務顧問や会計監査、ドバイへの移住支援を行っています。

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