【令和8年度改正】外国子会社合算制度(CFC税制)の見直しとドバイ法人への影響を解説

投稿:2026年6月1日更新:2026年6月1日ブログ

⚠️ 本記事の要点

  • 令和8年4月1日以後開始事業年度から、CFC税制の見直しが適用
  • ペーパーカンパニー特例の資産割合要件で、総資産0の場合は判定不要に
  • 累進税率特例の適用範囲が縮減(特殊な累進制度は最高税率使用不可)
  • 解散した部分対象外国関係会社等に係る新清算特例が創設
  • UAE法人は租税負担割合9%(QFZPは0%)で20%未満に該当する点は変わらず
  • ドバイ移住オーナーは経済活動基準4要件の充足が合算回避の鍵

ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。

2026年5月27日、国税庁が「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」を公表しました。「6 その他主な改正項目」の中で、外国子会社合算制度(タックスヘイブン対策税制、以下「CFC税制」)の見直しが明記されています。本記事では、改正のポイントとUAE法人の合算判定、合算回避のための実体構築を解説します。

1. 国税庁公表の改正概要

2026年5月27日、国税庁が「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」(全25ページ)を公表しました。資料の構成は1から6までの章立てで、本改正の目玉となる外国子会社合算制度の見直しは「6 その他主な改正項目」の(3)に位置づけられています。タイトルには「制度全体像における見直しの位置づけ」と付記されており、CFC税制の骨格自体は維持しつつ、運用面・特例規定を精緻化する内容です。

適用時期は外国関係会社の令和8年4月1日以後に開始する事業年度に係る課税対象金額等(改正法附則63①④)。3月決算の内国法人がドバイのUAE法人(12月決算)を保有しているケースでは、UAE法人の2027年12月期から実質的に適用が始まります。財務省が公表する令和8年度税制改正の大綱と併せて参照すると、改正の方向性が立体的に把握できます。

2. そもそもCFC税制の全体像とは

CFC税制は、軽課税国の外国子会社に所得を留保することで日本の課税を不当に回避する行為を防止するための制度です。居住者または内国法人等が合計で50%超を直接及び間接に保有または実質的に支配する外国関係会社が対象となり、UAE法人もこの保有要件を満たせばCFC税制の射程に入ります。国税庁が公表する外国子会社合算税制の解説ページに制度全体の概要図が掲載されており、初学者の方はまずこちらで全体像を掴むのが効率的です。

合算課税の構造は3層に分かれます。1つ目が「特定外国関係会社」で、ペーパーカンパニー、事実上のキャッシュボックス、ブラックリスト国所在のものが該当し、租税負担割合が27%未満で会社単位の合算が発動します。2つ目が「対象外国関係会社」で、経済活動基準4要件のいずれかを満たさない場合に該当し、租税負担割合20%未満で会社単位合算となります。3つ目が「部分対象外国関係会社」で、経済活動基準を全て満たしていても、租税負担割合が20%未満であれば受動的所得(配当、利子、ロイヤリティ等)が部分合算の対象となります。

UAEの法人税率はUAE Federal Tax AuthorityのCorporate Taxページに明記のとおり標準9%、フリーゾーンのQFZP(Qualifying Free Zone Person)は0%です。いずれも租税負担割合20%を確実に下回るため、UAE法人を保有する日本居住オーナーにとってCFC税制は「他人事」ではなく、毎期検討が必要な実務論点となります。

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CFC税制の3層構造と租税負担割合の計算方法、経済活動基準4要件の実務対応の全体像はドバイ法人にかかるタックスヘイブン対策税制(CFC税制)の完全解説をあわせてご参照ください。

3. 経済活動基準4要件 UAE法人の実体構築チェックリスト

会社単位合算を回避する最重要要件が、経済活動基準4要件です。すべての要件を充足してはじめて「対象外国関係会社」から外れ、部分合算課税のみの検討に進めます。要件は以下のとおりです。

基準 内容 UAE法人の実務
A 事業基準 主たる事業が株式保有・無形資産提供・船舶航空機リース等でないこと 単純な持株会社は不可。実業(コンサル・貿易・サービス)を主たる事業に
B 実体基準 本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること UAEに実オフィス(IFZA・DAFZA等フリーゾーンのEjari付き)を構える
C 管理支配基準 本店所在地国で事業の管理、支配、運営を自ら行っていること UAEで取締役会を開催、議事録を残し、意思決定の場所をUAEに固定
D 所在地国基準/非関連者基準 主として本店所在地国で事業を行うこと(卸売業など8業種は非関連者基準) UAE国内またはUAE発着の事業を主軸に。卸売の場合は関連者外取引が50%超

ドバイ移住オーナーが特に注意すべきはC管理支配基準です。日本にいる時間が長く、UAE法人の取締役会や重要意思決定を日本で行っていると、書面上UAEに所在地があっても基準充足が否認されるリスクがあります。移住直後の方ほどこの基準が脆弱な傾向にあります。

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管理支配基準が脅かされる具体ケース(役員のUAE不在・在UAE日数不足等)と判定への影響は外国子会社合算税制の管理支配基準を満たさなくなる?ドバイに居住する役員が不在となった場合の判定を必ずあわせてご確認ください。

4. 今回の改正点① ペーパーカンパニー特例の資産割合要件見直し

ペーパーカンパニー特例は、特定外国関係会社のうち「ペーパーカンパニー」と認定されるかどうかの判定基準です。実体基準・管理支配基準・外国子会社株式保有割合要件・不動産保有要件・資産割合要件・統括会社要件などの複数の要件で構成されており、いずれも満たさない場合にペーパーカンパニー認定を回避できる仕組みです。

今回の改正で、資産割合要件について「外国関係会社の事業年度終了の時の総資産の額が0の場合には、その判定が不要」とされました(措令39の14の3⑥⑧⑨一から三)。総資産0という極めて限定的な状況に対する整理ですが、休眠会社や清算過程の会社では総資産が0となるケースがあり、こうしたケースで形式的に判定不能となっていた問題を解消する改正です。詳細は国税庁公表PDF全文の該当箇所をご参照ください。

5. 今回の改正点② 累進税率特例の見直しで租税負担割合計算がより厳格に

租税負担割合の計算は、外国関係会社の所在地国法令上の税率を基準に算定します。所在地国が累進課税制度を採用している場合、最も高い税率を用いて租税負担割合を計算する特例が認められていました。

今回の改正で「通常では適用されることが見込まれないような高額な所得の額の区分に最高税率が設定されているなどの特殊な累進課税制度については、累進税率のうち最も高い税率を用いて租税負担割合を計算することができる特例を適用することができない」と整理されました(措令39の17の2②四)。要は、形だけ高い最高税率を設けて実態は低税率というスキームを封じる改正です。

UAEは法人税が一律9%(QFZPは0%)であり、累進課税ではないため、この改正がUAE法人の租税負担割合計算に直接影響する場面は限定的です。ただし、ドバイ移住オーナーが第三国(東南アジア・中東他国)に追加で子会社を保有する場合、その国の税制次第ではこの特例が使えなくなり、租税負担割合が悪化することがあります。

6. 今回の改正点③ 解散した部分対象外国関係会社等に係る特例の創設

UAE法人の整理・清算を検討するドバイ移住オーナーにとって最も実務的な改正がこの3つ目です。これまでは清算特例(旧清算特例)があるのみでしたが、令和8年度改正で「新清算特例」に改組され、3つの新たなルールが整備されました。

1つ目は、ステータス判定の特例(措法66の6⑤⑥⑬、66の9の2⑤⑥⑬)。一定の部分対象外国関係会社等が解散した場合でも、解散後の一定期間は引き続き部分対象外国関係会社等に該当するものとみなすことで、解散プロセス中の取扱いを安定させます。2つ目が異常所得の計算方法の見直し(措令39の17の3㉘㉙)で、解散後の一定期間は解散前の純資産等の額を用いて異常所得を計算します。3つ目が外国金融子会社等に係る異常資本に係る所得の課税見直し(措令39の17の4③)で、解散後の一定期間は異常資本に係る所得はないものとされました。

ドバイのフリーゾーン法人を畳んで日本に戻る、あるいは別ストラクチャーに切り替える際の合算課税リスクが明確化された改正で、出口戦略を組む上で押さえておくべきポイントです。改正速報の解説はTKCエクスプレスの令和8年度改正解説にも整理されています。

7. ドバイ移住オーナーが今やるべきこと

令和8年度改正後も、UAE法人を保有する日本居住オーナーにとってCFC税制の構造そのものは変わりません。重要なのは以下の3点です。

第1に、経済活動基準4要件の充足エビデンスを毎期残すこと。事務所のEjari(賃貸登録)、Emirates ID付き従業員の雇用契約、UAE所在地での取締役会議事録、意思決定の場所が分かるカレンダー記録など、税務調査で問われた際に書面で示せる体制が必要です。

第2に、租税負担割合の試算と部分合算課税の影響額把握。UAE法人がQFZP(0%)で運営できているか、それともStandard(9%)か、いずれにせよ20%未満なので受動的所得(配当・利子・ロイヤリティ・キャピタルゲイン)の部分合算は検討対象です。

第3に、ご自身の居住者ステータスの確認。CFC税制は「居住者または内国法人等」が50%超を保有する場合に適用されます。ドバイ移住で非居住者化が完了していれば、日本側CFC合算の対象から外れる余地が生まれますが、日本に居所を残している、家族を日本に残している、生活の本拠地が判然としない場合は居住者と認定され合算課税の対象になり得ます。出国税(国外転出時課税)の実行と居住者ステータスの整理は、CFC合算と密接にリンクします。

8. よくあるミス

第1のミスは、UAEフリーゾーン法人を「持株会社」として設立してしまうこと。事業基準で否認され、租税負担割合20%未満の対象外国関係会社として会社単位合算が発動します。

第2のミスは、取締役会をオンラインで日本から開催してUAEで議事録だけ作ること。管理支配基準の否認リスクが高く、税務調査ではメールタイムスタンプ・Zoom記録から所在地が逆算されます。

第3のミスは、UAE法人を清算する際に解散特例の適用要件を確認せず、解散後の所得計算で課税漏れが発生するパターン。新清算特例の適用範囲を事前に検討する必要があります。

まとめ

令和8年度改正は、CFC税制の骨格を維持しながらペーパーカンパニー特例・累進税率特例・解散特例という運用面の各論を整理する内容です。ドバイのUAE法人を保有する日本居住オーナー、ドバイ移住検討組、ドバイ在住で日本法人を残している方のいずれにとっても、UAE法人の租税負担割合が20%未満であるという構造そのものは変わらず、毎期の経済活動基準充足チェックと部分合算課税の試算が不可欠です。

UAE法人の保有形態、経済活動基準のエビデンス整備、租税負担割合の試算、出国税(国外転出時課税)とCFC合算の関係整理、新清算特例の適用検討など、令和8年度改正を踏まえたUAE法人運営の見直しは個別事情で論点が大きく変わります。当会計事務所までお気軽にお問い合わせください。

【根拠条文・出典】

本記事は公表情報に基づく一般的な解説であり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の適用にあたっては必ず当会計事務所までご相談ください。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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