出国した年も住民税がかかるって本当?日税連が出国年課税を提言

投稿:2026年6月28日更新:2026年6月28日ブログ

ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。

日本からドバイへ移住する際、所得税の世界ではすでに国外転出時課税、いわゆる出国税が大きな関門として立ちはだかっています。そして今、その出国税に続く動きとして、これまで出国者がほぼ負担を免れてきた住民税についても、出国年の所得に課税する方法を検討すべきだという提言が公表されました。

これは日本税理士会連合会が取りまとめた令和9年度税制改正に関する建議書に盛り込まれたもので、出国というタイミングを使った住民税の負担回避に対して、税の専門家団体が公式に課税強化を求めたという点で重い意味を持ちます。今回は、この建議書の内容を出国税の論点と重ね合わせながら、ドバイ移住を考える方が押さえておくべき住民税の戦略への影響を整理いたします。

日税連が提言した出国年の住民税課税とは

日本税理士会連合会が公表した令和9年度税制改正に関する建議書の建議35では、個人住民税について、出国年に係る所得に課税する方法を検討することが提言されています。現行の住民税は前年の所得を課税標準として当年度に課税する前年所得課税の仕組みを採っており、このため死亡や出国があった場合、国内で稼いだ最後の年の所得に対して住民税は原則として課税されません。

建議書はこの点について、出国は死亡とは違って本人の意思で何度でも賦課期日に出国した状態を作り出すことが可能であると指摘しています。そのうえで、出国する場合には出国日を賦課期日とする特例を設けるなどして、出国年の所得にも住民税を課税する方法を検討すべきだと述べています。つまり、出国のタイミングを使って住民税を免れる現在の状態を問題視し、その抜け道を塞ぐ方向での検討を促しているのです。

これはまだ提言の段階であり、ただちに法改正されるわけではありません。それでも、所得税の世界ですでに出国税が導入されているなかで、住民税についても出国年課税の議論が始まったという事実は、日本が出国者全般に対する課税網を着実に広げようとしている流れの一部として受け止めるべきです。

現行の住民税ルールと出国タイミングの戦略

建議書の問題意識を理解するには、まず現行の住民税ルールを正しく押さえる必要があります。住民税は毎年1月1日時点で日本に住所がある人に対して、前年の1月から12月までの所得をもとに課税される仕組みです。たとえば年の途中の5月に出国した場合でも、その年の1月1日時点で日本に住所があれば、前年所得に基づく住民税の納付義務が残ります。

逆に、前年の12月31日までに出国して住民票を抜いていれば、翌年の1月1日時点で日本に住所がないため、その年に納める住民税は発生しないことになります。つまり現行制度のもとでは、12月に出国するか1月に出国するかで住民税1年分の負担が大きく変わってきます。ドバイ移住の出国スケジュールを設計する際、この賦課期日を意識して年末の出国を狙うことは、合法的な負担軽減の有力な選択肢でした。

建議書が指摘しているのは、まさにこの賦課期日を利用した負担軽減の仕組みです。もし将来この特例が導入され、出国年の所得にも住民税が課されるようになれば、年末ギリギリの出国による負担軽減という選択肢が使えなくなる可能性があります。当会計事務所がドバイ移住の出国時期を設計する際には、現行ルールでの最適タイミングを押さえつつ、こうした将来の制度変更リスクも視野に入れています。

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すでにある出国税との関係

住民税の出国年課税はあくまで検討段階ですが、所得税の世界では出国税がすでに現実の制度として機能しています。国外転出時課税制度と呼ばれるもので、所得税法60条の2に定められています。一定額以上の対象資産を持つ方が日本から出国して非居住者になる際、まだ売却していない含み益に対しても譲渡があったものとみなして所得税を課す仕組みです。

対象となるのは、有価証券や投資信託、匿名組合の出資持分、未決済の信用取引やデリバティブ取引の合計額が1億円以上ある方で、出国前の10年以内に日本国内に住所などがあった期間が合計5年を超えることが要件です。税率はおよそ15.315パーセントで、対象資産の含み益に対して課税されます。預貯金や不動産、暗号資産は対象外ですが、NISA口座の資産は1億円かどうかの判定に含まれます。出国税には原則5年、延長で最大10年の納税猶予制度も用意されています。

所得税の出国税と住民税の出国年課税の議論を並べてみると、日本が出国という行為そのものに対して、所得税と住民税の両面から課税を強める方向に進みつつあることが見えてきます。ドバイ移住を検討する方は、含み益に対する出国税の試算と、住民税の賦課期日を踏まえた出国タイミングの設計を、同時に進めておくことが重要です。

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相続税の租税条約と外国税額控除の提言

同じ建議書には、ドバイ移住者の資産承継や海外事業にも関わる重要な提言が含まれています。建議39は、国際的な相続税の二重課税と租税回避を防ぐ観点から、相続税に係る租税条約の締結を進めるべきだと述べています。平成29年度税制改正で相続税と贈与税の納税義務の範囲が見直され、国内に住所を有していない期間の基準が5年以内から10年以内に延長されたことで、国外財産を含めた課税範囲が広がりました。一方で、相続税の二重課税を回避する租税条約は現在のところ米国とのあいだにしか存在しません。

ドバイに移住しても、出国から一定期間は日本の相続税や贈与税の対象になり得ます。日本とUAEのあいだには所得税に関する租税条約はあるものの、相続税については条約がないため、万一の際に日本とUAEの双方で相続税が問題となるリスクが残ります。また建議40では、外国税額控除の控除限度超過額や控除余裕額の繰越期間について、米国が10年であるのに対し日本は3年と短いため延長すべきだと提言しています。これはドバイで法人を運営し海外で課税を受ける方の二重課税排除に直結する論点です。

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よくある間違い

出国の住民税をめぐって繰り返し見受けられる誤解を整理します。第一に、住民票を抜けば住民税はかからないという思い込みです。住民税は1月1日時点の住所で判定されるため、年明けに出国してしまうと前年所得に基づく住民税の納付義務が丸ごと残ります。前年所得課税の仕組みを理解しないまま出国時期を決めると、想定外の負担に直面します。

第二に、出国してしまえば日本の課税はもう関係ないという誤解です。住民税の納付が残っている場合は納税管理人を選定して納付を続ける必要がありますし、出国税や一定期間の相続税など、出国後も日本の課税が及ぶ場面は数多く残ります。第三に、建議書の提言を制度として確定したものと誤解することです。出国年の住民税課税はあくまで検討の提言であり、現時点では年末出国による負担軽減は依然として有効な選択肢です。ただし将来の制度変更リスクを織り込んだ設計が望ましいことは言うまでもありません。

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まとめ

📋 今回のポイント

  • 日税連の令和9年度建議書が、出国年の所得に住民税を課税する方法の検討を提言した
  • 現行の住民税は1月1日基準のため、年末に出国すれば翌年の住民税が発生しない仕組みがある
  • 建議書はこの賦課期日を使った負担回避を問題視し、出国日を賦課期日とする特例の検討を促した
  • 所得税ではすでに出国税があり、住民税の出国年課税は出国課税網のさらなる拡大を意味する
  • 相続税の租税条約は米国のみで、日本とUAE間は未締結のため資産承継の二重課税リスクが残る

当会計事務所では、ドバイ移住と法人設立を専門とする日本の公認会計士として、住民税の賦課期日を踏まえた出国タイミングの設計から、出国税の試算、UAEでの税務居住者証明書の取得、相続税の二重課税リスクの検討まで、移住の前後を通じて一貫してサポートしております。

出国の判断を始める前の早い段階でご相談いただくことで、選択できる打ち手の幅が大きく広がります。当会計事務所までお気軽にお問い合わせください。

根拠法令・参考資料

jumin_exit_year_tax.html を表示しています。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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