【超朗報】Small Business Reliefが2029年12月まで3年間延長決定!

投稿:2026年8月12日更新:2026年8月12日ブログ

ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。

UAE財務省が2026年7月29日にMinisterial Decision No.131 of 2026を発出し、法人税のSmall Business Relief(スモールビジネス税制優遇、以下SBR)の適用期限を3年延長することを決定しました。従来は2026年12月31日に終了する課税期間までとされていた適用対象が、2029年12月31日に終了する課税期間までに延びています。ドバイで小規模に事業を営む日本人経営者、そしてこれからドバイ移住を検討している日本人にとって、法人税の負担計画を大きく左右する重要な改正になります。今回は改正の中身と、日本からの移住者への実務的な影響を整理してお伝えします。

Small Business Reliefとはどのような制度か

Small Business Reliefは、UAE法人税(税率9%)において、一定の売上規模以下の事業者を実質的に非課税として扱う救済措置です。適用を選択した課税期間については課税所得がゼロとみなされ、9%の法人税が発生しません。UAEの法人税制の全体像についてはUAE法人税の基礎解説もあわせてご覧ください。

制度の根拠は2023年に発出されたMinisterial Decision No.73 of 2023で、当初は2026年12月31日までに終了する課税期間を対象としていました。今回のMinisterial Decision No.131 of 2026は、この期限の部分を改正し、対象を3年間後ろ倒しにしたものです。UAE財務省の公式プレスリリースでも、2029年12月31日までの延長が明記されています。

今回の改正で何が変わり、何が変わらないのか

変わったのは適用期限のみ

今回延長されたのは、あくまで制度が使える期間です。年間売上300万AED(約1億2,900万円、1AED=43円換算)以下という所得要件は一切変わっていません。売上判定の基準額はそのまま維持され、適用できる年数だけが3年延びたと理解していただくのが正確です。

項目 改正前(MD73/2023) 改正後(MD131/2026)
適用期限 2026年12月31日までに終了する課税期間 2029年12月31日までに終了する課税期間
売上基準 300万AED以下 300万AED以下(変更なし)
対象外 QFZP・大規模多国籍企業グループ QFZP・大規模多国籍企業グループ(変更なし)

対象外となる事業者も従来どおり

Qualifying Free Zone Person(QFZP、0%優遇を受けるフリーゾーン適格法人)と、連結売上が31.5億AEDを超える大規模多国籍企業グループの構成会社は、引き続きSBRの対象外です。フリーゾーンでの0%優遇との関係についてはQFZPの解説記事で詳しく触れています。フリーゾーンとメインランドのどちらで法人を設立するか迷っている方は、フリーゾーン比較の記事もご参照ください。

ドバイ移住・在住の日本人経営者への影響

この延長は、日本からドバイへ移住して小規模なコンサルティング業や物販業などを始めた日本人にとって、非常に大きな追い風になります。移住直後は売上が立ち上がる途中の段階が多く、年間売上300万AEDを下回るケースが少なくありません。その期間について、少なくとも2029年12月31日までに終了する課税期間まで法人税をゼロにできる見通しが立つためです。ドバイ移住全体の流れはUAE移住の実務ガイドでも解説しています。

ただし、SBRだけを理由に移住のタイミングを決めるのは危険です。日本を出国する際には、いわゆる国外転出時課税(出国税)の検討が欠かせません。含み益のある有価証券等を1億円以上保有したまま日本の居住者でなくなる場合、その含み益に日本の所得税が課される仕組みがあり、UAE側の法人税がゼロであっても日本側の課税は別途発生します。出国のタイミング設計については出国タイミングの考え方で詳しく整理しています。

自動適用ではなく毎期の選択が必要

SBRは、要件を満たせば自動で適用されるものではありません。各課税期間ごとに、EmaraTax上の法人税申告書で能動的に適用を選択する必要があります。適用を選ぶ場合でも法人税の登録義務や申告義務自体は残るため、登録も申告も不要になるわけではない点に注意が必要です。制度の詳細は連邦税務庁のSmall Business Reliefページで確認できます。

移住直後の立ち上げ期を法人税ゼロで走らせる

今回の延長により、移住から数年間の事業立ち上げ期を法人税ゼロで走らせられる期間が実質的に広がりました。たとえば2027年にドバイへ移住して法人を設立し、初年度の売上が300万AEDを下回る見込みであれば、その課税期間についてSBRを選択して法人税をゼロにできます。事業が軌道に乗り売上が300万AEDを超える段階までは、キャッシュを事業成長に回しやすくなるということです。移住者にとっては、初期の資金繰りに直結する現実的なメリットになります。

一方で、この延長はあくまで期限の後ろ倒しであり、恒久措置ではありません。2029年12月31日より後に終了する課税期間についてどうなるかは、今後の財務省の判断次第です。今の時点で「ずっと使える制度」と考えて長期の事業計画を立てるのは避け、2030年以降は通常の9%課税に戻る前提で資金計画を組んでおくのが堅実な姿勢になります。

よくある間違い

一度でも300万AEDを超えると恒久的に失う

売上要件は単年度ではなく累積で判定されます。2023年6月1日以降のいずれかの課税期間で一度でも売上が300万AEDを超えると、その後の期で売上が基準を下回ったとしても、SBRの適格を恒久的に失います。「今年は売上が下がったからまた使える」とはならない点が、最も誤解されやすいところです。事業が拡大しそうな年の途中で、この閾値を意識せずに売上を積み上げてしまうと、翌期以降の優遇まで一気に失う結果になりかねません。

売上と利益を混同しない

300万AEDの基準はあくまで売上(Revenue)であって、利益ではありません。利益が小さくても売上が300万AEDを超えていればSBRは使えません。物販業のように利益率が低く売上規模が大きくなりやすい業種では、利益ベースの感覚で判断すると見誤ります。

まとめ

📋 今回のポイント

  • Small Business Reliefの適用期限が2029年12月31日終了課税期間まで3年延長
  • 根拠はMinisterial Decision No.131 of 2026(2023年MD73を改正)
  • 年間売上300万AED以下という基準は変更なし
  • QFZPと大規模多国籍企業グループは引き続き対象外
  • 累積判定のため一度超えると恒久的に失う点に注意
  • 自動適用ではなく各課税期間ごとにEmaraTaxで選択が必要

当会計事務所は、ドバイ移住を検討する日本人の方や、既にUAEで事業を営む日本人経営者に対し、Small Business Reliefの適用可否判定から法人税の登録・申告、出国税を含む日本側の課税リスクの整理まで一貫してサポートしています。SBR延長を踏まえた法人税プランニングをご検討の方は、当会計事務所までお気軽にお問い合わせください。

根拠条文・出典

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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