エミラティゼーション未達で月1万AEDの罰金が2026年7月1日から発生します

投稿:2026年7月1日更新:2026年7月1日ブログ

ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。

2026年7月1日から、エミラティゼーション(自国民雇用義務)の上期目標を達成できなかった企業に対し、未達1人あたり月額1万AEDの罰金が発生し始めました。UAEの人的資源エミラティゼーション省(MoHRE)は6月30日を上期の期限と定めており、これを過ぎた時点で目標に届いていない企業は、翌7月1日から自動的に金銭的負担を求められることになります。ドバイで法人を設立し、現地で従業員を雇っている日本人オーナーにとって、これは決して他人事ではありません。UAE政府の雇用関連の公式ポータルでも自国民雇用政策は国家的な優先事項として位置づけられており、対象となる企業は罰金額の大きさを正しく理解しておく必要があります。今回は当会計事務所の視点から、この制度の仕組みと、ドバイ法人オーナーが見落としやすい論点を整理します。

エミラティゼーションとは何か

エミラティゼーションは、民間企業に一定割合のUAE国民(エミラティ)を雇用させる自国民雇用政策です。石油に依存しない経済への転換と、自国民の民間就労を促すことを目的としています。制度の中心にあるのが、MoHREが定める年2%の雇用目標です。対象となる企業は、熟練職(スキルレベル1から3など)に占めるエミラティの比率を毎年2ポイントずつ引き上げることが求められます。

重要なのは、この2%が上期と下期に分けて課される点です。上期の6月30日までに1%、下期の12月31日までにさらに1%という半年ごとのチェックポイント方式に変わっており、年末にまとめて達成すればよいという運用ではなくなりました。2026年末時点での累積目標は、熟練職におけるエミラティ比率10%とされています。この半期管理への移行を見落とすと、年央の段階ですでに未達と判定されてしまいます。

対象となる企業の規模

目標の対象は、UAE本土(メインランド)で従業員50名以上を抱える民間企業です。従業員20名から49名の企業についても、金融、不動産、医療、ITなど指定された分野では、年1名のエミラティ雇用義務が課されています。一方で従業員20名未満の小規模企業は、現時点で義務的な数値目標の対象外です。ドバイの多くの日本人法人は小規模ですが、事業拡大で従業員数が増えると、ある日突然この義務の対象に切り替わる点に注意が必要です。

7月1日から発生する罰金の金額

MoHREは、6月30日の期限までに上期目標を達成できなかった企業に対し、7月1日から金銭的負担を課すと警告してきました。金額は、未達となったエミラティ1名あたり月額1万AED、年間に換算すると12万AEDです。1AEDを43円で換算すると、月額で約43万円、年間で約516万円に相当します。仮に2名分が不足していれば、年間の負担は24万AED、日本円で約1,032万円という規模に達します。

この罰金は申告や手続きを要するものではありません。MoHREとNafisのシステムが企業ごとの登録従業員数と達成状況を自動的に把握しており、期限時点で目標に届いていなければ、7月の初日から負担が積み上がっていく仕組みです。現地報道でも、この負担が2022年の制度開始当初の月6,000AEDから段階的に引き上げられてきた経緯が伝えられています。

項目 内容
対象企業 本土の従業員50名以上の民間企業(20〜49名は指定分野で1名義務)
上期の期限 2026年6月30日(熟練職の1%増)
罰金の発生日 2026年7月1日から
罰金額 未達1名あたり月額1万AED(年間12万AED、約516万円)
年間累積目標 2026年末に熟練職の10%

ドバイ法人オーナーが実務で押さえるべき点

ドバイで会社を経営する日本人にとって、この制度は人件費とキャッシュフローの両面に影響します。まず確認すべきは、自社が本土企業かフリーゾーン企業かという点です。エミラティゼーションの数値目標は原則として本土の民間企業に課されており、フリーゾーンの企業は一部の戦略分野を除いて現時点で義務的なクォータの対象外とされています。ドバイでの法人形態の選択が、そのままこの義務の有無に直結します。

給与要件とWPSとの連動

見落とされがちなのが、エミラティ従業員の最低給与要件です。2026年からは、雇用目標のカウント対象となるエミラティは月額6,000AED以上の給与が条件とされています。これを下回る場合、たとえ雇用していても目標人数に算入されず、結果として未達と判定されるおそれがあります。給与はWage Protection System(WPS)を通じて支払い実態が確認されるため、名目だけの雇用では要件を満たせません。ドバイ法人の給与支払実務や労働法の改正点については、別記事でも整理しています。

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Nafisによる給与補助の活用

罰金の側面ばかりが注目されますが、UAEはエミラティ雇用を後押しするための補助制度も用意しています。Nafisプログラムでは、条件を満たすエミラティ1名につき、企業に対して最長5年間、月額8,000AEDから10,000AED程度の給与補助が支払われます。単に罰金を避けるという発想だけでなく、補助制度を前提に採用計画を組めば、実質的な人件費負担を抑えながら目標を達成できる余地があります。ドバイ法人全体の給与計算や退職金(Gratuity)を含めたコスト設計とあわせて検討することが実務的です。

関連記事ドバイ法人の給与計算実務|WPS・退職金(Gratuity)・失業保険まで完全ガイドsocpa.world

期限管理は法人税とあわせて設計する

エミラティゼーションの半期チェックポイントは、ドバイ法人が抱える数ある期限管理のひとつにすぎません。UAEでは法人税の登録や申告にも厳格な期限が設けられており、こちらも遅れれば1万AEDの登録遅延罰金などの対象になります。人事のエミラティゼーション、経理の法人税申告、給与のWPSといった複数の期限を別々に管理していると、どれかが抜け落ちるリスクが高まります。当会計事務所では、これらを一体のコンプライアンスカレンダーとして設計することをお勧めしています。

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よくある間違い

相談現場で最も多い誤解が、エミラティゼーションの目標を総従業員数に対する比率だと考えてしまうケースです。目標はあくまで熟練職の従業員数を分母とした比率であり、スキルレベルの低い職種の人員は分母に含まれません。従業員数が多くても、熟練職が少なければ必要なエミラティの人数はそれに応じて変わります。自社の従業員をスキルレベルで正しく分類できていないと、必要人数の計算そのものが狂ってしまいます。

もう一つ多いのが、フリーゾーン企業だから一切関係ないと決めつけてしまうケースです。原則としてフリーゾーンは対象外ですが、UAE内閣が指定する一部の戦略分野では例外的に対象となる可能性があり、また本土に支店や別法人を持つ場合はそちらが対象になります。フリーゾーンという形態だけを根拠に安心せず、実際の事業構造で判断する必要があります。

まとめ

📋 今回のポイント

  • 2026年7月1日から未達1名あたり月1万AED(年12万AED・約516万円)の罰金
  • 対象は本土の従業員50名以上、目標は熟練職の年2%(半期で各1%)
  • 累積目標は2026年末に熟練職の10%
  • エミラティ従業員は月6,000AED以上の給与でカウント、WPSで実態確認
  • Nafisの給与補助(月8,000〜10,000AED、最長5年)を活用可能
  • 法人税・WPSと一体のコンプライアンスカレンダーで期限管理

当会計事務所は、ドバイ法人の設立から法人税申告、給与計算、そしてエミラティゼーションを含む労働コンプライアンスまで一気通貫でサポートしています。従業員数が増えて義務の対象になりそうな企業や、罰金と補助制度を踏まえた採用計画を検討したい企業は、複数の期限を横断的に整理することで無用な負担を避けられます。エミラティゼーションの対象判定や罰金試算についてご不明な点があれば、当会計事務所までお気軽にお問い合わせください。

根拠条文・出典

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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