ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。
ドバイ移住を考えている方から「実際に住んでみないと自分に合うかどうか判断できない」というご相談を数多くいただきます。いきなり法人を設立してビザを取得するのは、費用も時間もかかります。もし想像と違ったときのリスクを考えると、まずはお試しで暮らしてみたいと思うのが自然です。
その希望を後押ししてくれる制度が、2024年8月1日から拡充された日本パスポート保有者向けの90日ノービザ滞在です。日本国民は事前手続きなしで、ドバイに到着した瞬間から最大90日間滞在できます。この期間を使って生活・気候・ビジネス環境を実地で確認し、本格移住を判断する。さらにその90日の中で法人設立や投資家ビザ、状況によってはゴールデンビザの取得へと進めば、そのままドバイ居住者への切り替えが可能です。
ただし2026年2月28日以降、猶予期間が撤廃され、罰金体系も厳格化されました。ルールを誤解して90日を超えると、AED 50(約2,150円、1AED=43円換算)の日次罰金が積み上がり、将来のビザ審査にも悪影響を及ぼします。本記事では、日本人が知っておくべき90日ノービザの詳細ルールと、お試し滞在から法人設立・投資家ビザ・ゴールデンビザ取得へつなげる現実的な流れを整理します。
日本パスポートで最大90日ノービザという新ルール
2024年8月1日以前、日本人がドバイに入国した場合、空港で自動付与される到着ビザは30日間で、10日間の猶予期間を加えて最大40日まで滞在できました。延長手続きを取ることでさらに30日の追加も可能でしたが、実質的な上限は60日前後という運用が主流でした。
2024年8月1日から、日本パスポート保有者への免除措置が大幅に拡充されています。外務省の発表によれば、UAEは日本人に対し90日を超えない短期滞在のノービザ措置を導入しました。エミレーツ航空の公式案内にも、日本を含む対象国のパスポート保有者に「90日間の観光ビザ(複数回入国)」がスタンプ形式で付与される旨が明記されています。
このスタンプの重要な特徴を整理します。
| 項目 | 内容 |
| 滞在可能日数 | 180日ウィンドウ内で合計90日まで |
| 入国回数 | 複数回入国可能(Multiple Entry) |
| 事前申請 | 不要(空港で自動付与) |
| 費用 | 無料 |
| パスポート残存 | 入国時点で6ヶ月以上必要 |
| 延長 | ノービザ枠内での国内延長は不可、90日到達前に有料ビザへの切替または出国が必要 |
日本人はドバイ国際空港に降り立てば、その場で最大90日の滞在資格を無償で手に入れられるということです。移住検討者にとって、これほど使い勝手のよい制度は他国には少ないのが実情です。
90日ルールの正しい数え方
90日の数え方には注意が必要です。在ドバイ日本国総領事館の案内を踏まえて整理すると、入国日を1日目として数え、90日目までが滞在期限になります。複数回入国できるとはいえ、180日ウィンドウの中で合計滞在日数が90日を超えないよう管理する必要があります。
例えば、以下のような使い方が想定されます。
- 1回目の入国で30日滞在してから一度出国、2ヶ月後に再入国で60日滞在し、合計90日で終了
- 1回目の入国で90日連続滞在し、その後は正式なビザに切り替え
- 短期出張を繰り返し、180日以内合計90日以内に収める
ここで注意すべきは、日本人によく誤解されているビザランは通用しないという点です。滞在90日を消化した後にいったん出国し、翌日に再入国すれば新しい90日が始まる、という運用は認められていません。180日ウィンドウの中で合計90日を使い切った場合、次の入国には正式なビザの取得が求められます。
2026年2月以降の罰金体系
2026年2月末から、UAEはビザ超過滞在に対する取り扱いを厳格化しました。VisaHQの報道やICP(Federal Authority for Identity, Citizenship, Customs & Port Security)の案内を総合すると、従来あった10日間の猶予期間(Grace Period)が撤廃され、日次罰金がAED 50に統一されました。
| 項目 | 2026年2月以前 | 2026年2月28日以降 |
| 猶予期間 | 10日間(罰金なし) | 廃止(初日から罰金) |
| 日次罰金 | ビザ種別で異なる(AED 100〜200) | AED 50/日(全カテゴリ統一) |
| 上限 | あり | なし(毎日累積) |
| 出国許可 | 一律必要 | 30日超の超過で必要 |
| 将来のビザ審査への影響 | 限定的 | 超過履歴が記録され影響する |
90日を1日でも超過すれば、その日からAED 50が課され、7日でAED 350(約1万5千円)、30日でAED 1,500(約6万5千円)、60日でAED 3,000(約13万円)となり、加えて出国許可費用や退去命令のリスクが発生します。悪質なケースでは自動的な国外退去と再入国禁止処分もあり得るため、90日という期限は絶対のラインとして扱う必要があります。
将来UAEのゴールデンビザや投資家ビザを狙う場合、超過滞在履歴が審査に影響することが明示されています。お試し滞在で気を抜くと、本格移住に進めなくなる本末転倒な事態を招きかねません。
お試し滞在中に確認すべき5つのチェック項目
90日という時間は決して長くはありませんが、ドバイ生活の解像度を上げるには十分な期間です。当会計事務所では、この期間中に以下の5項目を実地で確認することをおすすめしています。
1. 生活費の実感
ネットで調べる家賃相場と、実際に内見した物件の価格や質は大きく異なります。JBR、ダウンタウン、マリーナ、ジュメイラといった代表的なエリアを短期滞在で回り、自分の生活水準に合う立地を確認します。食材費、外食費、車移動の実費なども、1ヶ月以上住むと現実的な数字が見えてきます。
2. 気候への適応
ドバイは5月下旬から10月上旬にかけて日中40度を超える猛暑となります。この期間の屋外活動は事実上不可能で、生活の大半が屋内空調環境になります。冬場(11月から3月)は理想的な気候ですが、夏場のライフスタイルに耐えられるかどうかは実際に体験しないと判断できません。
3. 日本人コミュニティと現地ネットワーク
ドバイには約4,000名以上の日本人が居住しており、日本人会や業種別コミュニティが活発に運営されています。90日のお試し期間中に、複数の会合やイベントに参加し、実際に相談できる相手が見つかるかを確認しておくと安心です。
4. ビジネス機会の実地検証
自分の事業がドバイでどのように受け入れられるか、実際にクライアント候補や協業先とミーティングを重ねます。オンラインで完結する事業なのか、現地オフィスや現地スタッフが必要な事業なのかによって、選ぶべきビザスキームが変わります。
5. 税務ステータスの整理
日本の非居住者ステータスを取得しつつドバイの税務居住者になる場合、日UAE租税条約や日本の国内法上の生活の本拠の判定が絡みます。お試し期間中にこの整理を進めることで、本格移住時の税務トラブルを回避できます。
90日以内に選ぶビザの選択肢
お試し滞在で「移住する」と決めた場合、90日以内に長期ビザへ切り替える必要があります。日本人の移住パターンで多いのは、フリーゾーン法人を設立して投資家ビザを取る流れですが、条件を満たせばゴールデンビザや不動産投資家ビザも視野に入ります。
| ビザ種別 | 有効期間 | 主な要件 | 想定される対象者 |
| フリーゾーン投資家ビザ | 2年〜3年 | フリーゾーン法人設立、株主・役員としての参加 | 起業家・個人事業主 |
| メインランド投資家ビザ | 3年 | LLCまたはSole Establishment設立、資本金要件 | 一般事業者 |
| 雇用ビザ | 2年〜3年 | UAE法人からの雇用オファー、労働許可 | 会社員として渡航する方 |
| ゴールデンビザ(投資家) | 10年 | AED 200万以上の不動産投資、または事業投資 | 富裕層投資家 |
| ゴールデンビザ(起業家) | 10年 | UAE内で年商AED 100万以上の事業、または高評価スタートアップ | 事業家 |
| ゴールデンビザ(専門職) | 10年 | 医師・研究者・スポーツ選手などの高度専門職 | 該当専門職 |
| Property Investor Visa | 2年 | AED 75万以上の不動産投資 | 不動産投資家 |
| リタイアメントビザ | 5年 | 55歳以上、収入・預金・不動産のいずれか要件充足 | シニア層 |
フリーゾーン法人設立からの投資家ビザ
日本人がもっとも利用しているのはフリーゾーン法人設立に伴う投資家ビザです。代表的なフリーゾーンには、IFZA(International Free Zone Authority)、Meydan Free Zone、DMCC、DIFC、ADGMなどがあります。それぞれ費用や業種の許可範囲、オフィス要件、監査要否が異なります。
一般的なフリーゾーン法人設立から投資家ビザ発行までの費用感を整理すると、以下の通りです。
| 項目 | 目安コスト |
| フリーゾーン設立費用(初年度) | AED 12,000〜30,000(約52万〜129万円) |
| 投資家ビザ(3年) | AED 4,000〜6,000(約17万〜26万円) |
| Emirates ID | AED 370(約1万6千円、3年分) |
| 健康診断・生体認証 | AED 500前後(約2万2千円) |
| 医療保険(義務) | AED 800〜3,000/年(約3万4千〜13万円) |
フリーゾーン投資家ビザの魅力は、比較的コンパクトな資本要件で長期滞在資格を取得できる点です。事業実態が明確でなくても、法人が存在していれば株主として投資家ビザを申請できます。90日のお試し期間中に登記からResidence Visa発行まで完了させることが実務的に十分可能です。
フリーゾーン選びは、業種の許可範囲、監査義務の有無、法人税の扱い(Qualifying Free Zone Person該当性)まで含めて検討する必要があります。UAE法人税9%の適用可否は、フリーゾーンの選定と実際の事業運営の設計で大きく変わります。この判断は移住後の税負担に直結するため、設立前の段階で税務専門家と相談することが重要です。
ゴールデンビザという10年滞在の選択肢
一定の資産や事業実績がある方には、ゴールデンビザという選択肢があります。ゴールデンビザは10年間の有効期間を持ち、更新も可能な長期居住ビザです。スポンサー(法人や雇用主)が不要で、家族帯同、住み込みメイドや運転手の帯同、UAE国外滞在期間の制限緩和など、通常のResidence Visaにはない特典が数多くあります。
日本人が該当しやすいカテゴリは以下の3つです。
投資家カテゴリ
AED 200万以上のUAE不動産に投資すると申請できます。不動産は住宅用でも商業用でも構いませんが、モーゲージ物件の場合は残債要件など細かい条件があります。オフプラン物件でも一定の条件を満たせば認められるケースがあり、資産形成と移住を同時に実現できるルートとして人気があります。
起業家カテゴリ
UAE国内で年商AED 100万以上の事業を経営している方、または認定機関が高評価するスタートアップの創業者が対象です。既に日本や海外で成功している事業家が、UAE法人を通じて事業をスケールさせる場合に該当することが多いカテゴリです。
専門職カテゴリ
医師、科学者、研究者、エンジニア、芸術家、スポーツ選手、教育者などの高度専門職で、給与や職歴などの基準を満たす方が対象になります。日本で確立したキャリアを持つ専門職の方は、勤務先を通じてのビザ取得より、ゴールデンビザで独立居住者として渡航するほうが柔軟性が高い場合があります。
ゴールデンビザは審査基準が高く、書類要件も細かく決まっています。90日のお試し期間中に申請書類を揃え、Nomination(推薦)を受け、審査を通過するのは容易ではありませんが、事前準備を渡航前から進めておけば十分に可能です。
90日を最大活用するタイムライン例
お試し滞在の第1日目から、法人設立・ビザ取得と並行して進めるのが実務的にはもっとも効率的です。以下は当会計事務所がクライアントに提案しているスケジュール例です。
| 週 | アクション |
| 1週目 | 到着、住居仮契約、日本人コミュニティ接触 |
| 2週目 | フリーゾーン選定、事業計画の詰め、銀行口座候補リサーチ |
| 3〜4週目 | フリーゾーン法人設立申請、Establishment Card取得 |
| 5〜6週目 | 投資家ビザ申請、Entry Permit発行 |
| 7〜8週目 | Emirates ID申請、健康診断 |
| 9〜12週目 | Residence Visa発行、銀行口座開設、住居本契約 |
法人設立の書類準備を渡航前から始めておけば、実際にドバイに来てから2〜3週間で申請プロセスに入れます。90日フルに使い切る前に、Residence Visaを取得できる可能性が十分にあります。ゴールデンビザを狙う場合は、渡航前にNomination獲得と書類の準備を進めておくことが必須です。90日という期限があるからこそ、事前の設計が結果を左右します。
90日ノービザ利用時の注意点
最後に、お試し滞在を成功させるための実務ポイントをまとめます。
パスポート残存期間の確認
入国時点でパスポート残存が6ヶ月未満だと、そもそも入国を拒否される可能性があります。ドバイ渡航前に必ず更新しておきましょう。
帰りの航空券と宿泊予約の準備
2026年以降、入国審査でProof of Onward Travel(復路航空券)とホテル予約の提示を求められるケースが増えています。片道航空券だけでの入国は避けたほうが無難です。
健康保険の加入
UAEは2025年からEmirates ID保有者(居住者)に医療保険を義務付けています。ノービザ滞在者は対象外ですが、90日の長期滞在中に医療を受ける可能性を考えると、旅行保険や国際健康保険への加入が推奨されます。
超過滞在は絶対に避ける
たとえ数日でも超過すると、AED 50の日次罰金と将来のビザ審査への悪影響が発生します。90日目の前日には必ず出国するか、Residence Visaの切替を完了させてください。
ビザランへの過信は禁物
近隣のオマーンやサウジアラビアへ短期出国して戻ってくれば新しい90日が始まる、という運用は制度上認められていません。180日ウィンドウでの合計90日制限は厳格に管理されています。
まとめ
📋 今回のポイント
- 日本パスポートで2024年8月1日から180日ウィンドウ内で合計90日ノービザ滞在が可能
- 複数回入国可、事前申請不要、無料、パスポート残存6ヶ月以上
- ビザランで90日リセットは不可、180日ウィンドウで厳格に管理
- 2026年2月28日以降、猶予期間廃止+AED 50/日(約2,150円)の日次罰金
- 超過滞在履歴は将来のゴールデンビザ・投資家ビザ審査に悪影響
- 90日をお試し滞在+法人設立+投資家ビザ取得の複合戦略として活用
- フリーゾーン法人+投資家ビザは事前準備で90日以内取得が実務上可能
- ゴールデンビザ(不動産・起業家・専門職)は事前Nomination準備が鍵
日本パスポート保有者に付与される90日ノービザは、ドバイ移住を検討する方にとって非常に強力な制度です。事前申請なしで無料で最大90日滞在でき、複数回入国も可能なため、お試し滞在を通じて生活・気候・ビジネス機会を実地で確認できます。一方で2026年2月以降、猶予期間が撤廃され、AED 50の日次罰金が初日から発生する厳格な運用に切り替わりました。ビザランで滞在を無制限に延ばすこともできず、90日という期限は絶対のラインとして守る必要があります。
もっとも合理的な戦略は、90日のお試し期間を法人設立・投資家ビザ・ゴールデンビザ取得のための準備期間として活用することです。到着後すぐにフリーゾーン法人の設立プロセスを開始すれば、90日満了前にResidence Visaを取得し、そのままドバイでの本格移住生活に移行できます。資産や事業実績が要件を満たす方は、10年有効のゴールデンビザを直接狙うことも十分現実的です。
当会計事務所では、フリーゾーン選定から法人設立、投資家ビザ・ゴールデンビザ取得、Emirates ID発行、法人口座開設まで、日本語でワンストップサポートしています。お試し滞在の段階から、90日の使い方を戦略的に設計したい方は、当会計事務所までお気軽にお問い合わせください。




