海外投資する富裕層はなぜ狙われる?追徴税1,595万円の実態を解説

投稿:2026年7月10日更新:2026年7月10日ブログ

ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。

資産形成が進んだ経営者や投資家の方から、よくいただくご質問があります。海外に投資や資産を持っていると税務調査に選ばれやすいのか、というものです。結論から申し上げますと、統計の数字は明確にその傾向を示しています。国税庁が直近の2025年12月に公表した最新の所得税及び消費税調査等の状況では、富裕層、とりわけ海外投資を行う個人への調査が深度を増している実態が浮かび上がっています。当会計事務所はドバイを拠点に、海外資産を持つ日本人の税務をサポートしていますので、この統計をドバイ移住や国外転出時課税との関係も含めて読み解いていきます。

富裕層への税務調査はどれだけ深いか

まず全体像を押さえます。直近の集計では所得税の調査等の総件数は73万6千件を超え、追徴税額の総額は1,431億円と、現在の集計方法となった平成21事務年度以降で過去最高を記録しました。件数を絞りながら1件あたりの深度を高めているのが近年の傾向です。

そのなかで富裕層は明確な重点対象です。国税庁は有価証券や不動産などの大口所有者、経常的に所得が高額な個人、海外投資等を積極的に行う個人を富裕層と位置づけ、優先的に調査を実施しています。近年は件数を絞る一方で1件あたりの調査の中身を濃くしており、限られた人員を高額かつ複雑な事案に集中させる方針が鮮明です。その結果が下の表に表れています。

区分 1件当たり申告漏れ所得金額 1件当たり追徴税額
所得税実地調査全体 1,486万円 299万円
富裕層 3,449万円 855万円
海外投資等を行う富裕層 3,459万円 1,595万円

富裕層への実地調査は2,427件実施され、1件当たりの申告漏れ所得金額は3,449万円と、所得税実地調査全体の1,486万円に比べておよそ2.3倍でした。富裕層の申告漏れ所得金額の総額は837億円に達しています。とりわけ海外投資等を行う富裕層では、1件当たりの追徴税額が1,595万円と、実地調査全体の299万円のおよそ5倍という突出した水準です。海外に資産や投資を持つ方ほど、深度の高い調査の対象になりやすい構造が数字にはっきりと表れています。

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なぜ海外資産は捕捉されるのか

海外投資への調査がこれほど深くなる背景には、当局が海外資産を立体的に把握できる仕組みが整ったことがあります。

情報が複数のルートで集まる

まず、金融口座情報の自動的交換であるCRSにより、各国の税務当局から日本居住者の海外口座情報が届きます。加えて、100万円を超える国外への送金や国外からの受金は、金融機関から国外送金等調書として税務署に提出されます。さらに、その年の12月31日時点で合計5,000万円を超える国外財産を保有する居住者は、国外財産調書の提出義務を負います。海外の資産や取引は、これら複数のルートから重ねて把握される構造になっています。

選定にデータ分析が使われる

調査対象は無作為に選ばれるわけではありません。国税庁は収集した資料情報を様々な角度から分析し、優先度を付けて調査先を選定しています。海外送金の記録、CRS情報、確定申告の内容などが照合され、申告との不整合がある個人が浮かび上がる仕組みです。連絡が来た時点で、当局は相応の情報を握っていると考えておくのが安全です。

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ドバイ移住を考える方が押さえるべき点

ここからがドバイ在住者や移住を検討される方にとって重要な論点です。ドバイに移り住んで日本の非居住者になれば、日本での課税関係は大きく変わります。ただし、それは過去の申告が調査対象から外れることを意味しません。

調査には遡及の期間があり、原則として過去5年分、仮装や隠蔽といった悪質な事案では最長7年分まで遡って更正される可能性があります。つまり、移住した後であっても、居住していた時期の海外投資や国外財産の申告は調査の射程に入ります。移住のタイミングで慌てて資産を動かすと、かえって送金記録から目立ってしまうこともあります。ドバイの銀行で口座を開設する際にはCRSの自己宣誓書を求められ、日本居住者であればマイナンバーを納税者番号として申告することになります。移住前の準備段階でこうした手続きを行えば、その情報は日本の当局にも共有され得ます。移住はある時点で線を引けば終わりというものではなく、居住していた期間と移住後の双方にわたって申告を整合させておく必要があります。

加えて、1億円以上の対象資産を持つ方が日本を出国する際には、国外転出時課税、いわゆる出国税の対象になります。含み益に課税されるこの制度は、株式や投資信託を多く持つ富裕層ほど影響が大きく、事前の設計が欠かせません。海外資産の申告状況と出国税を切り離さず、移住の全体像のなかで整えておくことが、後日の調査リスクを抑える近道になります。

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よくある間違い

実調率が低いから自分は大丈夫と考える

個人の実地調査の割合は平均すれば年1パーセントを下回ります。この数字だけを見て安心する方がいますが、これはあくまで全体の平均です。富裕層や海外投資という重点分野に該当する方は、平均よりはるかに高い頻度で対象になり得ます。確率の低さは、重点対象に当てはまらない人にとっての平均でしかありません。

海外の口座や資産は日本に伝わらないと思い込む

CRSや国外送金等調書、国外財産調書が整った現在、海外資産が日本の当局に伝わらないという前提はもはや成り立ちません。見えていない前提ではなく、見えている前提で適法に整えることが、いまの富裕層に求められる姿勢です。

移住すれば過去の申告も関係なくなると考える

非居住者になっても、居住していた期間の申告は調査の対象から外れません。原則5年、悪質な場合は7年の遡及があり、移住後に調査の連絡が届くことも十分にあり得ます。移住は過去のリセットではないという理解が大切です。

まとめ

📋 今回のポイント

  • 最新の集計で所得税追徴税額の総額は過去最高の1,431億円
  • 富裕層の実地調査は2,427件、申告漏れ所得は全体の約2.3倍の1件3,449万円
  • 海外投資を行う富裕層の1件当たり追徴税額は1,595万円で全体の約5倍
  • CRSと国外送金等調書と国外財産調書で海外資産は立体的に捕捉
  • 調査の遡及は原則5年、悪質事案は最長7年で移住後も射程内
  • 1億円以上の資産を持つ出国者は国外転出時課税の事前設計が必須

当会計事務所は、ドバイへの移住や海外投資を行う日本人の方々に対し、海外資産の申告状況の点検から、国外財産調書の作成、国外転出時課税を見据えた資産の整理まで、日本とUAEの双方の税務を見渡してサポートしています。海外投資や資産をお持ちで、税務調査への備えや移住後の申告に不安がある方は、当会計事務所までお気軽にお問い合わせください。

根拠条文・出典

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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