非居住者の所得税申告マニュアル|不動産賃貸20.42%・売却10.21%・役員報酬・配当の源泉徴収と確定申告で還付を受ける方法

投稿:2025年11月29日更新:2026年5月30日未分類

海外移住や海外駐在などにより日本を離れた後も、日本国内で発生する所得がある場合は、引き続き日本での確定申告が必要になることがあります。この記事を読んでくださっている方の中には、UAEに移住して現地で事業を行いながらも、日本に不動産を残していたり、日本の会社の役員として報酬を受け取り続けていたりする方もいらっしゃるのではないでしょうか。本記事では、特にご相談の多い「非居住者になった場合の所得税申告方法」について、納税管理人の選任有無による手続きの違い、源泉徴収税率と確定申告の関係、適用できる所得控除、国外からの納税方法、租税条約による軽減措置まで、実務に即して詳しく解説します。特に、納税管理人を選任した場合と選任しない場合で手続きや申告期限が大きく異なりますので、しっかりと理解しておきましょう。

非居住者でも確定申告が必要なケース

日本の所得税法では、非居住者であっても国内源泉所得がある場合は確定申告が必要とされています。非居住者に課税される国内源泉所得には、以下のようなものがあります。

所得の種類 具体例
不動産所得 日本国内にある不動産の賃貸による収入
不動産譲渡所得 日本国内にある不動産の売却による収入
給与所得 内国法人の役員報酬(国外勤務であっても該当)
配当所得 内国法人からの配当
利子所得 日本の金融機関からの利子
使用料 特許権や著作権などのロイヤリティ
事業所得 日本国内に恒久的施設がある場合の事業収入
退職所得 日本での勤務期間に対応する退職金
年金所得 日本の公的年金等

上記のような所得がある場合、多くは支払時に源泉徴収が行われますが、源泉徴収だけでは課税関係が終了しないケースもあります。不動産所得や不動産譲渡所得については原則として確定申告が必要になりますので、注意が必要です。

確定申告の方法は「納税管理人を選任するかどうか」で異なる

非居住者が日本で確定申告を行う方法は、出国時までに納税管理人を選任したかどうかで大きく異なります。

納税管理人を選任した場合

納税管理人を選任した場合、申告期限は居住者と同じく翌年2月16日から3月15日までとなります。納税管理人とは、海外にいる納税者に代わって、確定申告書の提出、税金の納付、税務署からの書類の受取り等を行う者のことをいいます。

納税管理人を定めた場合には、出国する非居住者の納税地を所轄する税務署長に所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書を提出する必要があります。届出は必ず出国日までに行う必要があり、1日でも遅れてしまうと届出の効果が発生しませんので、特に注意が必要です。

納税管理人になれるのは、日本国内に住所がある個人または法人です。資格は必要ありませんので、ご家族やご親族に依頼されるケースが多いですが、税理士に依頼することも可能です。

納税管理人を選任しない場合

納税管理人を選任しない場合は、出国日までに「準確定申告」を行う必要があります。準確定申告では、その年の1月1日から出国日までに生じたすべての所得について申告し、納税を済ませなければなりません。申告期限は出国日当日となりますので、非常にタイトなスケジュールになります。

なお、納税管理人を選任せずに出国した場合でも、出国後に国内源泉所得が発生した場合は、その所得について翌年2月16日から3月15日の間に確定申告が必要になります。その際は、確定申告時期に一時帰国するか、後から納税管理人を選任するなどの対応が必要です。

比較項目 納税管理人を選任した場合 納税管理人を選任しない場合
申告期限 翌年2月16日〜3月15日 出国日まで(準確定申告)
申告対象期間 1月1日〜12月31日 1月1日〜出国日
出国後の国内源泉所得 納税管理人を通じて翌年申告 別途申告が必要

確定申告書の作成と提出方法

非居住者の確定申告書は、原則として納税管理人が税務署へ提出することになります。ここで注意が必要なのは、非居住者本人はe-Taxを利用した電子申告ができないという点です。そのため、基本的には納税管理人に申告書を税務署へ持参または郵送で提出してもらう必要があります。ただし、税理士が納税管理人である場合には、税理士がe-Taxにより代理送信することが可能です。

確定申告書の作成と提出のパターンを整理すると、以下のようになります。

パターン 申告書作成 申告書提出 メリット
パターン1 税理士 税理士(納税管理人) すべて専門家にお任せ可能、e-Tax利用可
パターン2 本人 親族等(納税管理人) 費用がかからない
パターン3 税理士 親族等(納税管理人) 申告書の正確性を確保しつつ費用を抑制

確定申告書には、本人の情報に加えて納税管理人の氏名・住所を記載する必要があります。

源泉徴収と確定申告の関係

非居住者が受け取る国内源泉所得の多くは、支払時に源泉徴収が行われます。ただし、源泉徴収はあくまでも税金の前払いであり、最終的な税額は確定申告で精算することになります。主な国内源泉所得に対する源泉徴収税率は以下の通りです。

所得の種類 源泉徴収税率 備考
不動産賃借料 20.42% 個人が自己居住用に借りる場合は源泉徴収不要
不動産売却代金 10.21% 個人が自己居住用かつ1億円以下の場合は源泉徴収不要(国税庁No.2879
役員報酬 20.42% 国外勤務であっても源泉徴収が必要
給与(国内勤務分) 20.42% 国外勤務分は源泉徴収不要
非上場株式配当 20.42% 住民税なし
上場株式配当 15.315% 住民税なし
利子 15.315%〜20.42% 所得の種類により異なる
使用料 20.42% 特許権や著作権等のロイヤリティ

不動産を賃貸している場合、確定申告では収入から必要経費を差し引いた不動産所得をもとに税額を計算し、源泉徴収された税額を差し引いて申告します。計算した税額より源泉徴収税額が多い場合は還付を受けることができます。

非居住者が適用できる所得控除

居住者が適用できる所得控除は15種類ありますが、非居住者が適用できる所得控除は限定されています。具体的には、非居住者が適用できる所得控除は以下の3種類のみです。

適用できる所得控除 内容
雑損控除 日本国内にある資産についてのみ適用
寄附金控除 一定の寄附金について適用
基礎控除 令和7年分以降は58万円(合計所得金額2,350万円以下)

医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、扶養控除などは、非居住者には適用されません。なお、令和7年度税制改正により基礎控除額が引き上げられますが、居住者に適用される基礎控除額の上乗せ措置(所得金額に応じた37万円、30万円等の加算)は非居住者には適用されません。

納税方法

海外にいながら日本の税金を納付する方法には、以下のようなものがあります。

国内に銀行口座がある場合

国内に銀行口座を残している場合は、振替納税の制度を継続して利用することができます。また、インターネットバンキングを利用した納付やダイレクト納税も可能です。

納税管理人による代理納付

最も一般的な方法は、納税管理人に納税資金を送金して代理で納付してもらう方法です。

国外からの送金による納付

国外に住所または居所を有する方は、国外から直接納付することも可能です。具体的な手順は以下の通りです。

  1. 東京国税局の代表番号(03-3542-2111)に電話し、「国外納付専用窓口」を呼び出す
  2. 納付の具体的な手順や注意事項の説明を受ける
  3. 円貨建てで国外から送金する
  4. 納付書及び送金明細書を電子メール等で提出する

送金に係る手数料は納税者負担となります。その他、クレジットカードによる納付も利用可能です。

租税条約による軽減措置

日本はUAEとの間で租税条約を締結しており、2014年12月24日に発効しています。この条約により、UAE居住者が日本から受け取る配当、利子、使用料については、以下の限度税率が適用されます。

所得の種類 限度税率
配当(親子会社間・10%以上持株、12か月以上保有) 5%
配当(その他) 10%
利子 10%
使用料 10%

租税条約の軽減を受けるためには、所得の支払日前日までに租税条約に関する届出書を支払者を通じて税務署に提出する必要があります。届出書を提出しないまま国内法の税率で源泉徴収された場合でも、後から「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書」を提出することで、軽減税率との差額について還付を受けることができます。

ただし、個人については「Liable to Tax」要件の壁があり、日UAE租税条約の個人適用は限定的である点に留意が必要です(詳細は関連記事参照)。法人については2023年からUAEで法人税が導入されたため、条約適用の可能性が高まっています。

青色申告は非居住者でも適用可能

非居住者であっても、日本国内で不動産所得や事業所得がある場合は青色申告を適用することができます。青色申告には「最高65万円または10万円の青色申告特別控除」「赤字の3年間繰り越し」などの特典がありますので、不動産を保有している方は積極的に活用することをお勧めします。

青色申告の承認申請書の提出期限は、1月1日から1月15日までの開業の場合はその年の3月15日まで、1月16日以降の開業の場合は開業から2か月以内となります。

関連記事

まとめ

  • 非居住者でも国内源泉所得(不動産・役員報酬・配当・利子等)があれば日本で確定申告が必要
  • 納税管理人選任なら翌年3月15日まで通常申告、選任しないと出国日が準確定申告期限
  • 納税管理人の届出は出国日までに必須、1日でも遅れると効果なし
  • 非居住者本人はe-Tax不可、税理士が納税管理人なら代理送信可能
  • 不動産賃料20.42%・売却代金10.21%(1億円超)・役員報酬20.42%等が源泉徴収される
  • 不動産所得は確定申告で源泉徴収税額を精算し、過大徴収分は還付対象
  • 適用できる所得控除は雑損・寄附金・基礎の3種類のみ、令和7年分基礎控除は58万円(加算なし)
  • 国外納付は東京国税局代表(03-3542-2111)の国外納付専用窓口経由が基本
  • 日UAE租税条約で配当5%/10%・利子10%・使用料10%の軽減あり、ただし個人はLiable to Tax要件の壁
  • 非居住者でも青色申告適用可、不動産所得の節税に有効

ここまで記載したように、非居住者になった後の確定申告には、納税管理人の選任の有無によって手続きが大きく異なります。出国前には納税管理人を選任するかどうかの決定、選任する場合の出国日までの届出書提出、選任しない場合の出国日までの準確定申告を確実に行う必要があります。出国後も、国内源泉所得の発生有無の確認、源泉徴収税額の還付可能性の検討、租税条約の軽減措置の適用可否の確認が重要なポイントになります。非居住者の確定申告は居住者の場合とは異なるルールが適用されるため、専門的な知識が必要になります。適用できる所得控除が限定されている点、e-Taxが利用できない点など、実務上の注意点も多くあります。

弊社では、UAEに移住された方や、日本に不動産等の資産を残して海外で事業を行っている方の確定申告をサポートしております。税理士が納税管理人となることで、申告書の作成から提出、納税まで一貫してお任せいただくことが可能です。国際税務に関するご相談や、非居住者の確定申告についてお困りの方は、当会計事務所までお気軽にお問い合わせください

根拠条文・出典

  • 所得税法第161条(国内源泉所得)
  • 所得税法第164条〜第166条(非居住者に対する課税の方法)
  • 所得税法第165条(非居住者の所得控除の範囲:雑損・寄附金・基礎控除)
  • 所得税法第212条・第213条(非居住者等に対する源泉徴収)
  • 所得税法第127条(年の中途で出国をする場合の確定申告:準確定申告)
  • 国税通則法第117条(納税管理人の届出)
  • 租税特別措置法第41条の16の2(令和7年分以後の基礎控除等の特例:居住者のみ加算適用)
  • 日UAE租税条約第10条・第11条・第12条(配当・利子・使用料の限度税率、2014年12月24日発効)

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 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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