【朗報】オマーンの10年ゴールデンビザ新設！そのメリットとデメリットについて解説

オマーンが2025年8月31日に新しいゴールデンレジデンシープログラムを正式に開始しました。この10年間有効の長期居住ビザは、投資家や起業家を対象としたもので、オマーン2040ビジョンの一環として経済多様化を推進する目的で導入されています。

UAE（アラブ首長国連邦）のゴールデンビザに続く形で、GCC諸国内での長期ビザ競争が激化する中、オマーンの10年ビザはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。特に税務や法務の観点から、日本からの移住を検討している方々に向けて詳しく解説します。

オマーンの10年ビザとは

オマーンのゴールデンレジデンシープログラムは、外国人投資家や起業家に対して10年間の長期居住権を付与する制度です。従来は50万オマーンリアル（約1億3800万円）の投資が必要でしたが、新制度では最低投資額が20万オマーンリアル（約5500万円）に引き下げられました。

このプログラムは商業・産業・投資促進省の管轄下で運営され、Migrate Worldという政府公認のパートナーを通じて申請が可能です。

投資要件と申請ルート

オマーンの10年ビザを取得するには、以下の7つの投資ルートのいずれかを満たす必要があります。現実的には不動産購入ルートで取得される方が多いものと思われます。

オマーンの10年ビザのメリット

1. 低コストでの長期居住権

UAEのゴールデンビザと比較すると、オマーンは生活費が約43%安いとされています。特に住宅費は約71%も低く、ドバイで月額6,000～10,000ディルハム（約24万～40万円）かかる1ベッドルームのアパートが、マスカットでは200～350オマーンリアル（約7.6万～13万円）程度で借りられます。

長期的な視点で考えると、ビザ取得のための投資額だけでなく、日常生活のコストも大きな要素となるため、オマーンの低コストは大きなメリットです。

2. 家族全員をカバーする包括的なビザ

オマーンの10年ビザの大きな特徴は、家族に対する柔軟な対応です。配偶者と子供を年齢制限なしで帯同できる点が、他国のプログラムと比較して優れています。

さらに、最大3名の家事労働者を雇用でき、親族に対する訪問ビザの発行も可能です。家族全体でのライフスタイルを考えると、この包括性は非常に価値があります。

3. ビジネス環境と税制優遇

オマーンは2024年のビジネス・投資環境ランキングで世界21位にランクインしており、安定した経済基盤を持っています。法人税率は15%とUAEの9%より高いものの、フリーゾーンでは30年間の法人税免除が適用されます。

また、現時点では個人所得税が存在しないため、給与所得や事業所得に対する課税はありません。ただし、2028年1月からは年間所得が4万2,000オマーンリアル（約1,190万円）を超える個人に対して5%の個人所得税が導入される予定です。

4. 税務上の居住者

オマーンに年間183日以上滞在することで、オマーンの税務居住者として認定されます。日本とオマーンの間には租税条約が締結されているため、二重課税を回避することが可能です。

租税条約により、配当に対する源泉徴収税率は5%（10%以上の持株要件あり）、その他は10%、利子については政府関連は免税で、その他は10%、ロイヤリティは10%と定められています。

5. 空港での優先レーン

ゴールデンビザ保有者は、空港や国境での専用ファストトラックレーンを利用できます。頻繁に国際移動をするビジネスパーソンにとって、このサービスは時間的なメリットが大きいです。

6. 追加の不動産購入権

ITC地域外での不動産購入権も付与されます。法律で定められた制限内であれば、居住用、商業用、工業用の不動産を所有でき、譲渡権も保有できます。

7. オマーンパスポートの取得可能性

オマーンの居住者となることで、長期的にはオマーン国籍の取得可能性も開かれます。オマーンパスポートは2025年時点で世界56位にランクされ、88カ国にビザなしまたはアライバルビザで渡航可能です。

中国、ロシア、マレーシア、シンガポール、トルコなどの主要国にビザなしで入国できる点は、ビジネス展開において大きなアドバンテージとなります。

オマーンの10年ビザのデメリット

オマーンのゴールデンビザのデメリットというわけではないですが、UAEと比較した場合のオマーン自体の懸念やリスクも存在します。たとえば以下のようなものが考えられます。

1. 経済規模と市場の小ささ

オマーンの最も大きなデメリットは、経済規模がUAEに比べて小さいことです。人口は約450万人とドバイだけでも約350万人いるUAEと比較すると市場規模が限定的です。

ビジネスチャンスやネットワーキングの機会を考えると、UAEの方が圧倒的に有利な環境にあります。特にテクノロジーやスタートアップのエコシステムは、ドバイやアブダビに大きく後れを取っています。

2. インフラとグローバル接続性の不足

UAEはドバイ国際空港やアブダビ国際空港を擁し、世界中への直行便が豊富にあります。一方、オマーンのマスカット国際空港は接続性の面で劣っており、主要都市への直行便が限られています。

物流インフラについても、UAEは世界有数の港湾施設とフリーゾーンを持っていますが、オマーンはこの点でも発展途上です。

3. 2028年からの個人所得税導入

現在は個人所得税がありませんが、2028年1月から年間所得4万2,000オマーンリアル以上の個人に対して5%の個人所得税が導入されます。GCC諸国で初めての個人所得税導入となり、高所得者にとっては税務負担が増加します。

ただし、教育費、医療費、ザカート（喜捨）、寄付金、主たる住居の売却益などについては控除や免除が認められる予定です。また、外国で稼得した所得については18カ月間の免除期間が設けられています。

4. 医療と教育の質

オマーンの医療水準は向上していますが、UAEのような世界クラスの医療施設は限られています。Royal Hospital、Sultan Qaboos University Hospital、Khoula Hospitalなどの公立病院は充実していますが、高度な専門治療が必要な場合はUAEや日本への渡航が必要となることもあります。

教育面では、インターナショナルスクールの選択肢がUAEに比べて少なく、学費もマスカットで年間2,500～12,500オマーンリアル（約71万～355万円）程度と決して安くはありません。ドバイでは年間30,000～70,000ディルハム（約120万～280万円）かかることを考えると、コストは低いものの、選択肢の幅はUAEに劣ります。

5. 法人税率の高さ

オマーンの標準法人税率は15%であり、UAEの9%と比較すると6%高くなっています。年間の課税所得が大きい場合、この差は無視できない金額となります。

フリーゾーンでは30年間の法人税免除がありますが、フリーゾーン外での事業展開を考えている場合は、この税率差を考慮する必要があります。

オマーンとUAEの比較

オマーンとUAEのどちらが適しているかは、個人の目的によって異なります。

UAEは、グローバルな露出、ネットワーキング、確立されたビジネスエコシステムを求める方に最適です。スタートアップや国際的なプロジェクトを展開する場合、ドバイやアブダビの環境は非常に魅力的です。

一方、オマーンは長期的な定住、手頃な生活費、成長市場での先行者利益を求める方に適しています。生活の質を重視し、落ち着いた環境でビジネスを展開したい方にはオマーンが向いています。

税制面では、現時点ではどちらも個人所得税がありませんが、2028年以降はオマーンで課税が始まります。ただし、課税対象は年間所得4万2,000オマーンリアル以上の約1%の高所得者のみです。

オマーン10年ビザの申請手続き

オマーンの10年ビザは、Invest in Omanプラットフォームを通じてオンラインで申請できます。政府公認のパートナーであるMigrate Worldがサポートを提供しており、申請から承認までの全プロセスをデジタルで完結できます。

申請に必要な書類

• 有効なパスポート：残存有効期間6カ月以上
• 投資証明書類：不動産の所有権証書、会社の登記書類、銀行の預金証明書、株式・債券の保有証明など
• 無犯罪証明書と健康診断書
• 家族関係書類：家族を帯同する場合、婚姻証明書、出生証明書など

申請要件

21歳以上であること、純資産が20万オマーンリアル以上であることなどの条件を満たす必要があります。

申請プロセスは完全にデジタル化されており、専任のリレーションシップマネージャーがサポートしてくれます。審査期間は通常1～3カ月程度で、承認されれば10年間有効のレジデンスカードが発行されます。

まとめ

オマーンの10年ビザは、UAE のゴールデンビザと比較して、より低コストで長期居住権を取得できる魅力的な選択肢です。特に生活費の安さ、家族に対する柔軟な対応、税制優遇措置などは大きなメリットとなります。

オマーンの10年ビザに興味がある方、または移住に際して税務・法務面で不安がある方は、国際税務に精通した専門家に相談することをお勧めします。当会計事務所では、オマーンをはじめとするGCC諸国への移住サポート、法人設立支援、税務コンサルティングを提供しております。お気軽にお問い合わせください。