UAE-日本間の国際貨物VAT実務|ゼロ税率・輸入関税・仕入税額控除のポイントを整理

投稿:2025年11月26日更新:2026年5月30日ブログ

ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。

日本とUAE間で貿易を行う企業にとって、国際貨物に対するVAT(付加価値税)・消費税の取扱いは非常に重要なテーマです。両国間の輸出入では、どの場面でVATが課税されるのか、ゼロ税率が適用される条件は何か、そして国内輸送区間がどう扱われるのかを正確に理解しておく必要があります。本記事では、UAE VAT法と日本の消費税法の両面から、国際貨物にかかる税務の考え方と実務上のポイントを、国際税務の専門家の視点から整理して解説します。

1. 国際輸送に対する課税の基本的な考え方

国際輸送に対する課税については、日本とUAEの両国で「仕向地主義(Destination Principle)」という共通の考え方が採用されています。仕向地主義とは、商品が最終的に消費される国で課税する原則であり、OECDのVAT/GST International Guidelinesにおいても国際的なスタンダードとされています。

そのため、輸出される商品には輸出元の国では消費税やVATを課さず、輸入される商品には輸入先の国で課税を行います。この原則により、国境を越える貨物については、輸出側でゼロ税率(税率0%)が適用されるのが一般的です。

2. UAE側のVATの取扱い

UAEからの輸出はゼロ税率

UAEから日本への輸出貨物については、Federal Decree-Law No. 8 of 2017(UAE VAT法)第45条およびCabinet Decision No. 52 of 2017(VAT Executive Regulations)第34条により、国際輸送サービスはゼロ税率(0%)の対象となることが明確に規定されています。これには、UAEから出発する貨物、UAEに到着する貨物、UAEを経由する貨物の輸送がすべて含まれます。最新の法令本文はFTA Federal Decree-Laws一覧およびFTA Cabinet Decisions一覧から取得できます。

UAE国内区間(Domestic Leg)の取扱い

国際輸送の一環として、UAE国内での輸送区間(ドメスティック・レッグ)が発生する場合、その国内区間の扱いには注意が必要です。Cabinet Decision No. 52 of 2017第34条により、国際輸送に付随する(ancillary to)UAE国内輸送区間については、以下の条件を満たす場合に限りゼロ税率が適用されます。

条件 内容
国際輸送への付随性 国内区間が国際輸送の不可分な一部として提供されること
同一サプライヤー 国内区間と国際区間が同一の事業者(プリンシパル)によって提供されること
単一契約 全区間が一つの輸送契約でカバーされていること

これらの条件を満たせば、たとえば「ドバイ→アブダビ港のトラック輸送+アブダビ港→東京の海上輸送」を同一物流業者が一括で提供するケースでは、全区間に対してゼロ税率が適用されます。一方、契約が分かれていたり、別事業者によるサービスである場合は、UAE国内区間に標準税率5%のVATが課税されます。

3. 具体例で見るVATの取扱い

ケース1:同一事業者・単一契約(全区間ゼロ税率)

ある物流会社X社が以下の輸送を一括で請け負ったケースを考えます。

この場合、両区間が同一事業者によって単一契約で提供されているため、ドバイ→アブダビ間の国内区間を含む全区間がゼロ税率の対象となります。

ケース2:複数事業者・別契約(分割課税)

区間 契約形態 VAT税率
ドバイ→アブダビ A社と個別契約 5%
アブダビ→東京 B社と個別契約 0%

A社が提供するドバイ→アブダビ間は独立した国内輸送とみなされ、5%のVATが課税されます。B社の国際区間はゼロ税率です。実務的には、輸入者・輸出者が複数業者を組み合わせる場合、国内区間のVATコストが想定外に発生するため、契約設計の段階で「フォワーダーがプリンシパルとして全区間を一括契約する形態」を選ぶことがVATコスト削減の鍵となります。

4. UAE輸入時のVATと関税

日本からUAEへ貨物を輸出した場合、UAE側では輸入時に関税とVATが発生します。

関税(GCC共通関税)

UAEはGCC(湾岸協力会議)事務局が定める共通関税を採用しており、対外関税は原則として5%です。課税基準はCIF価格(商品価格+保険料+運賃)です。徴税・通関手続きは連邦税関当局および各首長国の税関(Dubai Customs等)が所管します。

品目 関税率
一般品目 5%
アルコール 50%
たばこ製品 100%
医薬品・特定食料品・書籍等 0%(免税)

Excise Tax(個別消費税)の区別

関税とは別に、UAEではExcise Tax(個別消費税)が課される品目があります。エナジードリンク50%、炭酸飲料50%、たばこ製品・電子たばこ・ベイプ100%、加糖飲料50%が対象です。関税・Excise Tax・VATは別個の課税であり、輸入時には重畳的に課税される点に注意が必要です。

輸入VAT

関税に加え、輸入品にはCIF価格+関税額に対して5%のVATが課税されます。FTA(連邦税務庁)VAT公式ページに登録済みの事業者は、輸入時に支払ったVATを仕入税額控除(Input Tax Credit)として申告でき、リバースチャージメカニズムを通じてVAT申告書上で精算されます。

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UAE VAT制度の全体像についてはUAE VAT制度完全ガイドをご覧ください。

UAE法人税との関係についてはUAE法人税の実務をご覧ください。

輸入サービスのリバースチャージ実務はUAE VATリバースチャージメカニズム解説もあわせてご参照ください。

5. Designated Zone経由の場合の特例

輸送先がUAE本土ではなく、Jebel Ali Free Zone(JAFZA)等のDesignated Zone(指定ゾーン)である場合、VAT上はUAE領土外として扱われるため、海外からDesignated Zoneへの輸入には輸入VATが発生しません。これは物流ハブとしてUAEを活用する企業にとって重要なポイントです。

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Designated Zoneの詳細についてはUAE Designated Zoneとはをご覧ください。

6. 日本側の消費税の取扱い

日本からの輸出は輸出免税

日本からUAEへの輸出貨物については、国税庁 タックスアンサー No.6551(輸出免税)に整理されている消費税法第7条により、輸出免税が適用され税率は0%となります。輸出免税の対象となる主な取引は以下のとおりです。

仕入税額控除と還付

輸出免税取引は売上に消費税がかからないだけでなく、その輸出のために国内で支払った消費税については仕入税額控除を受けることができます。控除しきれない場合には差額が還付金として戻ってきます。これは輸出事業者にとって大きなキャッシュフロー上のメリットです。

国際輸送の一環としての国内区間

日本においても、国際輸送の一環として行われる国内輸送区間については、消費税法基本通達7-2-1により、「一の契約により」「国際輸送として行われる」ものに限り輸出免税の対象となります。

輸送区間 免税条件
保税地域への搬入前の国内輸送 一の契約により国際輸送の一環として行われることが書面で確認できる場合は免税
保税地域内での荷役・保管 免税
輸入許可後の国内輸送 課税(国内取引として扱う)

インボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応

2023年10月開始の国税庁 インボイス制度特設サイトに示されているとおり、適格請求書等保存方式の下では、国内仕入に係る消費税の仕入税額控除を受けるために、適格請求書発行事業者(インボイス登録事業者)からの適格請求書の保存が必要です。輸出事業者であっても、国内仕入分の還付を受けるためには適格請求書の整備が不可欠です。

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UAE VATの基礎を最初から押さえたい方はUAE VATの基礎知識をご覧ください。

7. UAEと日本の輸出免税の比較

項目 UAE 日本
輸出貨物の税率 0%(ゼロ税率) 0%(輸出免税)
国際輸送サービス 0%(Cabinet Decision No. 52 of 2017 Art.34) 免税(消費税法第7条)
国内区間の取扱い 同一事業者・単一契約で0% 一の契約により国際輸送として行われる場合は免税
仕入税額控除の還付 可能(FTA登録事業者) 可能(インボイス制度に基づく書類整備が必要)
登録閾値 強制:AED 375,000(約1,612万円)/任意:AED 187,500(約806万円) 基準期間の課税売上1,000万円超で課税事業者

※AED円換算は1AED=43円(2026年5月時点)で算定しています。

8. 保存すべき証拠書類

UAE FTAおよび日本の消費税法上、ゼロ税率や輸出免税を適用するためには、適切な証拠書類の保存が求められます。FTA Public Clarifications一覧および日本税関の通関要件に基づき、両国共通で保存すべき主な書類は以下のとおりです。

これらの書類は最低5年間(UAE)/7年間(日本)の保存が義務付けられており、税務調査時に提示できないとゼロ税率・輸出免税の遡及否認、追徴課税、ペナルティの対象となります。

9. 実務上の注意点

注意点① フォワーダー契約の設計

UAE国内区間のVAT 5%を回避するため、フォワーダーをプリンシパルとして全区間を一括契約する形態(NVOCC契約・複合運送契約等)が最も効率的です。複数業者を別契約で組み合わせると国内区間に5% VATが発生するため、トータルコスト比較で評価する必要があります。

注意点② Designated Zoneの活用

UAEを地域物流ハブとして活用する場合、Designated Zone(JAFZA・DAFZA等)を経由することで、輸入VATの繰延・回避が可能です。再輸出ビジネスでは特に有効な選択肢となります。

注意点③ 日本側のインボイス制度対応

2023年10月のインボイス制度導入以降、日本側で輸出免税の還付を受けるためには、国内仕入分について適格請求書(インボイス)の保存が必須です。輸出取引であっても国内仕入分の還付要件は厳格化されているため、取引先が適格請求書発行事業者であるかの確認が必要です。

注意点④ JETRO等の支援機関活用

UAE-日本間の貿易実務には、JETRO UAEビジネス情報の貿易・投資相談、各種ジャパンデスクなど多数の支援機関があります。初めての貿易取引では、これらの公的支援も活用しながら、税務・通関・法務の専門家と連携することが推奨されます。

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最後の章. まとめ

📋 UAE-日本間国際貨物VAT実務のポイント

  • 両国とも仕向地主義に基づき、輸出はゼロ税率(UAE)/輸出免税(日本)
  • UAE国内区間も同一事業者・単一契約なら全区間ゼロ税率(Cabinet Decision No. 52 of 2017 Art.34)
  • 契約が分かれていれば国内区間に5% VATが課税される
  • UAE輸入時はCIF価格に対するGCC共通関税(標準5%、品目により異なる)+5% VAT
  • 関税・Excise Tax・VATは別個の課税で、輸入時に重畳的に発生
  • Designated Zone経由なら輸入VATが発生しない
  • 日本側は消費税法第7条・基本通達7-2-1に基づき輸出免税、仕入税額控除で還付可能
  • 日本側は2023年10月のインボイス制度対応が還付要件として必須
  • 輸送契約書・B/L・税関申告書等の書類保存はUAE5年・日本7年

UAE-日本間の国際貨物にかかるVAT・消費税の実務は、両国の制度を横断的に理解した上で、契約設計・拠点選定・書類整備を一体的に進める必要があります。特にUAE国内区間のVAT、Designated Zoneの活用、日本のインボイス制度対応は、適切に対応すれば大きなコスト削減・還付メリットを享受できる領域です。逆に対応を誤ると、遡及的な追徴課税・延滞税・ペナルティのリスクに直結します。

当事務所では、UAE-日本間の貿易税務、VAT・関税・法人税の最適化、Designated Zone活用、インボイス制度対応まで一貫してサポートしております。日本・UAE間の貿易における税務についてご不明な点がありましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。

岡本

根拠法令・参考資料

※本記事は2026年5月時点の情報に基づき作成しています。法令・実務運用は変更される可能性があるため、最新の公式情報のご確認、または当事務所までご相談ください。AED換算は1AED=43円(2026年5月時点)。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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