Designated Zoneとは?UAEのVAT・関税優遇を国際税務の専門家が解説

投稿:2025年11月26日更新:2026年5月30日ブログ

ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。

UAEでビジネスを展開する方にとって「フリーゾーン」は馴染み深い言葉ですが、その中でも特別なVAT・関税優遇を受けられるDesignated Zone(指定ゾーン)については、混同や誤解が見られるのが実情です。「DMCCはDesignated Zoneですか?」「フリーゾーンならVATはかかりませんよね?」というご質問もよくいただきます。本記事では、Designated Zoneの定義から、VAT・関税・法人税における優遇措置、そして実務上の注意点まで、国際税務の専門家の視点から整理して解説します。

1. Designated Zoneとは何か

Designated Zoneとは、Cabinet Decision No. 59 of 2017(およびその後の改定閣議決定)によって指定された特定のフリーゾーンを指します。通常のフリーゾーンとの最大の違いは、VATの目的上、UAEの領土外(outside the State)として扱われる点にあります。閣議決定本文はFTA Cabinet Decisions一覧から取得できます。

「すべてのフリーゾーン=Designated Zone」ではない

日本人にも人気の以下のフリーゾーンは、Designated Zoneには含まれていません

これらのフリーゾーンでは、通常のUAE本土と同様に5%のVATが適用されます。フリーゾーン選定の際は、VAT上のDesignated Zone該当性が事業モデルに与える影響を必ず確認する必要があります。

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フリーゾーン選定の全体像については2026年最新版 ドバイのおすすめフリーゾーン10選をご覧ください。

2. Designated Zoneとして認められるための要件

Designated Zoneとして扱われるためには、閣議決定のリストに掲載されているだけでなく、Federal Decree-Law No. 8 of 2017(UAE VAT法)第51条およびFTA Public Clarification VATP012に基づき、以下の条件を満たしている必要があります。VATP012の最新版はFTA Public Clarifications一覧から取得できます。

条件 内容
フェンスで囲まれた区域 明確に境界が定められた地理的エリアであること
セキュリティ・税関管理 人や物品の出入りを監視するセキュリティ措置と税関管理が整備されていること
内部手続きの整備 区域内での物品の保管・管理・加工に関する手続きが整備されていること
FTAの規則遵守 ゾーンの運営者がFTA(連邦税務庁)の定める手続きに従うこと

これらの条件をすべて充足した場合に、当該区域はVATの目的上「UAE領土外」として扱われます。

3. UAEにおけるDesignated Zoneの一覧

2026年5月時点でUAE閣議決定に基づき指定されているDesignated Zoneは以下のとおりです。

首長国 指定ゾーン名
アブダビ Khalifa Port Free Trade Zone
Abu Dhabi Airport Free Zone
Khalifa Industrial Zone(KIZAD)
Al Ain International Airport Free Zone
Al Bateen Executive Airport Free Zone
ドバイ Jebel Ali Free Zone(North-South)
Dubai Cars and Automotive Zone(DUCAMZ)
Dubai Textile City
Al Quoz Free Zone Area
DAFZA Industrial Park Free Zone – Al Qusais
Dubai Aviation City
Dubai Airport Free Zone(DAFZA)
International Humanitarian City – Jebel Ali
Dubai CommerCity
シャールジャ Hamriyah Free Zone
Sharjah Airport International Free Zone
アジュマーン Ajman Free Zone
ウム・アル・カイワイン Ahmed Bin Rashid Port Free Trade Zone
Sheikh Mohammed Bin Zayed Road Free Trade Zone
ラス・アル・ハイマ RAK Port Free Zone
RAK Maritime City Free Zone
Al Hamra Industrial Zone
Al Ghail Industrial Park
Al Hulaila Industrial Zone
フジャイラ Fujairah Free Zone
Fujairah Oil Industry Zone(FOIZ)

Designated Zoneのリストは閣議決定で随時更新されるため、実際の事業判断にあたっては最新の閣議決定およびFTA Legislation一覧の公式情報をご確認ください。

4. VATにおける優遇措置

Designated Zoneにおける物品取引(goods)には、以下のVAT上の優遇措置があります。

物品の移動に関するVAT取扱い

取引パターン VAT取扱い
UAE外からDesignated Zoneへの輸入 UAE領土外への移動として扱われ、輸入VATは発生しない
Designated Zone間の物品移動 VAT対象外(税関監督下での移動が条件)
Designated Zone内での物品供給 「消費」されない限りVAT対象外
UAE本土からDesignated Zoneへの移動 国内供給として扱われ、5%のVATが発生
Designated ZoneからUAE本土への移動 輸入として扱われ、VATが課税(通常は受領側がリバースチャージで申告)
Designated Zoneから海外への輸出 0%(ゼロレート)が適用される

「消費」(Consumption)の概念に要注意

Designated Zone内で物品が「消費」される場合、その供給はUAE国内で行われたものとみなされ、5%のVATが課税されます。FTAは「消費」を広義に解釈しており、物品の利用・適用・使用・展開・活用のすべてが含まれます。

「消費」に該当する典型例

「消費」に該当しない典型例

サービスに関するVAT取扱い

重要な点として、サービスの提供についてはDesignated Zoneの優遇措置は適用されません。Designated Zone内であってもサービスの提供場所はUAE国内として扱われ、通常の5% VATが課税されます。コンサルティング、広告、賃貸、物流サービス、IT・ソフトウェア提供など、あらゆるサービスが対象です。

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5. 関税における優遇措置

Designated Zoneは、Dubai Customs等の税関当局の運用上、GCC共通関税の領域外(保税区域)として扱われ、関税面でも大きなメリットがあります。

優遇内容 説明
輸入関税の免除 海外からDesignated Zoneへ直接輸入される物品は、関税が発生しない
再輸出時の免除 Designated Zoneから第三国へ再輸出する場合、関税は発生しない
Zone間移動の免除 Designated Zone間の物品移動には関税がかからない

ただし、Designated ZoneからUAE本土へ物品を移動させる場合は通常の輸入扱いとなり、GCC共通関税(標準5%、品目により0%・自動車50%・たばこ等100%など異なる)が課されます。製造業の原材料については、Industrial Exemption等の制度により条件付きで関税免除の申請が可能なケースもあります。

6. 法人税におけるQFZP優遇

2023年6月から導入されたUAE法人税(標準税率9%)においても、フリーゾーン企業には優遇措置があります。Federal Decree-Law No. 47 of 2022(UAE法人税法)第18条に基づき、Qualifying Free Zone Person(QFZP)の要件を満たす場合、Qualifying Income(適格所得)に対して0%の法人税率が適用されます。制度全体はUAE Ministry of Finance – 法人税ページおよびFTA Federal Decree-Laws一覧で確認できます。

QFZPの主要要件

Cabinet Decision No. 100 of 2023(Qualifying Income)およびMinisterial Decision No. 265 of 2023(Qualifying Activities and Excluded Activities)に基づくQFZPの主な要件は以下のとおりです。

※AED円換算は1AED=43円(2026年5月時点)で算定しています。

Designated ZoneとQFZP特例の関係

重要な点として、QFZPの法人税0%特例は、Designated Zoneに限らずすべてのフリーゾーンに適用されます。つまりDMCC・DIFC・ADGM・IFZAなど、VAT上のDesignated Zoneに該当しないフリーゾーンであっても、QFZP要件を満たせば法人税0%の恩恵を受けられます。Qualifying Incomeに該当しない所得については、通常の9%の法人税率が適用されます。

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7. Designated Zone所在企業のVAT登録義務

Designated Zoneに所在する企業であっても、VAT登録義務は通常のUAE企業と同様に適用されます。

登録区分 基準額
強制登録 過去12か月間または今後30日間の課税対象供給がAED 375,000(約1,612万円)を超える場合
任意登録 過去12か月間の課税対象供給または支出がAED 187,500(約806万円)を超える場合

※AED円換算は1AED=43円(2026年5月時点)で算定しています。

海外への輸出売上が100%であっても、売上高がAED 375,000を超えていればVAT登録は必要です。ただし、すべての売上がゼロ税率の場合は「Exception from VAT Registration(VAT登録免除)」を申請し承認されれば、VAT申告義務が免除されます。実務上は、輸出100%でも登録自体は行い、申告でゼロ税率を適用するパターンが一般的です。

8. Designated ZoneとNon-Designated Zoneの比較

項目 Designated Zone Non-Designated Zone(DMCC等)
VAT上の取扱い UAE領土外として扱われる UAE本土と同様
Zone内物品取引のVAT 消費されない限り対象外 5%課税
Zone間物品移動のVAT 対象外 5%課税
サービスのVAT 5%課税 5%課税
輸入関税 免除(保税区域扱い) 免除(保税区域扱い)
法人税QFZP(0%) 要件充足で適用可 要件充足で適用可

9. 実務上の注意点

注意点① サービス業はDesignated Zoneの恩恵が限定的

コンサルティング・IT・広告・賃貸等のサービス業はDesignated ZoneのVAT優遇対象外です。サービス業中心の事業者がDesignated Zone該当性のみを理由にフリーゾーンを選択するのは合理的でなく、QFZP要件充足を主軸に拠点選定するべきです。

注意点② Zone内「消費」の範囲を過小評価しない

Designated Zone内で消費される物品はVAT課税対象となるため、事務用品・水・食品・備品など日常的な経費もFTA調査で課税指摘される可能性があります。仕入税額控除との関係を含め、適切な記帳と書類整備が必須です。

注意点③ Designated ZoneリストはCabinet Decisionで随時改定

Designated Zoneのリストは、Cabinet Decision No. 59 of 2017以降、複数の改定閣議決定によって更新されています。事業計画策定時に「Designated Zoneだと聞いていた」拠点が後の改定で対象外となるリスクもゼロではないため、設立時には最新のリストをFTAおよびUAE Ministry of Financeのソースで確認することが重要です。

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まとめ

Designated Zoneは、輸出入を中心としたビジネスや物流業を営む企業にとって、VAT・関税面で大きなメリットを提供する制度です。一方で、サービス業や本土向けビジネスでは恩恵が限定的であり、「Designated Zoneだから何でもVAT非課税」という誤解は重大なペナルティにつながりかねません。事業内容に応じて、Designated Zone該当性とQFZP要件充足の両面から最適な拠点選定を行うことが重要です。

当事務所では、UAE進出時のフリーゾーン選定、Designated Zone該当性の検討、VAT・関税・法人税の最適化、QFZP要件充足のための体制構築まで、一貫してサポートしております。Designated Zoneでの事業展開や現在の税務処理に不安がある方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

岡本

根拠法令・参考資料

※本記事は2026年5月時点の情報に基づき作成しています。Designated Zoneのリストや関連法令は閣議決定により随時改定されるため、最新の公式情報のご確認、または当事務所までご相談ください。AED換算は1AED=43円(2026年5月時点)。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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