UAE VATのリバースチャージとは|輸入サービス・貴金属・電子機器の申告書記載例つき解説

投稿:2025年11月26日更新:2026年10月8日ブログ

ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。

UAEで事業を行う日本企業から多く受ける質問が、海外から仕入れたサービスや物品に対するVAT(付加価値税)の取扱いです。海外サプライヤーの請求書にVATの記載がないのになぜUAE側で5%を認識するのかは、リバースチャージメカニズム(以下「RCM」)を理解しないと処理できません。

この分野の実務は2026年に大きく動きました。VAT法の改正で2026年1月1日以後の輸入について自己宛て税額票の発行義務が撤廃され、2026年8月26日にはFTA(連邦税務庁)が過去分の物品輸入を扱うVATP045を公表しています。

リバースチャージの基本と適用対象

通常のVATは売り手が顧客から預かって納税しますが、RCMは買い手が売上VATと仕入VATの両方を自ら申告する方式です。海外サプライヤーはUAEでの登録義務を負わないため、UAE側の課税事業者に課税主体を移しています。

項目 通常VAT リバースチャージ
納税義務者 売り手 買い手(受領者)
請求書のVAT記載 あり 原則なし
申告書の記載欄 Box 1 Box 3/6/7とBox 10

非居住者かどうかは固定的施設で決まります

RCMの入口条件は、供給者がVAT上の非居住者であることです。この判定は2024年連邦法令第16号によるVAT法第1条の定義改正で明確化され、FTAが2026年9月4日発出の公開解説VATP046でも解説しています。UAEに事業所または固定的施設を有する者は、所有していなくても居住者に当たり、賃借でも顧客の敷地の一部を使っているだけでも成立し得ます。

FTAが示した設例は、外国企業の従業員がUAEの顧客先で常時勤務し業務を行っている場合です。この外国企業はUAEに固定的施設を有するためVAT上の非居住者に該当せず、受領者はRCMを適用できません。供給者側がVAT登録を行い5%を課します。受領者が誤ってRCMで処理すると、税額票のないまま控除を主張することになり仕入税額控除が否認されます。

対象となる取引

RCMの対象は、海外から受領するサービス(コンサルティング、SaaS、デジタル広告、ロイヤリティ等)と輸入物品が中心です。指定区域はVAT上UAE国外と擬制されるため、指定区域から本土への物品移転も輸入として扱われます。貴金属・宝石、電子機器、炭化水素類の国内B2B取引にも拡大されています。本文はFTAのCabinet Decisions一覧から確認できます。

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貴金属・電子機器の国内リバースチャージ

貴金属・宝石の国内B2B取引はCabinet Decision No. 127 of 2024、電子機器はNo. 91 of 2023がRCMを定めています。前者は金・銀・プラチナやダイヤモンド等と宝飾品、後者は携帯電話、コンピュータ機器、タブレットと不可欠な部品を対象とします。

適用要件は、買い手がVAT登録事業者であること、再販または製造目的で取得する旨を書面で売り手に宣言すること、売り手がその宣言書を保管することの3点です。書面宣言がなければRCMは適用されず、売り手が5%を請求します。

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輸入サービスの自己請求書義務(VATP044)

FTAは2025年5月26日にVATP044を公表し、輸入サービスを受領した際の自己宛て税額票の取扱いを明確化しました。VAT法第67条第1項により税額票は課税事象の日から14日以内の発行が必要です。

ただしVATP044により、海外サプライヤーの請求書にサプライヤー名と住所、UAE側受領者の名称・住所・TRN、発行日、供給内容、通貨と金額、RCM適用の旨が記載されていれば、自己宛て税額票の発行は不要です。

この取扱いが問題になるのは2025年12月31日以前に輸入されたサービスで、2026年1月1日以後の輸入には発行義務がありません。

物品のリバースチャージと税額票 VATP045

物品側については、FTAが2026年8月26日にVATP045を公表しました。VAT法第48条第1項により、対象物品(Concerned Goods)を輸入した課税事業者は、自らへの課税供給を行ったものとみなされ売上VATを計上します。

自己宛て税額票が不要になる要件

VATP045は2025年12月31日以前に輸入された対象物品を扱います。当時は原則として自己宛て税額票が必要でしたが、FTAは次の3点をすべて満たせば発行を求めず、例外申請も不要としました。

書類を欠く場合この取扱いは適用されません。自己宛て税額票を発行済みで調整が生じたときは、自らへの税額控除通知が必要です。

仕入税額控除を主張できるタイミング

仕入税額控除は課税供給に使用する範囲で認められ、自己宛て税額票がなくても供給者請求書と税関申告書を保管していれば控除できます。控除できるのは、証憑を入手し対価を支払った最初の課税期間か直後の課税期間です。対価は合意した支払期日から6か月以内に支払う意思がある場合も支払済み扱いです(施行規則第54条第2項)。

サービス(VATP044)との違い

両者の違いは控除の裏づけ書類です。サービスは請求書の記載要件が決め手で、物品では税関申告書が加わりBox 6との突合が中心になります。

項目 輸入サービス(VATP044) 輸入物品(VATP045)
対象期間 2025年12月31日以前の輸入 2025年12月31日以前の輸入
発行免除の鍵 サプライヤー請求書の記載事項 請求書と税関申告書の保管
申告書での確認欄 Box 3 Box 6の自動反映値とBox 7の調整

撤廃は連邦令第16号(2025年)による第48条第1項の改正によるもので、その経緯は2024年改正とあわせてFTAのVATガイド・公開解釈一覧のVATP046にまとめられています。売上VATの計上義務と証憑の保管義務は撤廃後も存続しますので、免除されたのは書類の作成だけです。

Form 201への記載方法

RCM取引は複数のBoxにまたがり誤記載が頻発します。Box 3は輸入サービスと国内RCM対象品目の売上VAT、Box 6は輸入物品(税関データから自動反映)、Box 7は調整、Box 10は仕入VATの回収欄です。

例えば輸入コンサルティングをAED 100,000(約430万円)で受領した場合、Box 3に課税標準100,000とVAT 5,000を計上し、Box 10に仕入VAT 5,000を計上して純額影響はゼロになります。ただし非課税売上に対応する仕入ではBox 10の回収が制限されます。申告期限は課税期間の翌月28日で、申告漏れは純額影響がゼロでも行政罰の対象です。

2026年改正で按分計算からRCM取引が除外されます

2026年9月1日公布の閣議決定第149号(2026年)は、残余仕入税額の按分計算を定める第55条を改正し、第7項b号としてリバースチャージで処理した取引を按分計算から除外しました。按分計算は、課税売上と非課税売上に共通する仕入VATのうち控除できる部分を割り出す計算です。RCM取引は売上VATと仕入VATが同額で相殺されるため、計算に含めると比率が実態からずれる問題がありました。あわせて算定基礎が回収可能仕入税額比から売上高比へ変わり、2027年10月1日以後に開始する課税年度から適用されます(Alvarez & Marsalの解説)。

同じ改正で第52条には、サービスの受領者がUAE国外にいるかを判定する30日間のテストが新設されました。RCMかゼロ税率かの入口判定に直結しますので、非居住者向けにサービスを提供する法人は供給期間中の滞在日数を記録に残す必要があります。

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ドバイ移住者と日本企業が押さえるべき点

日本の消費税にも特定課税仕入れというリバースチャージ方式がありますが、対象は電気通信利用役務等に限られ、課税売上割合95%以上の事業者は申告対象外です。UAEは対象が広く、全課税事業者が申告対象になります。

ドバイ移住を機に日本の会社を残したまま現地法人を立ち上げる場合は、日本側で国外転出時課税、いわゆる出国税の対象資産を洗い出し、UAE側ではVAT登録の要否とRCMの記帳体制を整える必要があります。移住直後は親会社や外部業者から役務提供を受ける機会が集中し、初回申告でBox 3の計上漏れが起きやすくなります。

裏返せば、外国企業がUAEに人を常駐させた時点で登録義務が生じ得ます。日本企業がドバイに駐在員を置き、日本本社名義で役務提供を続けている形態はこの論点に直接あたり、本社側にUAEでのVAT登録と5%課税が必要になる場合があります。ドバイ移住者が日本の法人から役務提供を受ける場合も同じです。

また、法人税の優遇を受けるフリーゾーンでもVATは別制度です。特例が認められるのは指定区域に該当する一部のフリーゾーンだけで、それ以外は本土と同じ5%課税になります。詳細はFTAのVAT公式ページで確認できます。

まとめ

📋 今回のポイント

  • RCMは買い手が売上VATと仕入VATを自ら申告する制度(第48条第1項)
  • 前提は供給者がVAT上の非居住者で、固定的施設があれば適用不可
  • 2026年1月1日以後の輸入は自己宛て税額票の発行義務が撤廃、証憑保管は存続
  • VATP045は2025年12月31日以前の物品輸入が対象、請求書と税関申告書の保管で免除
  • 仕入税額控除は証憑入手かつ対価支払の課税期間か直後の課税期間で可能
  • 国内B2Bは貴金属(CD127/2024)と電子機器(CD91/2023)で書面宣言が必須
  • 閣議決定第149号でRCM取引は按分計算から除外、第52条に30日テスト新設

当会計事務所は、UAEのVAT登録から申告書作成、RCM対象取引の判定、輸入証憑の保管体制、移住時の税務まで一体でサポートしています。過去分の輸入で自己宛て税額票が未発行のご相談も承ります。当会計事務所までお気軽にお問い合わせください。

根拠条文・出典

  • Cabinet Decision No. 149 of 2026 – VAT施行規則改正、2026年9月1日公布
  • VATP045 Concerned Goods – FTAが2026年8月26日に公表
  • FTA VATガイド・公開解説の一覧 – VATP046の掲載ページ
  • VATP046 – VAT法改正に関するFTA公開解説、2026年9月発出
  • Federal Decree-Law No. 16 of 2024 – VAT法第1条の定義改正、2024年10月30日施行
  • FTA Cabinet Decisions一覧 – No. 127 of 2024、No. 91 of 2023、No. 49 of 2021
  • FTA VAT公式ページ – VAT申告書と各種ガイド
  • Federal Decree-Law No. 8 of 2017(VAT法)第48条第1項、第54条、第55条、第67条第1項
  • Cabinet Decision No. 52 of 2017(VAT施行規則)第48条第5項、第54条第2項、第59条第7項(b)
  • Federal Decree-Law No. 16 of 2025(2026年1月1日発効のVAT法改正)

本記事は2026年9月時点の情報に基づいています。法令や実務運用は変更され得るため、最新の公式情報をご確認ください。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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