UAEゴールデンビザ|経営者10年ビザの改悪内容と2025年最新の取得要件

投稿:2025年11月29日更新:2026年5月30日ブログ

ドバイに移住を検討されている方や、すでに現地でビジネスをされている方にとって、ゴールデンビザは非常に魅力的な長期滞在許可です。特に「Executive Director(取締役・幹部役員)」カテゴリーは、不動産投資なしでも10年ビザを取得できるルートとして、多くの日本人経営者や駐在員の方に利用されてきました。

しかし、2024年後半から2025年にかけて、このカテゴリーの取得要件が大幅に厳格化されています。これまで比較的容易に取得できていたDirectorカテゴリーのゴールデンビザですが、新しい要件を満たせずに申請が却下されるケースも出てきています。本日は、この改悪された要件の詳細と、今後どのように対応すべきかについて解説していきます。

従来のDirectorゴールデンビザの要件

まず、従来のExecutive Directorカテゴリーでの10年ゴールデンビザ取得要件を確認しておきましょう。ICP(Federal Authority for Identity, Citizenship, Customs and Ports Security)の公式要件では、以下のように定められていました。

項目 要件内容
学歴 学士号以上(教育省認定の大学学位)
給与 月額基本給30,000 AED以上
給与実績 6カ月以上の当該給与受取実績
その他 有効な労働契約書、健康保険(1年以上)

このように、従来は月額基本給30,000 AED以上で、6カ月以上の給与実績があれば比較的シンプルに申請ができていました。しかし、2025年に入り、これらの要件に複数の追加条件が課されるようになっています。

2025年の改悪ポイント

2024年後半から2025年にかけて、UAE当局はExecutive Directorカテゴリーのゴールデンビザに対して、以下のような新たな要件を導入しています。

同一雇用主での2年間の勤続要件

最も大きな変更点は、「現在の雇用主のもとで2年以上継続して勤務していること」という要件が追加されたことです。

従来は、UAE国内で働いていれば、転職直後でもゴールデンビザの申請が可能でした。しかし新制度では、申請前の2年間、同一の雇用主(法人)で継続勤務していることが求められます。

例えば、UAEに来て1年半の方や、最近転職したばかりの方は、この要件を満たすことができず、申請資格を失ってしまいます。Vialto Partnersの2025年8月のレポートでも、Executive Directorカテゴリーの新要件として「現雇用主のもとで2年以上の継続勤務」が必須となった旨が確認されています。

会社の従業員数要件(フリーゾーン企業の場合)

フリーゾーンに設立された会社で働いている場合、雇用主企業が10名以上のスポンサード従業員を抱えていることが新たな条件として追加されました。

企業形態 従業員数要件
フリーゾーン企業 10名以上のスポンサード従業員が必要
メインランド企業 明確な人数要件は示されていないが、審査厳格化

これは、小規模なフリーゾーン会社(1〜2名でビジネスを行っている会社など)の取締役は、このカテゴリーでのゴールデンビザ申請ができなくなったことを意味します。いわゆる「一人会社」や「少人数のオーナー企業」で、自分自身がDirectorとしてビザを取得しようとしていた方にとっては、大きな影響があります。

NOC(無異議証明書)の発行元変更

従来、ゴールデンビザ申請に必要なNOC(No Objection Certificate)は、勤務先の会社から発行されるものでした。しかし新制度では、フリーゾーン企業の場合、会社ではなくフリーゾーン当局からNOCを取得する必要があります。

2025年1月以降、DIFC、DMCC、JAFZAなどの主要フリーゾーンでは、政府ノミネーションなしでゴールデンビザを申請する場合、各フリーゾーン当局からのNOCが必要となりました。フリーゾーンごとに手続きや必要書類が異なり、追加の手数料(DDAの場合は2,000 AED、DIFCの場合は1,000 AED)も発生します。

学位同等性認証(Equivalency Certificate)の必須化

2024年4月以降、UAE国外で取得した学位については、MOHESR(Ministry of Higher Education and Scientific Research:高等教育・科学研究省、旧MOE管轄)が発行する学位同等性認証(Equivalency Certificate)を取得することが必須となりました。なお、2025年5月の制度変更により、大学レベルの認証はMOEからMOHESRに所管が移管されています。

従来は、学位証明書のMOFA(外務省)認証のみで申請可能でしたが、新制度では学位が「国際的に認められた認定大学のものであること」を証明する追加書類が求められます。具体的には、まずDataFlow(MOHESRの認定パートナー)で学位を検証し、その後MOHESRで同等性認証を取得する2段階のプロセスを経る必要があります。これにより、申請準備にかかる時間とコストが大幅に増加しています。

給与要件について

ICPの公式サイトでも、Executive Directorカテゴリーの給与要件は月額基本給30,000 AED以上と明記されています。実務上、Skilled Professional(熟練専門職)カテゴリーとExecutive Directorカテゴリーの給与要件の区別は、現場運用では非常に曖昧になっています。

カテゴリー 給与要件 備考
Executive Director 月額基本給30,000 AED以上(6カ月以上実績) CEO、取締役、事業部長など
Skilled Professional 月額基本給30,000 AED以上(6カ月以上実績) エンジニア、医師、IT専門家など

2025年の改悪は、給与要件の引き上げではなく、代わりに勤続期間(2年以上)、会社規模(10名以上の従業員)、NOC取得先(フリーゾーン当局から)、学位認証(MOHESR同等性認証)といった付帯条件を大幅に厳格化したというのが正確な評価です。

改悪の背景と影響

今回の厳格化の背景には、ゴールデンビザの乱発を防ぎ、真に貢献度の高い人材に限定して付与するというUAE政府の方針転換があると考えられます。特に、小規模なペーパーカンパニーを設立して、形式的にDirectorの肩書を得てゴールデンビザを申請するケースが増えていたことへの対応とも言えます。

影響を受ける方の例

  • UAE進出したばかりで、まだ2年間の勤続期間がない方
  • フリーゾーンで少人数(10名未満)の会社を経営している方
  • 最近転職した方で、ゴールデンビザの申請を検討していた方
  • 自営業で会社を設立し、自らがDirectorとしてビザ取得を目指していた方

今後の対応策

改悪された要件を踏まえ、今後どのような対応が考えられるでしょうか。

不動産投資ルートの検討

Directorカテゴリーでの取得が難しくなった場合、不動産投資によるゴールデンビザ取得が有力な代替手段となります。不動産投資の場合、以下の要件を満たせば10年ゴールデンビザを取得できます。

不動産ルートは、勤続期間や従業員数の要件がないため、新規にUAE進出する方にとっては、Directorカテゴリーよりも確実なルートとなりつつあります。具体的な申請手続きはDLD(ドバイ土地局)の「Request for Golden Visa – Investor」から確認できます。

Skilled Professionalカテゴリーの検討

給与が30,000 AED以上あり、学士号以上の学位を持っている方は、Skilled Professional(熟練専門職)カテゴリーでの申請を検討することも可能です。ただし、こちらも2年間の勤続要件が以前から適用されており、要件が緩いわけではありません。

起業家ビザとの組み合わせ

将来的にゴールデンビザを目指しながら、まずは起業家(Entrepreneur)カテゴリーの5年ビザを取得し、事業基盤を固めてから切り替えるという方法もあります。起業家カテゴリーの場合、50万AED以上のプロジェクト価値があり、UAE当局から承認を受けた事業であれば申請可能です。

【根拠条文・出典】

  • UAE Federal Decree-Law No. 29 of 2021(入国・在留法)および同実施規則(Cabinet Decision No. 65 of 2022)
  • ICP「Golden Residency」公式要件
  • Vialto Partners「UAE Immigration: Employment Residence Permit and Executive Golden Visa Update」(2025年8月)
  • MOHESR学位同等性認証手続(DataFlow検証+MOHESR Recognition Certificate、2024年4月以降必須、2025年5月にMOEから移管)
  • DLD「Request for Golden Visa – Investor」公式案内

まとめ

📋 今回のポイント

  • 同一雇用主での2年間の継続勤務が必須に
  • フリーゾーン企業の場合、10名以上のスポンサード従業員が必要に
  • フリーゾーン当局からのNOC取得が必要に(DDA 2,000 AED、DIFC 1,000 AEDなど)
  • UAE国外の学位については、MOHESR発行の同等性認証が必須に(DataFlow検証+MOHESR Recognition、2025年5月にMOEから移管)
  • 給与要件そのものは従来から月額基本給30,000 AED以上で変更なし
  • 代替ルートとして、不動産投資(200万AED、頭金20%以上)が引き続き有力な選択肢

給与要件そのものは従来から変わっていませんが、これらの付帯条件が大幅に厳格化されたため、実質的にかなりハードルが上がっています。特に、小規模なフリーゾーン会社を設立して自らDirectorとしてビザを取得しようと考えていた方にとっては、このルートは事実上閉ざされたと言っても過言ではありません。

今後ゴールデンビザの取得を検討されている方は、不動産投資ルート含め、複数の選択肢を比較検討されることをお勧めします。UAE政府は税制や移民政策を頻繁に変更しますので、最新の情報を確認しながら、慎重に計画を進めていくことが重要です。

ゴールデンビザの取得要件や手続きに関してご不明な点がある方は、当会計事務所までお気軽にお問い合わせください。状況に応じた最適なビザルートをご提案させていただきます。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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