UAEゴールデンビザ|経営者10年ビザの改悪内容と最新の取得要件

投稿:2025年11月29日更新:2026年6月5日ブログ

ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。

ドバイに移住を検討されている方や、すでに現地でビジネスをされている方にとって、ゴールデンビザは非常に魅力的な長期滞在許可です。特にExecutive Director(取締役・幹部役員)カテゴリーは、不動産投資なしでも10年ビザを取得できるルートとして、多くの日本人経営者や駐在員の方に利用されてきました。

しかし、2024年後半から2025年にかけて、このカテゴリーの取得要件は大幅に厳格化されています。これまで比較的容易に取得できていたDirectorカテゴリーのゴールデンビザですが、新しい要件を満たせずに申請が却下されるケースも出てきています。本記事ではこの改悪された要件の詳細と、今後どのように対応すべきかについて解説します。

現行のDirectorゴールデンビザの要件

まず、Executive Directorカテゴリーでの10年ゴールデンビザ取得要件をICP公式情報で確認します(Federal Authority for Identity, Citizenship, Customs and Ports Security (ICP)「Golden Residency」公式)。

項目 現行要件(ICP公式)
学歴 学士号以上(Attested university degree、認証済学位)
給与 月額基本給 50,000 AED以上(約215万円・1AED=43円換算)
経験 最低 5年以上 の職務経験
その他 有効な労働契約書、給与証明書(Salary Certificate)

従来は給与30,000 AED・経験6カ月程度といった旧情報がネット上に広く出回っていますが、ICP公式の最新要件は50,000 AED・5年以上の経験に引き上げられています。これに加えて、2024年後半から複数の付帯条件が新たに課されるようになっています。

関連記事:UAEゴールデンビザの基礎

2025年改悪ポイント

2024年後半から2025年にかけて、UAE当局はExecutive Directorカテゴリーのゴールデンビザに対して、以下の新たな要件を導入しています。

給与要件の引き上げ(30,000→50,000 AED)

従来広く認識されていた月額基本給30,000 AED水準から、50,000 AED(約215万円)以上へと実質的に引き上げられました。給与は基本給ベース(手当除外)であり、給与振込実績で証明する必要があります。

同一雇用主での2年間の勤続要件

大きな変更点として、「現在の雇用主のもとで2年以上継続して勤務していること」という要件が追加されました。従来はUAE国内で働いていれば転職直後でもゴールデンビザの申請が可能でしたが、新制度では申請前の2年間、同一の雇用主(法人)で継続勤務していることが求められます。

例えば、UAEに来て1年半の方や、最近転職したばかりの方は、この要件を満たすことができず申請資格を失います(Vialto Partners「UAE Immigration: Executive Golden Visa Update」)。

会社の従業員数要件(フリーゾーン企業の場合)

フリーゾーンに設立された会社で働いている場合、雇用主企業が10名以上のスポンサード従業員を抱えていることが新条件として追加されました。

企業形態 従業員数要件
フリーゾーン企業 10名以上のスポンサード従業員が必要
メインランド企業 明確な人数要件は示されていないが、審査の厳格化が進む

これは、小規模なフリーゾーン会社(1〜2名でビジネスを行っている会社など)の取締役は、このカテゴリーでのゴールデンビザ申請ができなくなったことを意味します。いわゆる「一人会社」や「少人数のオーナー企業」で、自分自身がDirectorとしてビザを取得しようとしていた方にとっては大きな影響があります。

NOC(無異議証明書)の発行元変更

従来、ゴールデンビザ申請に必要なNOC(No Objection Certificate)は勤務先の会社から発行されるものでした。しかし新制度では、フリーゾーン企業の場合、会社ではなくフリーゾーン当局からNOCを取得する必要があります。

2025年1月以降、DIFC、DMCC、JAFZAなどの主要フリーゾーンでは、政府ノミネーションなしでゴールデンビザを申請する場合、各フリーゾーン当局からのNOCが必要となりました。フリーゾーンごとに手続きや必要書類が異なり、追加の手数料(DDAの場合は2,000 AED、DIFCの場合は1,000 AED)も発生します。

学位同等性認証(Equivalency Certificate)の必須化

2024年4月以降、UAE国外で取得した学位については高等教育・科学研究省(MOHESR)発行の学位同等性認証(Qualification Recognition)を取得することが必須となりました。2025年5月の制度変更により、大学レベルの認証はMOEからMOHESRに所管が正式移管されています(DataFlow「UAE’s MOHESR Introduces Simplified Recognition Process」(2025年5月))。

従来は学位証明書のMOFA(外務省)認証のみで申請可能でしたが、新制度では学位が「国際的に認められた認定大学のものであること」を証明する追加書類が求められます。具体的には、まずDataFlow(MOHESR認定パートナー)で学位を検証し、その後MOHESRでQualification Recognition Reportを取得する2段階のプロセスを経る必要があります。これにより、申請準備にかかる時間とコストが大幅に増加しています。

改悪の背景と影響

今回の厳格化の背景には、ゴールデンビザの乱発を防ぎ、真に貢献度の高い人材に限定して付与するというUAE政府の方針転換があると考えられます。特に小規模なペーパーカンパニーを設立して、形式的にDirectorの肩書を得てゴールデンビザを申請するケースが増えていたことへの対応とも言えます。

影響を受ける方の例

  • UAE進出したばかりで、まだ2年間の勤続期間がない方
  • フリーゾーンで少人数(10名未満)の会社を経営している方
  • 最近転職した方で、ゴールデンビザの申請を検討していた方
  • 自営業で会社を設立し、自らがDirectorとしてビザ取得を目指していた方
  • 給与水準が30,000〜49,999 AED帯にある方(50,000 AED未満は対象外)

今後の対応策

改悪された要件を踏まえ、今後どのような対応が考えられるでしょうか。

不動産投資ルートの検討

Directorカテゴリーでの取得が難しくなった場合、不動産投資によるゴールデンビザ取得が有力な代替手段となります。不動産投資の場合、以下の要件を満たせば10年ゴールデンビザを取得できます。

不動産ルートは、勤続期間や従業員数の要件がないため、新規にUAE進出する方にとってはDirectorカテゴリーよりも確実なルートとなりつつあります。具体的な申請手続きはDLD(ドバイ土地局)「Request for Golden Visa – Investor」から確認できます。

Skilled Professionalカテゴリーの検討

給与が30,000 AED以上あり学士号以上の学位を持っている方は、Skilled Professional(熟練専門職)カテゴリーでの申請を検討することも可能です。エンジニア、医師、IT専門家などが対象で、Executive Directorよりも給与要件が緩く設定されています。ただし、こちらも2年間の勤続要件など審査の厳格化が進んでいます。

起業家ビザとの組み合わせ

将来的にゴールデンビザを目指しながら、まずは起業家(Entrepreneur)カテゴリーの5年ビザを取得し、事業基盤を固めてから切り替える方法もあります。起業家カテゴリーの場合、50万AED以上のプロジェクト価値があり、UAE当局から承認を受けた事業であれば申請可能です。

関連記事:UAE移住の基本ガイド

まとめ

📋 今回のポイント

  • Executive Directorカテゴリーの現行給与要件は月額基本給50,000 AED以上(ICP公式)、経験年数は5年以上
  • 同一雇用主での2年間の継続勤務が必須に。転職直後・進出直後は申請不可
  • フリーゾーン企業の場合、10名以上のスポンサード従業員が必要に
  • フリーゾーン当局からのNOC取得が必要に(DDA 2,000 AED、DIFC 1,000 AEDなど追加手数料発生)
  • UAE国外の学位については、MOHESR発行のQualification Recognitionが必須(DataFlow検証+MOHESR認証の2段階、2025年5月にMOEから所管移管)
  • 代替ルートとして、不動産投資(200万AED、頭金20%以上)が引き続き有力な選択肢

給与要件・勤続要件・会社規模要件・学位認証要件が同時に厳格化されたため、実質的にかなりハードルが上がっています。特に、小規模なフリーゾーン会社を設立して自らDirectorとしてビザを取得しようと考えていた方にとっては、このルートは事実上閉ざされたと言っても過言ではありません。

当会計事務所は、UAE移住・ビザ取得・法人設立をワンストップでサポートしております。ゴールデンビザの取得要件や手続き、不動産投資ルート、起業家ビザとの組み合わせなどについてご不明な点がある方は、状況に応じた最適なビザルートをご提案しますので、お気軽にご相談いただくことをおすすめします。

【根拠条文・出典】

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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