ドバイ法人の経費計上|日本語領収証は保存OK?UAE税法上の言語ルールと実務対応

投稿:2025年11月29日更新:2026年5月29日ブログ

ドバイで法人を経営されている方や、フリーランスとして活動されている方から、「日本出張時の領収証」や「日本のECサイトで購入した物品の請求書」の扱いについて、非常によくご相談をいただきます。

「日本の領収証は日本語で書かれていますが、そのままドバイの会計に使っていいのでしょうか?」
「わざわざ英語に翻訳しないといけないのでしょうか?」

結論から申し上げますと、「日本語のままで保存しても問題はありませんが、会計ソフトへの入力と監査対応には工夫が必要」です。今回は、UAE(アラブ首長国連邦)の税務手続法および法人税法に基づき、日本語の領収証を経費にするための正しいルールと実務的な対応策について解説します。

法律上の言語ルール

まず、UAEの税務当局(FTA:Federal Tax Authority)が定めている「帳簿保存の言語」に関するルールを確認しましょう。連邦税務手続法(Federal Decree-Law No. 28 of 2022 on Tax Procedures)第5条および施行令(Cabinet Decision No. 74 of 2023)で、以下のように規定されています。

対象 言語ルール
アラビア語 原則。UAE公用語のため、税務関連書類の原則言語。
英語 実務上、FTAは英語での記録・保存を認めている。
日本語など 当局から要請があった場合には、アラビア語の正式認証翻訳を期限内に提出しなければならない。

つまり、「日本語の領収証を持っていること自体は違法ではないが、税務調査が入ったときに、調査官が読める状態(英語またはアラビア語)にして説明できなければならない」というのが正確な解釈です。

当然ですが、UAEの税務調査官は日本語を理解していません。「お品代」や「接待交際費」と書かれていても、それがビジネスに必要な経費なのか、個人的な買い物なのかを判別できないためです。

そのため、「日本語の領収証をただファイルに挟んでおくだけ」では、否認される(経費として認められない)リスクが高まります。なお、2026年4月に施行された施行規則改正(Cabinet Decision No. 17 of 2026)でも、英語での記録保存が認められること、およびFTAがアラビア語翻訳を要請できることが明確化されています。

実務的な処理方法

では、すべての日本の領収証を英訳して添付する必要があるのでしょうか?数枚ならまだしも、大量にある場合は現実的ではありません。弊所では、以下の3ステップでの管理を推奨しています。

ステップ1:会計ソフトへの入力は「英語」で行う

領収証自体が日本語であっても、会計ソフト(Xero, QuickBooks, Zoho Booksなど)に入力する際のDescription(摘要欄)は必ず英語で記載してください。

❌ 悪い例

Expenses in Japan(これでは内容が不明なためNG。日本と同様)

✅ 良い例

Dinner with client Mr. Sato regarding marketing strategy in Tokyo(誰と、何のために、どこで使ったかが明確です)

会計データ自体が「英語の明細書」の役割を果たすようにしておくことが、第一の防衛線です。

ステップ2:領収証の余白にメモ書きをする

紙の領収証であれば余白に、デジタルの領収証であればPDFのコメント機能で、「英語のメモ」を残しておくと安心です。

英語メモの例

  • Meeting / Dinner(会議費・会食)
  • Office Supplies(事務用品)
  • Taxi(交通費)
  • Software Subscription(ソフトウェア月額料金)

これをしておくだけで、万が一の税務調査の際、翻訳業者に依頼するコストと時間を大幅に削減できます。

ステップ3:正式な翻訳は「要請されてから」でOK

最初から全てを法廷翻訳(Legal Translation)する必要はありません。税務調査が入り、特定の取引について「この日本語の書類は何だ? 正式な翻訳を出せ」と言われた時点で翻訳すれば足ります。日々の記帳段階では、ステップ1とステップ2で十分です。

ただし、FTAから翻訳要請があった場合は、施行令で定められた期限内に提出する義務があり、提出を怠ると行政罰の対象(Tax Procedures Law第24条)となりますので、要請があった場合は速やかに対応してください。

VATと法人税で扱いが違う

ここが非常に重要なポイントですが、「VATの還付(Input VAT Recovery)」と「法人税の経費(Deductible Expenses)」では、求められる要件の厳しさが異なります。

項目 日本の領収証の扱い 理由
UAE VAT 還付不可 日本の消費税はUAEのVATではないため。また、UAEのTRN(登録番号)が記載されていないため。
UAE 法人税 経費計上可能 ビジネスに関連する費用であれば、海外で発生した費用も利益から控除できます。

日本の消費税はコストになる

日本の領収証に含まれる10%の消費税は、UAEでは「税金」として取り扱われません。単なる「経費の一部(コスト)」として処理します。UAEのVAT申告(VAT Return)で、日本の消費税を「仕入税額控除」としてマイナスすることはできませんのでご注意ください。

日本円レシートの為替換算ルール

会計帳簿はAED(ディルハム)で作成する必要があります。日本円の領収証を計上する際のレートは、以下のルールに従います。

取引日のUAE中央銀行レートを使用する

  • 原則として、その経費を支払った日(Transaction Date)のUAE中央銀行(Central Bank of UAE)の公定為替レートを使用します。VAT法第69条および法人税の会計実務(IAS 21)に基づく要件です。
  • 実務上、クレジットカードの明細に記載された「AED換算後の引落金額」をそのまま経費計上することも、中小企業の経費処理としては一般的です(監査上、重要性の原則に照らして許容されるケースが多いです)。

ただし、厳密な監査対応を求めるのであれば、「取引日の公定レート」で換算し、実際の決済額との差額を「為替差損益」として処理するのが最も正確な会計処理です。

証憑の保存期間と形式

UAE法人税法およびVAT法において、記録の保存期間は厳格に定められています。2026年4月施行の改正施行規則(Cabinet Decision No. 17 of 2026)で一部の取扱いが明確化されています。

記録の種類 保存期間 根拠
法人税関連の記録 7年間 法人税法第56条
VAT関連の記録(一般) 5年間 VAT法・税務手続法施行令
不動産関連の記録 15年間 VAT法(不動産特例)
税務調査・自主申告・還付申請が未了の場合 追加で2〜4年延長 Cabinet Decision No. 17 of 2026

スキャン保存(電子帳簿保存)は認められるか?

認められます。原本が紙であっても、スキャンして鮮明なデジタルデータとして保存していれば、原本を廃棄しても問題ないケースが大半です。ただし、FTAの要請があれば48時間以内に提出できる状態で保管する必要があり、改ざん防止(tamper-proof)の措置が求められます。

日本の「電子帳簿保存法」と同様に、ドバイでもクラウド会計ソフトに証憑(PDFや写真)を添付して保存しておくのが、最も安全で効率的な方法です。

2026年からの電子インボイス制度の影響

2026年7月からは、UAEで電子インボイス(e-Invoicing)制度のパイロット運用が開始され、2027年1月から段階的に義務化されます。Alvarez & Marsalの2026年2月ガイドライン解説によれば、年商5,000万AED超の企業は2027年1月から、5,000万AED以下の企業は2027年7月から完全実施となります。

ただし、電子インボイスはUAE国内のB2B/B2G取引が対象であり、日本の領収証や請求書のような海外発行の証憑は対象外です。したがって、日本出張の領収証や日本のECサイトの請求書は引き続き従来通りの方法(PDF・スキャンによる電子保存)で記帳することができます。

【根拠条文・出典】

  • Federal Decree-Law No. 28 of 2022 on Tax Procedures 第4条(記録保存)・第5条(言語)・第24条(行政罰)
  • Cabinet Decision No. 74 of 2023(税務手続法施行規則)第2条・第3条・第5条
  • Cabinet Decision No. 17 of 2026(2026年4月1日施行:保存期間・電子記録の取扱い明確化)
  • Federal Decree-Law No. 47 of 2022 on Taxation of Corporations and Businesses 第56条(記録保存7年)
  • Federal Decree-Law No. 8 of 2017 on Value Added Tax 第69条(外貨換算・UAE中央銀行レート)
  • Ministerial Decision No. 243 of 2025(電子インボイス制度)

まとめ

📋 今回のポイント

  • 日本語の領収証でも経費化は可能。ただし、英語での説明責任が伴います。
  • 会計ソフトへの入力は必ず「英語」で行う。これが翻訳の代わりとなります。
  • 日本の消費税はUAEのVAT還付対象外。全額を「コスト」として計上します。
  • 保存期間は法人税7年・VAT 5年・不動産15年。クラウド会計へのデータ添付・保存を強く推奨します。
  • 税務調査が入った場合のみ、必要に応じてアラビア語の正式認証翻訳を期限内に提出します。
  • 2026年7月開始の電子インボイス制度は海外発行の領収証には影響しません。

ドバイの税務は年々厳格化しており、特に2023年6月から導入された法人税の影響で、経費の正当性(Business Purpose)が厳しく見られるようになっています。

「日本語だからバレないだろう」という考えは危険です。中身が日本語であっても、「いつ、誰が、何の目的で使った経費なのか」を英語で説明できる状態にしておくことこそが、最も確実な税務対策となります。

弊所では、日本からUAEへ進出された企業の会計記帳代行や、税務監査対応を専門に行っております。日本の商習慣とUAEの法規制、双方を理解した記帳指導が必要な方は、当会計事務所までお気軽にお問い合わせください。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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