ドバイ移住の出国前手続き完全ガイド2026|国外転出時課税・源泉徴収・非居住者口座対応

投稿:2023年7月25日更新:2026年5月30日ブログ

こんにちは、ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。

今この記事をご覧の方には、お仕事でUAEに海外赴任される方や、現地法人を設立してドバイ移住を検討されている方も多いのではないでしょうか。海外赴任・海外移住の際、日本側で必要な手続きをせずに出国した場合、税務上思わぬ指摘を受けたり、役所や銀行からお尋ねが来ることがあります。

そこで本日は、特にご相談の多い「UAEに移住する際の出国時に必要な手続き」について、2026年5月時点の最新ルールを踏まえて解説します。後々余計な手間や金銭的負担が発生しないよう、出国時までにやるべきことを正しく理解し、しっかり準備を整えておきましょう。

UAEに移住する前に、以下の10項目は最低限チェックしておく必要があります。出国前に行っておかなければ間に合わないものもありますので、慎重に進めていきましょう。

1. 住民票の転出届を提出する

1-1. 「住民票を抜く」の意味

国外に出国する際には、住民登録をしている市区町村に「転出届」の提出が必要です。多くの自治体では、1年以上の期間国外に滞在する場合は転出届の提出を求めています。

転出届を提出し、どの市区町村の住民基本台帳にも記録されていない状態になることを、一般的に「住民票を抜く」と呼びます。住民票を抜くと、国民健康保険には加入できなくなります。そのため、国民健康保険の加入を継続する目的で、出国しても住民票を抜かないケースも見受けられます。

1-2. 日本法人の役員を継続する場合の社会保険

一方、日本の会社の役員として残り続け、役員報酬を継続して支払う場合には、社会保険に加入する義務があります。健康保険に関するルールは保険の種類や自治体によって異なるため、市区町村や年金事務所と事前に相談の上、対応を決定する必要があります。詳細は総務省「海外に在留する者への行政サービスの提供のあり方」もあわせてご参照ください。

📖 関連記事:日本の役員に残り続ける場合の厚生年金・国民年金・健康保険の分岐はドバイ移住で日本の社会保険はどうなる?|4つの分岐と自社役員報酬スキームで詳しく解説しています。

2. 納税管理人の届出を行う

2-1. 納税管理人とは

出国後も日本で申告や納税を行う必要がある方は、納税管理人を定めて届出をしなければなりません。所得税や相続税などの国税だけでなく、固定資産税・住民税などの地方税についても同様です。

出国後に日本で申告や納税の義務がない方でも、出国日までに日本で所得が発生しており、確定申告を行わなければならない方は、忘れずに届出をしておきましょう。手続きの詳細は国税庁「所得税・消費税の納税管理人の選任届出又は解任届出手続」に掲載されています。

📖 関連記事:納税管理人の選任メリット・届出書の書き方・実務上の落とし穴は海外移住時の納税管理人制度とは?選任のメリットと届出のポイントで詳しく解説しています。

2-2. 届出を忘れた場合のリスク

納税管理人の届出を忘れてしまうと、出国日までの日本の所得の申告納税期限は出国日が期限となるため、無申告となり延滞税がかかってしまうことに注意が必要です。

納税管理人の届出を提出することで申告期限が翌年3月15日まで延長され、延滞税の発生を防ぐことができます。納税管理人の届出は必ず出国日までに提出する必要があり、1日でも遅れると無申告扱いとなりますので、最も注意が必要な項目のひとつです。

3. 移住後の納税方法を検討しておく

3-1. 振替納税の継続可否

国内に銀行口座を残す場合は、振替納税の制度を継続して適用できますが、国内に銀行口座を残さない場合や、振替納税が利用できない税目の場合は、納税方法の検討が必要になります。

3-2. 海外居住者が利用しやすい納税方法

具体的には、納税管理人に納税資金を送付して代理納付してもらう方法のほか、クレジットカード納付、ダイレクト納付、インターネットバンキング納付、国外からの送金による納付などが利用できます。利用可能な方法は国税庁「国税の納付手続」に整理されています。

4. 国外転出時課税の検討を行う

4-1. 出国税の対象者

いわゆる出国税と呼ばれる税金です。出国時に1億円以上の株式(非上場株式も含む)や投資信託などの有価証券、未決済の信用取引、未決済のデリバティブ取引などを保有している個人には、国外転出時課税(みなし譲渡に対する譲渡所得税)が課されます(所得税法第60条の2)。

ドバイに移住される方でよくあるケースとしては、日本でオーナー兼経営者として自分の会社を保有しており、その株式の時価が1億円を超えている方が国外転出時課税の対象となるケースです。また、NISAやiDeCoなどの普及により、証券会社を通じて1億円以上の株式・投資信託等を保有している場合にも対象となる可能性があります。制度の全体像は国税庁「国外転出時課税制度のあらまし」をご確認ください。

📖 関連記事:1億円以上を保有するオーナー経営者向けの納税猶予制度(最大10年延長)の具体的活用法は出国税(国外転出時課税)の納税猶予制度を完全解説|要件・担保・最大10年延長をご確認ください。

4-2. 暗号資産は現時点で対象外(ただし改正議論あり)

なお、現在のところビットコイン等の暗号資産は、国外転出時課税の対象資産には含まれていません。ただし令和7年度税制改正以降、暗号資産を申告分離課税化する流れの中で、対象資産への追加についても継続的に議論されており、今後の改正動向には注意が必要です。

5. 取引先がドバイ法人に変わることを事前に連絡する

5-1. 取引先への事前通知

もともと日本で取引していた得意先と継続してドバイ法人で取引を行う場合は、今後の業務実施先および振込先が海外法人となる旨を事前に伝えておく必要があります。

5-2. UAEのFATFステータス(2024年2月にグレーリスト除外)

UAEはFATF(金融活動作業部会)により2024年2月にグレーリスト(Increased Monitoring対象)から除外されました。ただし、日本の金融機関側のコンプライアンス審査は引き続き厳格化傾向にあり、海外送金の都度確認や追加書類の提出を求められるケースは依然として多いのが実情です。今後も安定して海外口座に振込が行えるとは限らない前提で、契約条件の見直しをしておくと安心です。

5-3. リバースチャージ方式の論点

また事業の内容によっては、ドバイ法人で預かった消費税を得意先側で代わりに納税しなければならないケースもあります(リバース・チャージ方式)。このような実情を踏まえ、ドバイ法人に取引主体が変わっても引き続き取引ができるのかを、得意先としっかり話し合っておきましょう。

📖 関連記事:ドバイ法人が日本顧客にサービスを提供する際の電気通信利用役務とリバースチャージの実務はドバイ法人でも日本の消費税がかかる?電気通信利用役務の提供を解説で詳しく解説しています。

6. 証券会社の口座

6-1. 非居住者になった場合の証券口座

非居住者になった場合、証券会社の口座は原則として解約しなければなりません。ただし一部の証券会社では、制限付きの口座を維持できる場合もあります。

6-2. 出国年に株式を売却する場合の口座区分

なお、出国の年に上場株式等を売却する場合には、源泉徴収ありの特定口座ではなく、源泉徴収なしの特定口座または一般口座を使用すれば、その売却益に対する住民税は課税されません。特定口座制度の概要は国税庁「No.1476 特定口座制度」をご参照ください。

7. 銀行預金の口座

7-1. 非居住者になると口座が解約されるケース

金融機関については、非居住者になると口座を解約しなければならないところもありますが、一部の金融機関は非居住者向けサービスを提供しており、口座を継続使用できる場合もあります。国内に銀行口座を残す場合は、所得税・住民税・固定資産税などの振替納税を引き続き利用できます。

7-2. 無連絡で非居住者化した場合のリスク

銀行に特段の連絡なく非居住者となり、銀行側がその事実を察知した場合は、口座の解約を求められることがありますので注意が必要です。事前に各金融機関の非居住者向け取扱方針を確認しておきましょう。

8. 日本の不動産賃貸料・役員報酬を受け取る場合の源泉徴収義務

8-1. 非居住者が日本の不動産を貸し付ける場合

出国後も引き続き日本に不動産を保有し、賃料の支払を受ける場合、非居住者から不動産を借りる借手は、法人はもちろん個人(事業者かどうかを問いません)であっても、支払時に20.42%を源泉徴収しなければなりません(国税庁「No.2880 非居住者等に不動産の賃借料を支払ったとき」)。

源泉徴収された所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに納付する必要があります。非居住者は源泉徴収を受ける側であり、源泉徴収漏れに対して連帯納付義務などはありませんが、借主や管理会社の源泉徴収漏れによりトラブルに巻き込まれる可能性もあるため、事前に借主・管理会社に非居住者になる旨を相談しておく必要があります。

8-2. 日本法人の役員報酬を受け取る場合

日本の会社の役員に残り、役員報酬を受け取り続ける場合、その役員報酬は国内源泉所得に該当するため、支払時に20.42%を源泉徴収しなければなりません。これは勤務の場所が日本国内か国外かを問わず適用されます(国税庁「No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率」)。

9. マイナンバーカードと電子申告(2024年5月改正で国外継続利用が可能に)

9-1. マイナンバーカードの国外継続利用制度

2024年5月の関連法改正により、転出届を提出して非居住者となった後も、マイナンバーカードの国外継続利用申請を行うことでカードと電子証明書を維持できるようになりました。これにより、海外居住中でも引き続きe-Taxによる電子申告や、各種オンライン手続きを利用することが可能です。手続きの詳細は地方公共団体情報システム機構「マイナンバーカードを国外で利用する」をご参照ください。

9-2. 税理士による電子申告

納税者本人の電子証明書を利用しない場合でも、税理士が税務代理を受け、税理士の電子署名により行う電子申告については、非居住者の場合でも居住者と同様に行うことができます。継続利用申請を行わない方も、税理士関与により電子申告での提出は可能です。

10. 配当や利子を受ける場合の租税条約による源泉税軽減

10-1. 日UAE租税条約による配当の軽減税率

非居住者が内国法人から配当や利子を受ける場合には、所得税の源泉徴収が行われます。日本とUAEの間では租税条約が締結されているため、「租税条約に関する届出書」を提出することで、源泉徴収される所得税の軽減を受けることが可能です。

具体的には、日UAE租税条約上、配当の源泉税率は親子間配当(持株25%以上・12か月以上保有)で5%、その他のケースで10%に軽減されます。締結状況は財務省「我が国の租税条約等の一覧」に掲載されています。

📖 関連記事:ドバイ子会社からの配当が源泉税0%・法人税9%・益金不算入の3点で有利になる仕組みはドバイ子会社からの配当が税制上有利な3つの理由で詳しく解説しています。

10-2. 届出書の提出タイミング

租税条約に関する届出書は、必ずしも出国までに提出しなければならない書類ではありませんが、配当・利子の最初の支払日の前日までに支払者経由で税務署に提出する必要があるため、該当する方は早めに準備しておくのが安全です。様式は国税庁「源泉所得税(租税条約等)関係」からダウンロードできます。

11. まとめ

📋 今回のポイント

  • 転出届と社会保険・国民健康保険の取扱いは、自治体・年金事務所と事前確認が必須
  • 納税管理人の届出は出国日までに提出。1日でも遅れると無申告扱いとなり延滞税のリスク
  • 1億円以上の有価証券等を保有する個人は国外転出時課税の対象。暗号資産は現時点で対象外だが改正議論あり
  • UAEはFATFグレーリストから除外済(2024年2月)。ただし日本側の送金審査は引き続き厳格
  • 不動産賃料・役員報酬は20.42%の源泉徴収対象。借主・管理会社・支払法人への事前連絡が必須
  • 2024年5月以降、マイナンバーカードは国外継続利用申請でe-Tax利用が可能
  • 日UAE租税条約により配当の源泉税率は親子間5%・その他10%まで軽減可能

移住前の各種手続きには期限があるものも多く、一度出国してしまうと後から変更ができなかったり、届出が間に合わないものもあります。ドバイへの移住を検討される際は、上記10項目を参考に、時間に余裕を持って慎重に準備を進めていきましょう。

UAEへの移住手続きに不安がある方や、手続き漏れによる余計な手間・コストを避けたい方は、ぜひ当事務所の税務相談サービスをご利用ください。ご相談者様の状況に即した最適なスケジュールと手続きをご提案いたします。

【根拠法令・出典】

※本記事は2026年5月時点の情報に基づきます。最新の改正動向はFTA公式情報・国税庁公式情報および当事務所までご確認ください。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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