日本とUAEの税制を徹底比較|法人税・消費税(VAT)・関税・日UAE租税条約まで

投稿:2025年11月28日更新:2026年5月30日ブログ

こんにちは、ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。

近年、中東ドバイへの進出やビジネス展開を検討される方が増えています。ドバイを含むUAE(アラブ首長国連邦)は、長らく「タックスフリーの国」として知られてきましたが、2023年6月に法人税が導入されるなど、税制は大きく変化しています。

一方で、日本と比較すると依然として税負担が大幅に軽いことは事実であり、両国の税制の違いを正確に理解することは、海外進出を検討するうえで非常に重要です。本記事では、日本とUAEの税制を法人税・消費税(VAT)・関税の3つの観点から比較し、さらに日UAE租税条約の実務上の留意点まで整理します。

1. 法人税に関する比較

日本の法人税制度

日本の法人税は、法人の所得に対して課される国税です。国税庁No.5759によれば、税率は原則23.2%、資本金1億円以下の中小法人については年800万円以下の所得部分に対して15%の軽減税率が適用されます。

ただし、実際の税負担は法人税だけではありません。地方法人税、法人住民税、法人事業税なども加算されるため、日本の法人所得に対する実効税率は約29.74%(資本金1億円超・東京都の場合)となります。新設法人であっても、黒字が出れば原則として法人税が課税されます。赤字であっても住民税の均等割などは別途発生します。

項目 日本
法人税率(原則) 23.2%
中小法人軽減税率 年800万円以下の所得部分は15%
法人実効税率 約29.74%(資本金1億円超・東京都)
免税点 なし(赤字なら法人税は発生しない)
関連記事:UAE法人税の登録漏れで罰金AED 10,000—期限と回避策まとめ

UAEの法人税制度

UAEでは、2023年6月から連邦レベルで法人税(Corporate Tax)が導入されました。基本構造は2段階です。

この水準は国際的に見ても低い税率であり、特に日本と比較すると法人レベルの税負担は約3分の1以下に抑えられます。法人税法本文はUAE財務省公開のFederal Decree-Law No. 47 of 2022、概要はFTA公式をご参照ください。

さらに、UAEには数多くのフリーゾーンが存在し、一定の条件を満たすことで適格フリーゾーン法人(Qualifying Free Zone Person / QFZP)として認定され、Qualifying Income(適格所得)について法人税0%の取扱いが可能となります。QFZPに該当するには次のような要件を満たす必要があります。

関連記事:QFZP(適格フリーゾーン法人)の5要件を実務目線で整理

また、年間売上AED 300万以下の小規模事業者については、Small Business Relief(スモールビジネス・リリーフ)として、2026年12月31日終了課税期間まで法人税を実質ゼロにできる救済制度(opt-in制)が用意されています。ただしQFZP適用法人は対象外です。

法人税比較のまとめ

項目 日本 UAE
基本税率 23.2% 9%
実効税率 約29.74%(地方税込) 約9%(地方税なし)
免税点 なし AED 375,000まで0%
中小・小規模企業優遇 年800万円以下15% Small Business Relief(売上AED 300万以下・opt-in制・2026年12月31日終了課税期間まで)
フリーゾーン優遇 制度上なし QFZPはQualifying Incomeに対し0%

日本の方が税率は高い一方で、UAEは低税率かつフリーゾーン優遇もあるため、法人レベルの所得をUAE側に集約するインセンティブが構造的に働きやすいといえます。Small Business Relief・Ministerial Decision本文はUAE財務省公開PDFをご参照ください。

2. 消費税(VAT)に関する比較

日本の消費税制度

日本の消費税は、商品やサービスの対価に対して課される間接税です。国税庁No.6105によれば、現在の標準税率は10%、飲食料品など一部品目については軽減税率8%が適用されます。軽減税率の主な対象は次のとおりです。

2023年10月からはインボイス制度(適格請求書等保存方式)が始まりました。消費税の仕入税額控除を受けるためには、原則として適格請求書発行事業者からの請求書の保存が必要となり、フリーランスや小規模事業者にも影響が広がっています。2026年5月時点では経過措置の段階にあり、免税事業者からの仕入については50%相当が控除可能な期間に入っています(2026年9月30日まで)。

また、日本には事業者免税点制度があり、基準期間(通常は2期前)の課税売上高が1,000万円以下の事業者については、消費税の納税義務が免除されます。ただしインボイス制度開始後は、取引先からの要請であえて課税事業者を選択するケースも増えています。

UAEのVAT制度

UAEでは、2018年1月から付加価値税(VAT)が導入されています。税率は一律5%で、日本の標準税率と比較すると半分の水準です。詳細はFTA VAT公式ページをご参照ください。

VATの登録義務は、年間課税売上AED 375,000を超える事業者に発生します。AED 187,500以上AED 375,000未満の事業者は任意でVAT登録が可能です。UAEのVAT制度では、取引が次の3区分に整理されます。

「ゼロ税率」と「非課税」の違いは仕入VATの控除可否であり、事業モデル設計上の重要な分岐点です。

関連記事:UAE VAT実務—交際費・福利厚生費の取扱いと仕入税額控除の判定

消費税・VAT比較のまとめ

項目 日本 UAE
標準税率 10% 5%
軽減税率 8%(飲食料品等) 原則なし
免税点 基準期間の課税売上1,000万円以下 年間課税売上AED 375,000以下
輸出取引 輸出免税(0%税率) ゼロ税率(0%)
請求書制度 インボイス制度(経過措置中) Tax Invoice制度

制度の骨格は両国とも類似しており、税率だけ見るとUAEが有利ですが、輸出に関してはいずれもゼロ税率を採用し仕入税額控除も認められます。事業モデルごとに、どちらの国で課税取引が発生するかを丁寧に設計することが求められます。

3. 関税に関する比較

日本の関税制度

日本の関税は、輸入される商品の品目ごとに税率が細かく定められています。日本税関 実行関税率表を参照すると、全品目の単純平均は数パーセント台、農産品と工業製品では大きな差があるのが分かります。

区分 平均的な関税率のイメージ
全品目平均 約4%台
農産品 約13%台(品目により大きく変動)
工業製品 約2%台

実務上問題になりやすいのは、農産品など高関税品目です。米・乳製品・砂糖・一部加工食品・衣料品などは、一般的な工業製品に比べて高めの関税率が設定されています。一方で、日本は多くの国とEPA/FTAを締結しており、原産地証明を用いることで関税が大幅に軽減または免除されるケースもあります。実際の税率は商品ごとのHSコードと原産国ごとの協定内容を確認する必要があります。

UAEの関税制度

UAEはGCC(湾岸協力会議)の一員であり、GCC共通関税制度を採用しています。原則として、UAEに輸入される多くの品目にはCIF価格(商品価格+保険料+運賃)の5%の関税が課されます。ただし次のような例外があります。

品目・区分 関税上の扱い
一般物品 原則5%
基礎食料品・医薬品 免税品目あり
GCC域内原産品 条件を満たせば無関税
アルコール飲料 高税率(首長国別ルール)
たばこ製品 100%関税+Excise Tax

UAEで特徴的なのは、多数のフリーゾーン、特にVAT上のDesignated Zone(指定地域)に指定されたフリーゾーンの存在です。Designated Zone内に輸入される物資は、再輸出を前提とする限り関税が課されない取扱いが一般的です。製造業や商社機能をフリーゾーンに置き、原材料を輸入して第三国へ輸出するモデルでは、関税負担を抑えたサプライチェーン構築が可能になります。

ただし、フリーゾーンからUAE本土に商品を移すタイミングで関税(および本土でのVAT)が発生する点に注意が必要です。

関税比較のまとめ

項目 日本 UAE
基本的な関税水準 全体平均は数パーセント台 原則5%
農産品 高関税品目が多い(米・乳製品等) 原則5%だが一部免税
工業製品 比較的低い税率 多くが5%
経済連携協定 EPA/FTAが多数 GCC共通関税が中心
フリーゾーン 制度なし Designated Zone内は再輸出前提で無関税

UAEではフリーゾーン活用により、在庫拠点や仕向地を柔軟に変えながら関税負担を抑えるケースが多く見られます。

4. 日UAE租税条約の実務上の取扱い

日本とUAEの間には、日UAE租税条約(2013年5月署名・2014年12月発効、2015年1月適用開始)が締結されています。配当・利子・使用料に対する源泉地国課税の限度税率は次のとおりです。

所得の種類 日本国内法の源泉税率(例) 日UAE租税条約の限度税率
配当(議決権10%以上を6か月以上保有する法人受益者) 20.42% 5%
配当(その他) 20.42% 10%
利子(一般) 15.315%/20.42%等 10%
利子(政府機関等が受領するもの) 15.315%等 免税(0%)
使用料 20.42% 10%

条約のポイントの詳細は財務省「日UAE租税条約のポイント」、源泉所得税の実務取扱いは国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(日UAE租税条約関係)」をご参照ください。

条約適用の実務上の留意点

条約の限度税率の適用を受けるためには、いくつかの実務上の要件があります。

関連記事:UAEへの支払いに係る源泉徴収税の整理—配当・利子・使用料の実務

日本側の規制との関係

UAEを介したストラクチャーを検討する際は、日本側で次の規制との整合を必ず確認する必要があります。

関連記事:国外子会社からの配当・タックスヘイブン対策税制の実務整理

5. UAE法人税とQFZPの最新論点

UAE法人税の導入後、日本との税務関係において特に重要となるのが次の3つの論点です。

QFZPと移転価格

QFZP適用法人は、関連者間取引についてアームスレングス原則(独立企業間価格)を遵守する義務があります。Local FileやMaster Fileの作成義務、関連者間取引が一定基準を超える場合は移転価格申告書の提出義務があります。日本親会社との取引価格設定は、QFZP維持の観点でも、日本側の移転価格税制の観点でも、二重に重要となります。

関連記事:UAE移転価格税制の基礎—関連者間取引の5%マークアップ実務

DMTT(国内ミニマム課税)15%

UAEは、2025年1月1日以降開始する事業年度から、Domestic Minimum Top-up Tax(DMTT)を導入しました。これは、グローバル売上高EUR 7.5億以上の多国籍企業グループに属する法人を対象に、UAEでの実効税率が15%を下回らないように上乗せ課税する制度です。中堅・中小規模の日本企業には直接の影響は小さいですが、大手日系企業のUAE子会社にとっては重要な変化です。

UAE居住者証明書(TRC)の取得

日UAE租税条約の特典享受にはTRCの取得が実務上不可欠です。法人については設立後12か月以上経過していること、個人については年間183日以上のUAE滞在実績などが要件となります。UAE法人税導入により「課税対象法人であること」の証明が容易になり、TRC取得もスムーズになっています。

最後. まとめ

日本とUAEの税制を、法人税・消費税(VAT)・関税・租税条約という4つの切り口で比較すると、次のポイントが見えてきます。

UAE進出を検討する際は、単純に「税率が低いから有利」と考えるのではなく、次の点を総合的に検討することが重要です。

具体的なビジネスモデルや資本関係、取引スキームによって最適な設計は大きく変わります。日UAE間の税務ストラクチャーの設計、CFC合算リスクの評価、QFZP維持の組成、移転価格文書化、TRC取得サポートなど、個別のご相談はお気軽にお問い合わせください。UAE法人税の総合的な制度概要はPwC Worldwide Tax Summaries – UAEもあわせてご参照ください。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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