ドバイ子会社からの配当が税制上有利な3つの理由【源泉税0%・法人税9%・益金不算入95%】

投稿:2025年12月2日更新:2026年6月5日ブログ

ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。

ドバイに法人を設立し、事業を展開している日本の親会社が、UAE子会社の利益を配当として日本に還流させたいと考えたときに、まず気になるのが「どのくらいの税金がかかるのか」という点ではないでしょうか。実は、UAE子会社からの配当は、日本の税制上極めて有利な扱いを受けており、適切に活用することで大幅な税負担の軽減が可能です。

本記事では公認会計士の視点から、なぜUAE子会社からの配当が税制上有利なのか、その理由と具体的な仕組みについて詳しく解説いたします。

UAE子会社からの配当が有利になる3つの柱

UAE子会社から日本親会社に対する配当が有利になると言えるポイントとしては、以下の3つが骨子となります。

ポイント 概要
① UAE側に配当源泉税がない UAE子会社から日本親会社への配当に対して、UAE側での源泉徴収税が一切かかりません。
② UAE法人税率は9% 日本の法人実効税率(約30%)と比べて、約3分の1水準の税率です。
③ 日本の益金不算入制度(95%非課税) 一定の要件を満たせば、受け取った配当の95%が日本で非課税となります。

UAE法人税における源泉徴収がない点が大きなメリット

UAE子会社から日本親会社に対して配当を支払う場合、最初に注目すべき特徴は、UAE側では配当に対する源泉徴収税が一切発生しないという点です。これは多くの国と異なる、極めて重要な特徴となります。

例えば日本の場合は、日本法人が外国法人に対して配当を支払う際には、支払額に対して20.42%の源泉徴収税が強制的に発生します。同じく多くのアジア各国でも、配当に対する10%〜20%程度の源泉徴収税が課されるのが一般的です。

これに対してUAEでは、UAE法人から外国法人への配当支払いに対する源泉徴収税は存在しませんPwC UAE Withholding Taxes)。つまり、UAE子会社で100万ディルハムの利益が出た場合、その全額を配当として日本親会社に送金することが可能であり、UAE側では追加の税負担がないということになります。これは、国際的な取引における配当送金の効率性という観点から、極めて優れた特徴といえるでしょう。

日本親会社とUAE子会社の関係イメージ

日本親会社 UAE子会社
配当を受け取る側 配当送金
(源泉徴収税 0%)
利益を稼得し、配当を支払う側

UAE法人税は9%に抑えられている

次に、UAE子会社が負担する法人税そのものについて確認しておきましょう。UAEでは2023年6月から法人税が導入されましたが、その税率は年間の課税所得が375,000ディルハムを超える場合、9%に設定されています(UAE政府公式:Corporate Tax)。

この9%という税率は、世界的に見ても極めて低い水準です。日本の法人実効税率が約30%であることと比較すると、その差は一目瞭然です。UAE法人で稼得した利益に対しては、日本で稼得した場合の約3分の1の税負担で済むということになります。

また、注目すべき点として、UAE側では配当前の利益に対してこの9%が課されるのであり、配当を支払ったからといって追加の税負担が生じることはありません。つまり、配当支払い前の利益段階での税負担が確定し、その後の配当送金には追加税が発生しないのです。

日本における海外子会社配当益金不算入制度が極めて優遇されている

UAE子会社からの配当を受け取った日本親会社は、日本で益金不算入制度の適用を受けることが可能です。この制度こそが、UAE配当を極めて有利にしている最大の理由です。

外国子会社配当益金不算入制度(国税庁No.5759)とは、一定の要件を満たした外国子会社から受け取る配当金の額のうち、95%相当額を日本の法人税の計算上、益金に算入しない(すなわち非課税にする)制度です。言い換えると、受け取った配当金の5%部分についてのみ日本で課税されるということになります(PwC 外国子会社配当益金不算入)。

益金不算入制度の適用要件

要件 内容
持株割合 日本親会社が当該外国子会社の発行済株式等の25%以上を保有していること。
保有期間 その保有期間が、配当の支払義務が確定する日以前6ヶ月以上継続していること。

UAE子会社を設立して事業を展開している多くのケースでは、この要件を満たす可能性が高いといえます。

この制度が導入された背景には、外国子会社で既に支払われた現地の法人税との二重課税を排除しようという政策判断があります。つまり、UAE側で9%の法人税が課されている利益に対して、日本でも同じように30%の税率で課税するのは不合理であるという考え方です。そのため、95%を非課税にすることで、実質的には現地での法人税負担で完結させるという仕組みになっています。

益金不算入制度のイメージ

配当金 日本での取り扱い
受け取った配当金の95% 益金不算入(非課税)
受け取った配当金の5% 日本で課税対象

実際の見込税率を計算

ここまでのポイントを整理して、実際にどのくらいの見込税率になるのか、具体例で確認してみましょう。前提条件は以下の通りとします。

項目 内容
UAE子会社の税引前利益 1,000万ディルハム(約4.3億円 ※1ディルハム=約43円、2026年5月時点)
UAE法人税率 9%
配当支払い時のUAE側源泉徴収税 0%
日本親会社の法人実効税率 約30%
益金不算入制度の非課税割合 95%

UAE子会社での税負担

税引前利益1,000万ディルハムに対して、9%の法人税が課されます(AED 375,000の0%適用部分は本計算では考慮外)。

UAE法人税 = 1,000万ディルハム × 9% = 90万ディルハム

したがって、UAE子会社の税後利益は以下の通りです。

税後利益 = 1,000万ディルハム − 90万ディルハム = 910万ディルハム

これが配当として日本親会社に送金されます。UAE側では源泉徴収税がないため、910万ディルハム(約3.91億円)が日本に送金されることになります。

日本親会社での税負担

受け取った配当910万ディルハムのうち、95%が益金不算入になります。

益金不算入額 = 910万ディルハム × 95% = 864.5万ディルハム
課税対象額 = 910万ディルハム − 864.5万ディルハム = 45.5万ディルハム

この45.5万ディルハムのみが日本親会社の所得に算入されます。仮にこれが親会社の唯一の収入であり、法人実効税率が約30%だとすると、日本での法人税は以下の通りになります。

日本での法人税 = 45.5万ディルハム × 30% = 13.65万ディルハム

グループ全体の実効税率

グループ全体の税負担を合算すると、

UAE側の法人税 90万ディルハム + 日本側の法人税 13.65万ディルハム = 合計 103.65万ディルハム

元の税引前利益1,000万ディルハムに対する実効税率は、

103.65万ディルハム ÷ 1,000万ディルハム = 約10.37%

これは、もしも同じ利益を日本国内で稼得していた場合の30%という法人実効税率と比較して、わずか3分の1程度に圧縮されることを意味します。さらにUAEには個人所得税がないため、役員報酬を受け取る個人側でも課税されません(ただしUAE法人税上、関連者報酬は市場価格に基づくべきとされ、過剰報酬は損金否認の対象となり得ます)。このように、UAE子会社からの配当は、極めて効率的な利益還流のメカニズムといえるでしょう。

日UAE租税条約による配当の限度税率

日本とUAEの間には日UAE租税条約が締結されており、2014年12月24日に発効、2015年1月1日以降の課税分から適用されています。

本条約により、配当に対する源泉徴収税の限度税率は次のとおり定められています。

これは日本からUAEへの配当・UAEから日本への配当の双方に適用される限度税率です。ただしUAE側ではそもそも国内法上の源泉徴収税が0%であるため、UAEから日本への配当については条約の限度税率(5%)に達することなく、実務上は0%が貫徹します。日本親会社にとって重要なのは、むしろ日本側の益金不算入制度の適用判定です。

益金不算入制度と外国税額控除の関係

ここで注意が必要な点として、益金不算入の対象となる配当に対して課された外国源泉税については、外国税額控除の対象とならず、損金算入も認められないという点があります(法人税法施行令142条の2、法人税法39条の2)。これは、制度設計上、現地の法人税負担で完結させることを想定しているためです。

もっとも、UAE側では配当源泉税が0%であるため、外国源泉税控除を諦めることによる実害は通常発生しません。一方、UAE法人税本体(9%)は配当ではなく法人段階で課された税であり、この外税不控除ルールの対象外です(UAE法人税は子会社利益に対する税であり、配当に対する源泉税ではないため)。

結果として、UAE配当を益金不算入で受け取る場合、日本親会社が外国税額控除を諦めて損する局面はほぼ生じません。

タックスヘイブン対策税制の対象になっていないか確認が必須

UAE子会社からの配当が税制上有利であることは確かですが、ここで重要な注意点があります。それは、タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制/CFC税制)の対象になっていないかという点です。

UAE法人税率が9%という低さであるため、理論上はタックスヘイブン対策税制の対象になる可能性があります。ただし、実際に事業実態を持ち、現地で従業員を雇用し、オフィスを借りて営業活動を行っているような会社であれば、経済活動基準の充足によりこの制度の合算課税対象外となる可能性があります。

一方、ただ形式的にUAE法人を設立しただけで、実質的な事業活動がない場合、あるいは事業実態が極めて限定的である場合は、特定外国関係会社として全所得が日本で合算課税されてしまう可能性があります。この場合、配当のメリットが失われてしまいます。

したがって、UAE子会社を設立する際には、単なる租税回避目的ではなく、実際のビジネス目的があり、適切な事業実態を備えていることが極めて重要になります。

関連記事:UAEのタックスヘイブン税制(CFC)対応

配当受け取りの際の実務上の注意点

UAE子会社から配当を受け取る際には、いくつかの実務上の注意点があります。

これらを満たしていない場合、配当金の全額が日本で課税されてしまい、二重課税が生じる可能性や、後日の税務調査で指摘を受けるリスクがあります。

関連記事:日UAE租税条約は個人居住者には使えない

まとめ

📋 今回のポイント

  • UAE側の配当源泉税は0%:配当送金時に追加の税負担が発生しない
  • UAE法人税率は9%:日本の実効税率約30%と比べて約3分の1
  • 日本側で95%益金不算入:持株25%以上・保有6ヶ月以上が要件
  • 日UAE租税条約の親子会社間配当限度税率は5%:ただしUAE国内法0%が事実上貫徹
  • 益金不算入対象の配当に課された外国源泉税は外税控除不可:UAE 0%のため実害なし
  • グループ実効税率は約10%:日本国内事業の3分の1水準まで圧縮可能
  • タックスヘイブン対策税制に注意:実体のある事業活動と適切な経済的実体が前提

UAE配当の税制上のメリットを最大限に活かすためには、事前に十分な検討と準備が不可欠です。ドバイでのビジネス展開を検討されている方、あるいは既にUAE子会社からの配当受け取りを予定されている方で、税務上の最適化について不安がある場合は、当会計事務所までお気軽にお問い合わせください。日本・UAE双方の税務に精通した専門家として、お客様のグループストラクチャーに最適なソリューションをご提案いたします。

根拠条文・出典

  • 法人税法第23条の2(外国子会社から受ける配当等の益金不算入)
  • 法人税法施行令第22条の3(外国子会社の判定)、第22条の4(控除費用5%)、第142条の2(外国源泉税の外税控除不適用)
  • 法人税法第39条の2(外国源泉税の損金不算入)
  • 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアラブ首長国連邦との間の条約(日UAE租税条約、2013年5月2日署名、2014年12月24日発効、2015年1月1日適用開始)
  • UAE Federal Decree-Law No. 47 of 2022(UAE法人税法)第3条(税率)、UAEは配当に対する源泉徴収税0%

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

の記事一覧へ

コメントをどうぞ!

メールアドレスが公開されることはありません。

18 − 12 =

ドバイで法人が銀行融資を受ける方法|3つの必須条件と必要書類 出国税(国外転出時課税)の納税猶予制度|申請要件と最大10年延長ルールを解説

お気軽にお問い合わせください