ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。
ドバイでのビジネス展開を検討されている方の中で、不動産仲介会社の設立を考えている方も多いのではないでしょうか。
実際のところ、2024〜2025年にかけて日本人がドバイで不動産仲介会社を設立する動きが相当増加しており、業界としても競争が活発化しています。ただその一方で、ドバイで不動産仲介業を始めるには複雑な法的要件や規制をクリアしなければなりません。
本記事では、日本人がドバイで不動産仲介会社を正規に設立する際の具体的な手続きや注意点について、法務・税務の観点からお伝えします。
1. 不動産仲介会社に必須のRERAライセンス
ドバイで不動産仲介業を営むためにはまず、ドバイ不動産規制庁(RERA)の公認エージェント資格を取得する必要があります。
これは日本の宅建士に相当する資格制度で、法人が不動産ブローカーライセンスを取得するための前提条件となっています。RERAエージェント資格を取得するには、不動産会社に所属した上で、ドバイ不動産研究所(DREI)が提供する約4日間の認定研修(Certified Training for Real Estate Brokers)を受講し、その後試験に合格することが必要です。合格基準は85%以上で、選択式の試験となります。
ただし留意が必要な点として、RERA試験はオンラインの選択式であり、実務的な知識より形式的な性質が強い傾向があります。そのため、資格保有者の実際の不動産知識や経験を判定する上では、試験合格の有無だけでなく、実務経験や人的ネットワークなども重要な判断要素となります。
RERAライセンス取得の流れ
| ステップ | 内容 |
| ① | 不動産会社(ブローカレッジ法人)に所属する |
| ② | DREI(ドバイ不動産研究所)の認定研修を受講(約4日間) |
| ③ | RERA試験に合格する(オンライン選択式・85%以上) |
| ④ | RERAブローカーカードを取得 |
| ⑤ | 法人の不動産ブローカーライセンス申請が可能 |
2. 法人設立の流れと業種ライセンス選定
ドバイでの不動産仲介会社設立には、大きく分けてメインランドとフリーゾーンの2つの選択肢があります。不動産ブローカーライセンスはDubai Land Department(DLD)とRERAの管轄下にあります。
不動産仲介業は国内市場へのアクセスが重要であるため、多くの日本人企業はメインランド法人を選択しています。
不動産関連のアクティビティは非常に細かく分類されており、例えば売買仲介と賃貸仲介は同一法人での取得が可能ですが、民泊事業のライセンスは別法人での運用が求められることもあります。
法人登録から営業許可までの期間はいずれも1ヶ月程度で完了し、初期費用は概ね以下の通りです。
| 法人形態 | メリット | デメリット | 初期費用目安 |
| メインランド | UAE国内市場への自由なアクセス/不動産仲介業に最適 | 物理的オフィス必須 | 約65,000〜70,000 AED(約280万〜301万円) |
| フリーゾーン | 設立が比較的容易 | 国内市場に制限あり | 約45,000〜60,000 AED(約194万〜258万円) |
※AED換算は1AED=43円(2026年5月時点)
3. 物理的なオフィス環境と実体性の確保
ドバイでの不動産仲介業を営むには、現地に物理的なオフィスの設置が必須要件です。これは日本の法制度と異なる重要なポイントです。当局が事業実体を判定する際に、登録されたオフィスの住所が実在し、実際に事業が行われているかどうかを確認します。
また、金融活動作業部会(FATF)の国際的な基準を受けて、ドバイの金融規制も年々強化されています。マネーロンダリング対策として、実質的支配者(UBO)登録が義務付けられており、法人を実際にコントロールしている個人の詳細情報をUAE当局に登録する必要があります。
この手続きを怠ると罰金対象となるため、設立初期段階でこの要件を確実に満たしておくことが重要です。AML・ESR・UBOの3大コンプライアンスは不動産業者にとってとりわけ重要で、2021年以降、不動産仲介業者はDNFBP(指定非金融業者)として明確にAML義務の対象に位置付けられています。
4. 銀行口座開設
法人設立後、営業のためにドバイの銀行で法人口座を開設する必要があります。
銀行口座開設には、会社登記簿、定款、代表者のパスポート、エミレーツIDなどの書類が必要です。
UAE最大の銀行であるEmirates NBDやFAB(First Abu Dhabi Bank)などが不動産関連企業向けの口座開設サービスを提供しているほか、昨今ではWIO BankやMashreq Neobizなどのオンラインバンクも開けているようです。
法人口座は標準で4〜12週間、複雑なストラクチャの場合は3ヶ月超を要するため、法人設立と並行して早めに準備を進めることが肝心です。
5. 不動産取引における手数料体系と事業実態の構築
ドバイでの不動産取引に関わる手数料の体系を理解することも、事業計画の立案に不可欠です。中古物件の売買仲介では物件価格の2パーセント、賃貸仲介では年間家賃の5パーセントがエージェントの報酬となります。
新築物件(オフプラン)の場合、デベロッパーからエージェントへ4パーセントから10パーセント程度の手数料が支払われるため、買主からの仲介手数料を取らないケースが多く見られます。
事業の初期段階では、大手デベロッパー(EMAAR、Damac、Aldarなど)とのパートナーシップ構築や、既存の日本人顧客ネットワークの活用により、オフプラン物件の情報確保が重要です。また、顧客に対して責任ある情報提供を行うため、ドバイの不動産法制や租税条約、日本側の税務ルールについて常に最新の知識を保つ必要があります。
| 取引種別 | 手数料率 | 支払者 | 備考 |
| 中古物件売買 | 物件価格の2%(+5% VAT) | 買主 | 売主・買主から各1%ずつの場合もあり |
| 賃貸仲介 | 年間家賃の5%(マーケット慣行で最低AED 5,000程度) | 借主 | 物件により異なる場合あり |
| 新築物件(オフプラン) | 4%〜10% | デベロッパー | 買主からは徴収しないケースが多い |
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6. 日本側の税務との接続
ドバイで不動産仲介会社を設立する日本人にとって、UAE側の手続きだけでなく、日本側の税務対応も避けて通れません。出国時の国外転出時課税、UAE居住者証明書(TRC)の取得、日UAE租税条約の適用判定が中心テーマとなります。
UAEは2023年6月から連邦法人税(9%、課税所得 AED 375,000超部分)が導入されており、不動産仲介事業も当然に課税対象です。さらに法人税登録を怠ると過料 AED 10,000 が課されます。
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最後の章. まとめ
📋 本記事のポイント
- ドバイで不動産仲介業を営むには、RERAブローカーカード取得が前提(DREIで約4日研修+85%合格)
- 法人形態は不動産仲介ならメインランド一択、初期費用は約65,000〜70,000 AED(約280万〜301万円)
- 物理オフィスは必須要件、フレキシデスクではAML上も実体性で問題が出やすい
- UBO登録・AML対応が義務、2021年以降、不動産業はDNFBPとして明確に対象
- 手数料は中古売買2%、賃貸仲介5%、オフプラン4〜10%が市場標準
ドバイで日本人向け不動産仲介会社を設立するには、RERAライセンス取得、メインランド法人設立、現地オフィスの確保、銀行口座開設、そして日本側の税務申告義務まで、多段階の要件をクリアする必要があります。
ドバイの不動産市場は高い成長ポテンシャルを有していますが、その市場機会を活かすには、堅牢な法的基盤と適切なコンプライアンス体制が不可欠です。不動産仲介事業の設立に関してご不明な点やお困りの点がございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。
根拠法令・参考資料
- By-Law No. 85 of 2006(ドバイ):不動産ブローカー登録規則 (DLD公式法令一覧)
- Real Estate Regulatory Agency(RERA):DLDの規制部門
- Dubai Real Estate Institute(DREI):DLDの教育部門、認定研修を実施
- Trakheesi System:ブローカーカード・営業ライセンスの申請プラットフォーム
- Cabinet Decision No. 109 of 2023:実質的支配者(UBO)登録の手続規則
- Federal Decree-Law No. 47 of 2022(UAE法人税法):法人税9%の課税ルール
※本記事は2026年5月時点の情報に基づき作成しています。最新の規則・運用変更については、当事務所までお問い合わせください。AED換算は1AED=43円(2026年5月時点)。
