ドバイのTRC(税務居住者証明書)取得方法|183日・90日ルールと申請手順を解説

投稿:2025年11月30日更新:2026年6月22日ブログ

ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。ドバイに移住した方にとって、どこで税金を納税するかを証明する根拠として 税務居住者証明書(TRC: Tax Residency Certificate) が必要になることがあります。

TRCは、UAE財務省(Ministry of Finance)および税務当局(FTA: Federal Tax Authority)が発行する公式文書で、個人がUAEの税務上の居住者であることを証明するものです。ただし重要な点として、TRCはUAE側でのあなたの居住者地位を証明するものであり、日本側での税務上の扱いはTRCの存在だけでは決定されません。むしろTRCを持つことで、日本の税務当局に対してあなたの非居住者性を立証する根拠 となるものです。

今回は、個人がTRCを取得する条件、必要書類、申請手続きの流れ、そして日本での活用方法について解説します。

※本記事の金額は1 AED=43円(2026年5月時点)で換算しています。

TRC(税務居住者証明書)とは

TRCは、UAE財務省およびFTAが発行する公式文書で、個人がUAEの税務上の居住者であることを証明するものです。UAEは現在、日本を含む110カ国以上と二重課税防止条約を締結しています。二重課税防止条約とは、同じ所得に対して2つの国が税金を課さないようにするための国際条約です。

TRCには主に以下の2種類があります。

種類 用途
条約目的TRC(Treaty Purpose) 二重課税防止条約の適用を受けるため、他国(日本など)に提出する
国内目的TRC(Domestic Purpose) UAE国内での税務居住者としての地位を証明する

日本との関係では、条約目的TRCが主に活用されます。このTRCを日本の税務当局に提出することで、あなたが日本の非居住者である可能性が高いことを示す証拠となり、日本での課税方法が全世界所得課税ではなく国内源泉所得課税に限定される根拠となります。

関連記事:非居住者と日本の国内源泉所得課税

個人がTRCを取得するための居住者要件

TRCを申請するためには、まずUAEの税務上の居住者として認定される必要があります。この認定基準は、2022年9月に発表された 閣議決定第85号(Cabinet Decision No. 85 of 2022) により定められ、2023年3月1日から施行されています。

個人がUAEの税務居住者と認められるには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

滞在日数 追加要件
183日以上 連続する12カ月間にUAEに物理的に滞在していれば、追加要件なし
90日以上183日未満 UAE国籍、GCC加盟国国籍、または有効な居住ビザを保有し、かつUAEに恒久的住居があるか、UAEで就業または事業活動を行っている
上記に該当しない場合 UAEが通常の居住地または主たる居住地であり、経済的・個人的利益の中心がUAEにあること

滞在日数は連続している必要はありませんが、連続する12カ月間 での計算となります。やむを得ない事情(病気や自然災害など)によりUAEを離れられなかった場合は、当局の判断で日数から除外される可能性があります。

重要な変更として、2024年10月のFTA新ガイドラインにより、個人は 納税期間の完了を待たずに、居住者要件を満たした時点で即座にTRCを申請できる ようになりました。例えば、10月15日に183日滞在の要件を満たしたなら、翌年3月31日まで待つのではなく、その時点で申請を進めることができます。

関連記事:UAE移住前に知っておく税務ポイント

個人TRC申請に必要な書類

TRCを申請する際、183日以上滞在しているか否かによって必要書類が異なります。

条約目的TRC(183日以上滞在の場合)

入出国記録は、UAE ICP(Federal Authority for Identity, Citizenship, Customs & Port Security) のアプリから取得できます。この記録は、UAE国内での滞在日数を証明するために必須の書類です。

2024年10月のFTA新ガイドラインでは、銀行取引明細書の提出要件が削除 されました。以前は過去6カ月分の銀行口座の活動を証明する必要がありましたが、現在は不要となっています。

国内目的TRC(90日以上183日未満の場合)

国内目的TRC(経済的・個人的利益の中心がUAEの場合)

90日未満の滞在であっても以下の条件を満たせばTRCが取得できる可能性がありますが、形式的な要件を満たしていないことから実務上は難しいケースが多いです。

TRC申請手続きの流れ

TRCの申請は、FTAのオンラインポータル EmaraTax を通じて行います。

ステップ1 EmaraTaxへの登録・ログイン

FTAの公式サイト にアクセスし、UAE Passまたはアカウント情報でログインします。アカウントがない場合は新規作成が必要です。

ステップ2 TRC申請タイプの選択

ダッシュボードから「Tax Residency Certificate」を選択し、以下のいずれかを選びます。

ステップ3 必要書類のアップロード

求められる書類をPDFまたはJPEG形式でアップロードします。書類は鮮明で、すべての情報が読み取れる状態である必要があります。

ステップ4 手数料の支払い

2025年10月3日以降の新ルールでは、申請手数料・発行手数料を含む 全額を申請時に事前支払 する必要があり、申請が却下された場合でも返金されません。

申請者区分 提出手数料 発行手数料 合計(円換算)
法人税TRN保有者(個人・法人) AED 50 AED 500 AED 550(約23,650円)
個人(TRN未取得) AED 50 AED 1,000 AED 1,050(約45,150円)
法人(TRN未取得) AED 50 AED 1,750 AED 1,800(約77,400円)
ハードコピー(任意) AED 250(追加) 約10,750円(追加)

ステップ5 審査・証明書の発行

FTAが書類を審査し、通常5〜10営業日程度で結果が通知されます。承認されると、TRCは電子形式(PDF)でダウンロード可能となり、登録メールアドレスにも送付されます。

TRCの有効期間と更新

TRCの有効期間は 発行日から1年間 です。翌年度も引き続きTRCが必要な場合は、毎年新たに申請を行う必要があり、自動更新はありません。なお、TRCは現在進行中または過去の納税期間に対してのみ発行され、将来の期間に対しては発行されません。

関連記事:UAE法人TRCの取得実務(法人向け)

UAEのTRCと日本の非居住者認定

TRCが日本側で果たす役割

UAE側がTRCを発行するのは、あくまでUAE側でのあなたの居住者性を証明するものであり、直接的に日本側の租税条約の適用判定を行うものではありません。

しかし、TRCを保有することで、日本の税務当局に対してあなたが日本の非居住者であることを立証する根拠材料 となります。日UAE租税条約 の特典条項(Benefit Clause)では、租税条約の恩恵を受けるための要件として「対象国(UAE)の税務居住者であること」が定められているためです。

つまり、ドバイに183日以上滞在してTRCを取得することは、日本の税務当局に「この人はもはや日本の課税対象ではなく、UAEが主たる課税権を有する」という主張を可能にするものです。

日本の非居住者と全世界所得課税

日本には 全世界所得課税 という原則があります。国税庁の居住者・非居住者判定 によれば、日本の居住者であれば、世界中のどこで発生した所得であっても日本で課税対象となります。一方、非居住者の場合は 日本国内に源泉のある所得(国内源泉所得) にのみ課税されます。例えば、非居住者がドバイで得た給与やビジネス所得は、日本では課税対象外となります。

課税の基準 内容
居住者 全世界所得に対して日本で課税される
非居住者 日本国内に源泉のある所得にのみ課税される

日本での非居住者認定のためのTRC活用

日本の税務当局に非居住者性を立証するためには、TRCの他にも複数の資料が必要です。日本からドバイに移住する際には、以下の点に注意が必要です。

これらの要件を満たし、TRCを取得することで、日本での非居住者性の立証がより強固になります。

関連記事:日本からUAEへの移住と非居住者判定
関連記事:ドバイ法人の銀行口座開設

まとめ

📋 今回のポイント

  • TRCはUAE側での税務居住者地位を証明する書類で、日本側の非居住者性立証の根拠材料となる
  • 個人の居住者要件は閣議決定第85号で定められ、原則183日以上の滞在が必要
  • 2024年10月のFTA新ガイドラインで、居住者要件充足時点で即時申請が可能になり、銀行明細の提出も不要に
  • 手数料はTRN保有者AED 550(約23,650円)、TRN未保有個人AED 1,050(約45,150円)、2025年10月3日以降は申請時全額前払い
  • 有効期間は1年間で、毎年新規申請が必要
  • 日本での非居住者立証には、TRC単体では不十分。恒久的住居・経済的利益の中心・生活の本拠地などを総合的に証明する必要がある

当会計事務所では、TRCの申請手続き支援に加え、日本での非居住者性立証のための住民票・恒久的住居・経済的利益の中心・生活の本拠地に関する総合的なドキュメント整備までワンストップで対応しています。ドバイ移住後の日本側税務リスクを最小化するため、TRC取得と非居住者性立証の同時設計をおすすめします。

根拠条文・出典

  • UAE Cabinet Decision No. 85 of 2022(個人の税務居住者判定基準、2023年3月1日施行)
  • UAE Ministerial Decision No. 27 of 2023(Cabinet Decision 85の実施細則)
  • FTA Tax Resident and Tax Residency Certificate Guide(2024年10月版)
  • FTA手数料変更通知(2025年10月3日以降、申請時全額前払いルール)
  • 所得税法第2条第1項第3号・第5号(居住者・非居住者の定義)
  • 所得税法第7条(課税所得の範囲)
  • 日本国とアラブ首長国連邦との間の租税条約(2014年12月発効)

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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