ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。
部屋単位やベッドスペース単位で住戸を貸し出す、いわゆる共同住居を規制する法律が2026年8月26日に施行されます。2026年2月27日の官報掲載から180日後に効力を持つことは、ドバイ市(Dubai Municipality)がGulf Newsの取材に対して確認しています。
根拠はドバイ首長ムハンマド・ビン・ラシド殿下が発出したドバイ2026年法律第4号で、罰金は最大100万AED、約4,300万円に達します。
実務で判断が必要なのは、許可を取るのか運用形態を変えるのかという選択と、それが日本側の税務にどう跳ね返るのかという点です。今回はこの2つを中心に整理いたします。
ドバイ共同住居法で何が決まったのか
正式名称は、共同住居の占有および管理の規制に関する2026年法律第4号です。共同住居とは、1つの住戸を複数の個人または家族が共同で占有する形態で、台所や浴室を共用にしたまま寝室やベッドスペースを個別に貸し出す運用が典型です。
この形態は従来、明確な規制の枠組みなく広く行われてきました。Gulf Newsの報道によれば、新法は住戸の過密化と治安上のリスク、用途違反の是正を目的とします。
適用される物件と除外される物件
適用対象はフリーゾーンや特別開発区域を含む首長国内のすべての住戸で、所有者、賃貸や管理を行う企業、占有者のいずれもが規制の対象です。
一方で労働者向けの集団宿舎は適用から除外され、従来どおり労働者宿舎の規制体系が適用されます。
居住者のカテゴリーも列挙されており、家族、単身男女、男女の学生、政府機関の職員、民間企業の従業員という区分から、許可の申請時に対象を定めます。
許可制の中身と満たすべき基準
許可はドバイ市が土地局と連携して発行します
許可を得ずに住戸を共同住居として割り当てることは、自然人でも法人でも禁止されます。許可はドバイ市が発行し、基準はドバイ土地局(Dubai Land Department)等と連携して定められます。
有効期間は原則1年間で同じ期間で更新でき、所有者が希望すれば2年間の許可も申請できます。更新申請は有効期限の30日前までです。ここはThe Nationalの報道でも確認できます。
審査で見られるのは建物の設備要件だけではありません。地域の人口密度、インフラの容量、下水処理能力、都市計画上の適合性も検討されますので、設備基準を満たしていても地域の事情で許可されない場合があります。
技術基準としては、最大収容人数、1人あたりの最低面積、共用設備、建築と構造の基準が定められ、公衆衛生や消防安全、電気設備の基準への適合も求められます。石膏ボードで寝室を仕切る行為や、台所や浴室、バルコニーを寝る場所に転用する行為は認められません。
賃貸できる主体が3類型に限定されます
影響が大きいのは、賃貸の当事者になれる者が限定された点です。賃貸できるのは所有者本人、所有者のための管理会社、借り上げて転貸する企業の3類型に限られます。入居しているテナントが住戸の一部を他人に転貸する行為は、新法のもとで明確に禁止されます。
つまり、テナントが1戸借りて4人を住まわせ家賃を分担させる運用は成り立ちません。所有者は自分の物件でこうした運用がないかの確認が必要です。
登録簿への登録と表示・広告の義務
2026年9月3日付のThe Nationalによる共同住居法の解説では、運用面の義務が具体的に示されています。事業者は賃貸借契約を共同住居登録簿(Shared Housing Register)へ登録する義務を負い、入居者に契約書の写しを交付し、さらに入居者の権利と義務を記載したガイドを添付しなければなりません。
表示と広告の義務も加わります。物件の正面には、アラビア語と英語を併記した看板を掲示し、許可保有者の名称と承認された事業区分を記載します。広告には商号と許可番号の記載が必要で、許可番号のない広告そのものが違反として扱われます。仲介会社やポータルへ掲載を任せている場合でも責任は許可保有者側に及びますので、掲載文面の許可番号は自分で確認しておくべきです。
| 項目 | 内容 |
| 許可の発行主体 | ドバイ市(ドバイ土地局等と連携して基準を策定) |
| 有効期間 | 1年(所有者の申請により2年も可能) |
| 賃貸できる主体 | 所有者本人、所有者のための管理会社、借上げ転貸会社の3類型 |
罰金と猶予期間のスケジュール
罰金は500AEDから50万AEDの範囲で、同一年内に繰り返した場合は上限が100万AEDに引き上げられます。1AEDを43円で換算しますと、上限が約2,150万円、繰り返し違反の上限が約4,300万円です。
制裁は金銭だけではありません。最大6か月の営業停止、許可の取消し、管理会社の商業ライセンス取消し、電気と水道の供給停止、退去命令も規定されています。類型ごとの罰金額は後日の施行規則で定められます。
当局が指定する査察官には司法上の権限が与えられ、物件への立入り、書類の確認、違反報告書の作成、必要に応じた警察の応援要請ができますので、管理会社が立入りを拒むという選択肢は実際にはありません。
もっとも、施行と同時に取締りが始まるわけではありません。施行前から運営していた所有者と事業者には、住戸と運営を基準に適合させるための1年間の猶予期間が与えられ、期限は2027年8月26日です。
| 時点 | 起こること |
| 2026年8月26日 | 2026年法律第4号が施行され、許可制と転貸禁止が始まります |
| 施行後(時期未定) | 違反の類型別の罰金額を定める施行規則が発出されます |
| 2027年8月26日 | 既存運営者の猶予期間が終了し、罰則の適用が本格化します |
日本人オーナーが確認すべき実務論点
個人名義でも法人税の課税対象になる可能性があります
UAEの法人税では、自然人による不動産投資は原則として事業活動に該当せず課税対象外です。個人名義で住戸を1戸買って賃貸に出しているだけなら法人税9%の課税所得は生じません。判断の基準は活動にライセンスが要求されるかどうかで、UAE財務省が公表する税務法令のうち閣議決定2023年第49号がこれを定めています。
問題になるのは、共同住居として運営する場合に許可と管理会社が絡む点です。所有者本人が直接運営するのか、管理会社を通すのか、借上げ転貸にするのかで、UAE側で事業とみなされる余地が変わります。共同住居の許可は商業ライセンスではありませんが、複数戸を反復して運営する規模になれば実質的に不動産賃貸業として整理されるリスクがあります。連邦税務庁が公表する法人税法令と照らし、事前に運営形態を確認しておくことをお勧めします。
UAE法人名義で保有していれば出国税の対象財産に含まれます
ドバイ移住を検討する方に重要なのは、国外転出時課税、いわゆる出国税との関係です。所得税法第60条の2の対象財産は有価証券等ですので不動産そのものは対象外ですが、UAE法人名義で保有している場合はその法人の株式が対象財産となります。
株式の価額は法人が保有する資産の状況を反映して評価されます。無許可のまま運営している物件があると、改修コスト、収益の持続性、退去命令のリスクが株式の評価と移住前の売却判断に影響します。1億円の判定ラインの近くにいる方は移住のタイムラインと合わせた検討が必要です。
日本居住者のまま賃貸している場合は、その収入を日本で不動産所得として申告する義務があります。許可取得費用や改修費用は、修繕費と資本的支出のいずれに当たるかの区分の判断が必要です。12月31日時点で国外財産が5,000万円を超える居住者には、国税庁が案内する国外財産調書の提出義務もあります。
入居者を退去させるには執行裁判官の決定が必要です
入居者側の保護も明確になりました。退去を求められた入居者は7日以内に異議を申し立てることができ、申立てにより退去手続はいったん停止します。強制的な退去には執行裁判官(Execution Judge)の決定が必要で、オーナーや管理会社の判断だけで入居者を出すことはできません。許可が取り消されたり営業停止となった場合でも入居者は直ちに退去する必要はなく、当局が移転のための猶予期間を設定します。入居者は賃料紛争解決センターへ補償を請求することもできます。
オーナーの立場では、ここが実務上もっとも重い論点です。許可を取らずに共同住居として運用していた場合、違反を是正しようとしても入居者を速やかに退去させることができません。是正の入口が退去ではなく、許可の取得か、当局と移転の猶予期間を調整する道になるという意味です。許可取得までの収益と改修コストを見込み、許可申請と運用形態の変更のどちらを選ぶかを早めに決める必要があります。
よくある間違い
1つ目は、猶予期間があるので2027年8月まで何もしなくてよいと考えることです。転貸の禁止は施行日から効力を持ちますので、テナントが勝手にベッドスペースを貸している状態を放置すれば、所有者として説明を求められます。
2つ目は、フリーゾーンの物件だから対象外だと考えることです。法人税のQFZP判定でフリーゾーンが特別扱いされるため混同しやすいのですが、この法律ではドバイ首長国全域が一律に対象です。
3つ目は、管理会社に任せているから自分は関係ないと考えることです。新法は所有者、管理会社、居住者のそれぞれに義務を課しており、管理会社のライセンスが取消されれば運営が止まるのは所有者の側です。許可の取得と維持の責任の所在を管理契約で確認してください。
まとめ
📋 今回のポイント
- ドバイ2026年法律第4号が2026年8月26日に施行
- 部屋単位・ベッドスペース単位の賃貸はドバイ市の許可制
- テナントによる住戸の一部の転貸は禁止
- 賃貸借契約は共同住居登録簿へ登録、看板と広告に許可番号
- 罰金は最大100万AED(約4,300万円)、猶予期間は2027年8月26日まで
- 入居者の強制退去には執行裁判官の決定が必要
- UAE法人名義の物件は出国税の株式評価に影響
共同住居の運営を続けるのか、単一テナントへ賃貸するのか、売却するのか。この判断はドバイ側の許可コストだけでなく、UAE法人税の課税関係と日本側の出国税や不動産所得の申告にまで及びます。当会計事務所は、UAE現地の規制と日本の税務の両面からご検討を支援しております。ご自身の物件で必要な対応がご不明な場合は、当会計事務所までお気軽にお問い合わせください。
根拠条文・出典
- ドバイ法令ポータル – ドバイ2026年法律第4号の原文(官報第764号)
- Gulf News – 施行日2026年8月26日、猶予期間と罰則
- Gulf News – 法律の発出、許可要件、賃貸主体の3類型
- The National – 許可の有効期間と更新期限、賃料指標
- The Nationalによる共同住居法の解説 – 登録簿、表示義務、退去手続の運用
- UAE財務省 税務法令 – 閣議決定2023年第49号
- 連邦税務庁 法人税法令 – 連邦法令2022年第47号
- 国税庁 国外財産調書制度 – 5,000万円超の提出義務
- 所得税法第60条の2(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)





