ドバイ法人の越境ECに消費税がかかる?少額輸入貨物の改正について解説

投稿:2026年7月22日更新:2026年7月22日ブログ

ドバイ在住の日本人公認会計士・岡本信吾です。

国税庁は令和8年7月15日に「国境を越えた電子商取引に係る消費税の課税関係について」を更新し、これまで手薄だった物品販売の越境ECに関する消費税の課税ルールを明らかにしました。令和8年度税制改正に基づくもので、令和10年4月1日以後に行われる資産の譲渡について適用されます。ドバイに法人を構えて日本の消費者へ商品を販売している方や、アマゾンなどのプラットフォームを通じて日本市場向けに物販を行っている方にとって、納税義務の有無を大きく左右する重要な改正です。この記事では、ドバイ在住の日本人公認会計士の視点から、新制度の全体像と実務上の注意点を整理します。改正の詳細は国税庁の特設ページでも公表されています。

これまでの越境ECと消費税の関係

越境ECの消費税を考えるうえで、まず押さえておく必要があるのが、取引の対象が役務なのか物品なのかという区分です。動画配信や電子書籍、クラウドサービスといったインターネットを通じて提供されるサービスは電気通信利用役務の提供に該当し、こちらは平成27年以降すでに整備された制度によって国外事業者にも日本の消費税が課されてきました。この電気通信利用役務に関する消費税の実務については、当会計事務所の別記事で詳しく解説しています。

一方で、海外から日本の消費者へ商品そのものを発送する物品販売については、これまで明確なプラットフォーム課税の仕組みがなく、とりわけ少額の輸入貨物については消費税が課されないケースが残されていました。今回の見直しは、この物品販売の越境ECに焦点を当てたものです。役務提供と物品販売で取扱いが異なる点を理解しておくことが、正しい消費税対応の出発点になります。

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1万円以下の少額輸入貨物が課税対象に

今回の改正の柱のひとつが、少額輸入貨物の課税対象化です。これまで、海外から日本の消費者へ通信販売で発送される税抜1万円以下の商品は、輸入時の少額免税制度により消費税が課されない扱いとなっていました。この免税枠を悪用した取引や、国内事業者との課税上の不公平が問題視されていたことが背景にあります。

今回の見直しにより、こうした税抜1万円以下の資産の譲渡は特定少額資産の譲渡と位置づけられ、国内取引として消費税の課税対象に取り込まれます。ドバイから日本向けに小口の物販を継続的に行っている事業者にとっては、これまで意識してこなかった納税義務が新たに生じる可能性があるため、早めの準備が求められます。少額だから課税されないという従来の前提はもはや通用しません。

第二種プラットフォーム事業者による物品販売のプラットフォーム課税

今回新設された最も重要な仕組みが、物品販売に関するプラットフォーム課税です。オンラインマーケットプレイスなどのデジタルプラットフォームを提供する事業者のうち、国税庁長官から指定を受けた事業者を第二種プラットフォーム事業者といいます。この第二種プラットフォーム事業者を介して行われる一定の物品販売で、その対価をプラットフォームを介して収受するものについては、プラットフォーム事業者がその資産の譲渡を行ったものとみなして消費税の申告と納税を行うことになります。

対象となる取引と指定要件

プラットフォーム課税の対象となるのは、国外事業者が国内において行う資産の譲渡と、事業者が行う特定少額資産の譲渡です。指定要件は、そのプラットフォームを介して行われる対象取引の対価の額のうち当該事業者を介して収受するものの合計額が、課税期間において50億円を超えることです。この規模基準からも分かるとおり、実務上はアマゾンなどの大手プラットフォームが該当する見込みとされています。

指定を受けたプラットフォーム事業者は、そのプラットフォームを利用する販売事業者に対して、プラットフォーム課税が適用される旨とその適用開始年月日を通知する義務を負います。ドバイの事業者が大手プラットフォームを通じて日本の消費者へ販売する場合、消費税の申告納税はプラットフォーム側が代わりに行うため、販売事業者自身での個別の申告は不要になります。

2種類のプラットフォーム事業者の整理

あわせて、従来の消費者向け電気通信利用役務の提供に関するプラットフォーム課税の指定を受けた事業者は、今回の改正にあわせて名称が特定プラットフォーム事業者から第一種プラットフォーム事業者へと変更されました。デジタル役務は第一種、物品販売は第二種という整理になった点も押さえておく必要があります。

区分 対象取引 主な適用開始
第一種プラットフォーム事業者 消費者向け電気通信利用役務の提供(デジタル役務) 令和7年4月から運用
第二種プラットフォーム事業者 物品販売(国外事業者の国内資産譲渡・特定少額資産の譲渡) 令和10年4月から
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自社ECサイトでの直販は販売事業者が申告

ここで注意が必要なのは、プラットフォーム課税が適用されるのは指定を受けた第二種プラットフォーム事業者を介した取引に限られるという点です。指定を受けていないプラットフォームを介する場合や、自社が運営するショッピングサイトを通じて直接販売する場合には、プラットフォーム課税は適用されません。

この場合、事業者免税点制度の適用を受ける事業者を除き、販売事業者自身が日本の消費税を計算して申告と納税を行う必要があります。ドバイ法人が独自の越境ECサイトを構えて日本の消費者へ直接販売しているケースでは、この直販ルートに該当します。プラットフォーム任せにできないため、納税管理人の選任を含めた自前の申告体制を整えることが不可欠です。国内に住所や居所を有しないドバイ法人が日本の消費税に関する申告や納付を行うためには、納税管理人を選任する必要があります。

特定少額資産販売事業者の登録制度と免税点判定

特定少額資産の譲渡を行う事業者は、免税事業者を除き、申請により特定少額資産販売事業者として登録することができます。登録を受けて税関にその登録番号や対象取引である旨を提示することで、輸入時の消費税が免除される仕組みです。登録申請書は令和9年10月1日から提出が可能とされています。制度の詳細は国税庁のQ&A資料で確認できます。

免税点1000万円判定への影響

見落としやすいのが、事業者免税点の判定への影響です。事業者免税点の判定にあたっては、特定少額資産の譲渡が課税対象であるものとして計算した基準期間や特定期間の課税売上高が1000万円を超えるかどうかで判定します。これまで少額輸入貨物の売上を課税対象に含めずに免税事業者と扱われていた事業者が、今回の見直しによって課税事業者に転じる可能性がある点に注意が必要です。ドバイから小口の物販を積み重ねている事業者ほど、この判定の見直しの影響を受けやすくなります。

ドバイ移住・出国税との関係

ドバイへの移住を検討している方が越境ECを事業として営んでいる場合、日本を出国して非居住者になれば日本の消費税から解放されるのではないかと考えがちですが、これは大きな誤解です。消費税は事業者の居住地ではなく、資産の譲渡が国内で行われたかどうかで課税の有無が決まる制度です。ドバイに移住して法人を設立したとしても、日本の消費者へ物品を販売する取引が国内取引と判定されれば、日本の消費税の納税義務は残ります。

さらに、有価証券や含み益のある資産を1億円以上保有したまま日本を出国する場合には、国外転出時課税、いわゆる出国税の対象となる可能性があります。越境EC事業を法人化して株式で保有している場合、その株式の評価額次第では出国税の課税対象に含まれることもあります。事業の消費税対応と、経営者個人の出国税対策は切り分けて検討する必要があります。移住後の居住者判定や納税範囲については、当会計事務所の関連記事もあわせてご確認ください。

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よくある間違い

プラットフォーム経由なら常に申告不要という誤解

プラットフォーム課税が適用されるのは、国税庁長官の指定を受けた第二種プラットフォーム事業者を介した取引に限られます。指定を受けていない中小規模のプラットフォームや自社サイトでの販売は対象外であり、この場合は販売事業者自身が申告と納税を行う必要があります。利用しているプラットフォームが指定を受けているかどうかを、通知の有無で必ず確認することが重要です。

少額だから関係ないという思い込み

税抜1万円以下の少額輸入貨物も課税対象に取り込まれるため、単価が低いからといって消費税と無関係でいられるわけではありません。むしろ少額商品を大量に販売している事業者ほど、免税点判定への影響を含めて慎重な確認が必要になります。

まとめ

📋 今回のポイント

  • 令和8年7月15日の国税庁更新により物品販売の越境EC課税を整備、令和10年4月1日以後の譲渡に適用
  • 税抜1万円以下の少額輸入貨物も特定少額資産の譲渡として消費税の課税対象に
  • 対価50億円超で指定される第二種プラットフォーム事業者が物品販売の申告納税を代行
  • 指定外プラットフォームや自社ECサイト直販は販売事業者自身が申告納税
  • 特定少額資産販売事業者の登録制度は令和9年10月1日から申請可能、免税点判定にも影響
  • ドバイ移住や出国税と消費税は別問題、国内取引なら非居住者でも納税義務は残る

当会計事務所は、ドバイ・UAEを拠点に活動する日本人公認会計士として、UAE法人による日本向け越境ECの消費税対応、プラットフォーム課税の判定、納税管理人の受任、出国税を含む移住時の税務までワンストップでサポートしています。越境ECの消費税や海外移住の税務でご不安がある方は、当会計事務所までお気軽にお問い合わせください。

根拠条文・出典

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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