ドバイ帰国前に必読|就労ビザ・扶養ビザのキャンセルの落とし穴(口座凍結・180日猶予・ILOE罰金)

投稿:2025年11月30日更新:2026年5月26日ブログ

ドバイでの駐在期間を終えて日本へ帰国される方や、転職のために現在のビザを切り替える方にとって、最後の難関ともいえるのが「ビザのキャンセル手続き」です。

ドバイ(UAE)では、入国時と同様、出国時(ビザ終了時)にも厳格な行政手続きが求められます。ここを疎かにすると、将来的な再入国が拒否されたり、多額の罰金が発生したりするリスクがあります。今回は、UAEの労働法や移民法に基づき、過去に経験した事例をもとに実務上のリスクや金銭的な注意点を含めて解説します。

1. 手続きの順番は「扶養家族」が先

もっとも基本的でありながら、もっともトラブルになりやすいのがキャンセルの順番です。ご自身がスポンサーとなって、奥様やお子様(あるいは家政婦さん)の扶養ビザ(Dependent Visa)を発行している場合、必ず扶養家族のビザを先にキャンセルしなければなりません。

メインの就労ビザ保持者(スポンサー)のビザを先にキャンセルしようとしても、システム上でブロックがかかります。

キャンセルの正しい順序 手続きの内容
① 扶養家族のビザ 配偶者、子供、メイド等のビザをキャンセル
② 本人の労働許可 MOHRE(労働省)にてLabor Cardをキャンセル
③ 本人の居住ビザ ICP(移民局)にてResidency Visaをキャンセル

ご家族がすでに日本へ帰国されている場合でも、UAE国外からのキャンセル手続きは可能ですが、パスポートコピーやエミレーツIDの情報が必要になりますので、事前に準備しておくことをおすすめします。

2. 銀行口座の凍結と退職金(EOSB)の受け取り

意外に陥ってしまいがちなのが、銀行口座の凍結リスクです。

UAEの銀行は、雇用主からの「ファイナル・サラリー(最終給与)」や「End of Service Benefits(退職金)」が振り込まれると、その送金名目を検知し、口座を一時的に凍結することがあります。これは、クレジットカードやローンなどの未払い債務を銀行が回収するための保全措置です。特にローンやクレジットカードの残債がある場合は要注意です。

⚠️ 銀行口座凍結のリスク

  • 借入金がある場合:退職金が借入金の返済に充当されるまで、資金を引き出せなくなる可能性があります。
  • 借入金がない場合:銀行へ「借入がない証明(No Liability Letter)」等を提出したり、窓口で交渉したりすることで凍結解除できますが、時間を要することがあります。

帰国直前に「現金が引き出せない」という事態を避けるため、メインの資金は事前に別口座へ移しておくか、クレジットカードの完済証明を取得しておく等の対策が必要です。

3. グレースピリオド(猶予期間)の確認

ビザをキャンセルした後、UAE国内に合法的に滞在できる期間をグレースピリオドと呼びます。ICP(連邦身分・市民権・税関・港湾保安庁)の公式規定により、ビザカテゴリーによって以下のとおり区分されています。

ビザカテゴリー グレースピリオド
Golden / Green / Blue Residence、退役軍人配偶者、留学生等 180日
スキルレベル1~3の労働者、不動産所有者 90日
スポンサー・ホスト付きビザ(家族ビザ等) 60日
上記以外のカテゴリー 30日

この期間を1日でも過ぎると「オーバーステイ」となり、出国時に1日あたりAED50の罰金が課されます。例えば10日超過した場合、AED500(約20,000円)の罰金が請求されます。ご自身のビザカテゴリーに該当する猶予期間を、キャンセル完了書類(Cancellation Paper)に記載された日付で必ず確認してください。

4. ILOE(失業保険)の解約と罰金

2023年から義務化されたILOE(Involuntary Loss of Employment Scheme)は、ビザキャンセルと連動して注意が必要です。保険料の支払いが滞っている場合、ビザのキャンセル手続きが進まない、あるいは未払い分のペナルティを清算しなければならないケースがあります。

失業給付を請求する場合は、解雇日から30日以内にILOEのチャネルを通じて申請する必要があります(Cabinet Decision 97/2022 第12条)。また、転職ではなく完全帰国する場合は、ILOEの解約手続きも忘れずに行いましょう。自動更新の設定になっていると、帰国後も請求が続くことになります。

5. 税務居住者としてのステータス

UAEには個人の所得税はありませんが、日本側での税務処理に関わります。年度の途中で帰国する場合、日本での「居住者」となる日がいつになるかで、確定申告の対象期間が変わります。UAEでの滞在を終え、日本に帰国した翌日から日本の税務上の居住者となりますので、UAEで得た所得と日本で得る所得の区分けを明確にしておく必要があります。

特に、UAE出国後に振り込まれる退職金やボーナスについては、租税条約や日本の所得税法に基づき、課税対象となるかどうか慎重な判断が求められる場合があります。

【根拠条文・出典】

  • ICP(連邦身分・市民権・税関・港湾保安庁)「Cancellation of residency permits」サービス規程
  • Cabinet Decision No. 97 of 2022(ILOE関連)
  • Ministerial Resolution No. 604 of 2022(Ministerial Decision No. 340 of 2023による改正)
  • 所得税法第2条第1項第3号(居住者の定義)

📋 今回のポイント

  • 扶養家族のビザキャンセルが最優先:スポンサーのビザより先に処理
  • 銀行口座の凍結リスクに備える:資金移動やローン完済証明を事前準備
  • グレースピリオドは30/60/90/180日の4区分:超過すると1日AED50の罰金
  • ILOE未払い・解約忘れに注意:失業給付請求は解雇後30日以内
  • 税務ステータスの変更を整理:帰国翌日から日本の居住者

ビザのキャンセルは、単なる行政手続きではなく、銀行、住居、税務、そして将来の再入国に関わる重要なプロセスです。会社の人事担当者任せにせず、ご自身でもステータスを確認することをお勧めします。特に法人精算を伴うビザキャンセルや、税務上の居住者判定については複雑な判断が必要ですので、当会計事務所までお気軽にお問い合わせください

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(JCPA)・UAE公認会計士(EAAA)協会会員。日本とドバイで会計事務所を経営。現地日本企業の税務顧問先100社(上場会社含む)、会社設立実績80社以上。
ドバイ法人の会計監査や税務申告、ドバイ移住支援を行っています。

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